第108話 欲しい物

「これとこれと、あとこれも! それから残ったポイントは余らないように…………よしっ、交換完了! 余りポイント一切なし!!」


 こちらはまだ1つも交換していないというのに、妻は全てを終わらせたらしい。彼女は感覚派なので事前に計算してポイントを使い切れるようにしたりしていないと思うのだが……運良くピッタリ使えたようだ。


 俺は前持って計算して、ポイントを綺麗に使い切れるという確信を得てから交換作業に移りたい。


「ハイト見て。これが私の交換したアイテムだよっ!」


 新しくたくさんのアイテムを得たことが嬉しかったのか、見せびらかしてくる。クランのために何か買うなら、妻の買った物と被らないようにした方がいい気がする。しっかり何をポイントと交換したのか見させてもらおう。


 まずは細かいところから。

 木の器を12つと青銅器を12つ。これは今使っているファーレンのNPCショップで購入した皿などの耐久値がほとんどなくなったからだろう。タイミングが良かったので、この機会に新調したのだと思う。

 ここで12000ポイントか。結構使ったね。


 続いて、従魔スキン(サクラボア)だ。

 正直、これは買うだろうなと思った。かわいいもの好きの妻がこのカラーリングのスキンを見逃すはずがないから。

 俺のポイントが余ったらプレゼントしようと考えていたのだが、その必要はなくなったか。


 次に植物の種シリーズだ。

 交換したのは、サクラの種、ウメの種、ラニットニンジンの種だ。前2つは今回のイベント限定っぽいから絶対に逃せなかったのだろう。ニンジンは妻が好きな野菜なので選ばれたと思われる。

 ちなみにこれは妻にとっての大本命である。サブ職業に見習い農家を選び栽培スキルを持つ妻は畑さえ手に入れれば、植物を育てることができる。自家栽培の野菜を使って料理することがしたくてこの職業を選んだらしいので、ついにやりたかったことができるようになるというわけだ。

 ただ、畑作業は毎日ログインしなければ作物の質が落ちてしまうらしいので要注意。掲示板などでチラッと確認した情報では同じクランの人間なら水やりくらいは手伝えるらしいが、土いじりや肥料関係には手出しできないらしい。


 最後は……宝の地図?

 なぜ、これを選んだ?

 宝が何かも分からない上、最後についている?のせいで怪しさが倍増されているこのアイテム。どうして手を出そうと思ったのだろう。


「リーナ、宝の地図?はあれかな。選択間違いで交換しちゃったとか?」

「え? 違うよ。流石に私でもそんなどんくさいことしないって」


 どうやら己の意思でこのアイテムを交換したらしい。

 俺くらい潤沢にポイントがあるのなら、ロマンを求めて交換するのもわかる。だが、イベントポイントがかっつかつの人間が選ぶアイテムではないだろうに。


「どうして選んだか、聞いていい?」

「そんなの決まってる。ロマンだよ! ロマン!!」


 はい。妻の中ではロマンがその他アイテムを全て蹴散らして勝利したらしい。


「そ、そっか」

「うん!」


 とてもいい笑顔だ。

 流石にこれを見てしまっては、無粋な言葉は向けられない。


「……リーナが選んだのなら、俺はスルーしようかな」


 絞り出した言葉はこれだった。


「え~、そうなの? たくさんあった方が楽しいのに」


 俺の返事を聞いて妻が不満そうにする。


「じゃあ、ポイントが余ったら宝の地図?を選ぶから」

「わかった」


 納得してくれたようだ。


 さて、そろそろどのアイテムを選ぶか計算していこう。

 

 まず必須アイテムから。


・魔物の卵       250000ポイント ※交換制限1   

(購入時、種族選択可)


・孵化装置       200000ポイント ※交換制限1

(スキル付与)


・孵化装置       160000ポイント ※交換制限2


 これはアイテムリストを見たときからずっと交換することを決めているものだ。

 ただ、ノーマルの孵化装置は1つでいいかな?


 合計610000ポイント。

 結構、いったね。


 次は興味があるアイテム。


・桜鋼の剣       210000ポイント ※交換制限1


・スキルスクロール   90000ポイント  ※交換制限1

(選択)


・スキルスクロール   120000ポイント ※交換制限1

(レアランダム)


 この辺りだ。

 そもそも現段階では、鉄こそ見つかれど鋼は発見されていない。なのでどんな性能なのか知りたいので選んだ。あとただの鋼じゃなくて桜鋼なるファンタジー金属だから余計気になった。

 そしてスキルスクロール系。ユニークボスの討伐報酬などで過去に手に入れたことがある部類。これの恩恵は他のプレイヤーよりも理解しているつもりだ。特に選択スキルスクロールはアイテムボックスに1つあるだけでもだいぶ変わってくる。どうしようもない状況をひっくり返すことができる可能性が出てくるからね。レアランダムの方は……運次第だけど何か特別なものでもこないかな~と思って選んだ。


 これらも合わせて、1030000ポイント。

 残り85700ポイントだ……って、それだけ!?

 案外、すぐに使い切っちゃうもんなんだな。


 それなら残りは細々したものを選んでいくとしようか。

 とりあえずごろイモの種をいこうか。妻がこれを選ばなかったのはポイントが足りなかったからだろうし。プレゼントということで。

 兎肉も交換したいね。最近、一角兎を狩っていないから手元に素材としてないんだよ。1つ250ポイントとお安いので、100くらい欲しいな。現実と違って、アイテムボックスに入れておけば腐らないからたくさんあっても困らない。

 肉続きになるがボア肉も外せない。普通に調理すれば臭みがあるらしいが、あの焼肉屋の店主さんは何らかの方法でそれを消していた。妻がその秘密を聞き出してきてくれると信じて50ほど確保しよう。

 あとせっかくだから石器も選んじゃおう。妻が他の食器類を交換した数に合わせて12個と。

 それから普段お世話になっているイッテツさんやミミちゃんへのプレゼントも少し欲しい。やはり彼らにあげるなら鉄鉱石だね。2塊交換して1つずつ渡そう。


 必要ポイントの低いもので欲しいのはだいたい選んだ。これで残りはっと……19700ポイントか。中途半端に残ったな。もっとあれば、クランハウス用の家具を選んでもよかったのに。


 どうしよう。選べる範囲でもう欲しいものがない。

 ――――仕方ない。妻と同じくロマンに走ろう。追加しましょう、宝の地図?


 残り7700ポイントはめんどくさいので、全て薬草で!

 154個か。低級ポーション量産して、見習い錬金術師のレベル上げにでも使ってしまえ。


 これでどうにか残りポイント0にできそうだ。早速、交換しよう。



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