第100話 穴の中で採掘
小蝙蝠の牙
レア度:1 品質:低
スモールバットの牙。
小さ過ぎるため武器への加工はできない。
小蝙蝠の羽
レア度:1 品質:低
スモールバットの重さを一切感じさせない羽。
「ドロップアイテムは2種類だけか」
今回は合計で6体のスモールバットを討伐した。だが、ドロップアイテムの種類は思っていたよりも少なくその全てが小蝙蝠の牙か羽だった。もちろん運悪く手に入っていないものがある可能性もあるが。ただ、今回手に入ったアイテムの説明を見るかぎり討伐してもあまりうまみがある魔物だとは思えない。戦うのもちまちまと動かれるのは面倒だし……できればもう遭遇したくないなぁ。
「ハイトはレベル上がった?」
いつの間にかスラミンを撫でまわし終わっていた妻から声がかかる。
「ううん。レベルアップも熟練度関係のアナウンスも一切なかったよ。聞いてきたってことは、そっちは誰かのレベルが上がったの?」
妻の就いている職業のうち戦闘でレベルが上がるのは見習いテイマーのみ。残りは生産職だからそれに対応した作業をしないと経験値が入らないからね。あとは、今日連れてきているスラミンのレベルアップか。スライムはレベルが上がりやすいからこちらの方が可能性は高いかな。
「そっか~、残念だったね。私たちの方は見習いテイマーの職業レベルとスラミンのレベルが上がったよ!」
「主従揃ってレベルが上がったのか。いいなぁ、羨ましいよ」
俺もメインの見習いテイマーのレベルがあと1つ上がってくれたら、転職できるようになるから早くレベルが上がってくれないかな。
「へっへーん、いいでしょ? でも、ハイトだって前回のレベルアップから結構戦ってる気がするし……そろそろじゃないかな」
妻は嬉しそうな顔で自慢しつつも、俺が落ち込まないように励ましてくれる。
前回、レベルが上がったのがいつ頃だったかは憶えていない。だが、ここ2日だけでもエリアボス1体にイベント限定の魔物十体以上、更にマーマンジュニア3体とスモールバット6体を倒したのだから相当の経験値が蓄積されているはず。妻の言った通り、見習いテイマーのレベルが15になるのもそう遠くはないかもしれない。
「そうだといいなぁ」
戦闘後のドロップアイテム回収。それから俺の僅かに削られたHPを低級ポーションを使用して回復した。
再び穴の探索をできる状態になったので、俺たちは動き出す。
真っ暗闇を松明で照らし、でこぼことした足元に注意しながら進む。気配察知には魔物の存在は引っかからない。
「あっ、あれ!」
隣を歩く妻が指す方を見ると、採掘ポイント特有の輝きが目に入った。
「よかった、この穴にもちゃんと採掘ポイントがあったんだ」
カッチコチ山に複数ある穴の中に合計で数ヵ所、採掘ポイントが湧く設定だった場合、この穴には採掘ポイントがない可能性もあった。それだともう一度別の穴を探索する羽目になるところだったので、ここで1ヵ所でも採掘ポイントを見つけられたのは大きい。
「ハイト、どっちが掘る!?」
掘りたくして仕方いないといった感じの妻からそう問いかけられた。
「俺は次でいいよ」
採掘作業は楽しいけど、絶対やりたいってほどではないからね。
「やったー! ありがと。がんばって良い品質の物を取るね!!」
早速、アイテムボックスから頑丈な石のピッケルを取り出した妻。周りの様子を気にすることなく一直線に採掘ポイントへと向かった。
この様子だと魔物が近づいてきても気づかないだろうし、俺が警戒しておこう。
「ん? スラミンどうしたんだ?」
いつの間にか妻の頭から下りていたスラミン。ぽよんぽよんとこちらへ近づいてきたかと思えば、俺が警戒している方とは反対側を向いた。
「もしかして一緒に周りを見てくれるのか……」
スラミンは背中を見せたまま、ぶるぶると震えた。自分の従魔ではないので気持ちは伝わってこないが、なんとなく俺の言葉を肯定した気がする。
それから10分ほど魔物が接近してこないか、気配察知を駆使して警戒していたが全く何も現れない。そもそも採掘作業はそれなりに時間がかかるので、穴の中に魔物がポップしづらいようになっているのかもしれないな。
「リーナ、今どんな感じ?」
「半分くらい終わったかな? でも、ここからもっと丁寧にしなきゃいけないと思うから……時間かかるかも」
「了解。ゆっくりでもいいから、がんばってね」
「はーい!」
更に30分が経過した頃。穴の奥の方から1体の魔物の反応があった。こちらへ近づいてくる様子はなくただふらふらと歩いているだけ。
これは俺たちから刺激しなければ戦闘にはならないか?
「終わった!」
気配察知に引っかかった魔物について考えていると妻が大声をあげた。ようやく採掘作業が終了したらしい。
「お疲れ様。それの鑑定だけして、1度引き返そうか」
「ありがと~。別に引き返すのはいいけど、どうしたの?」
「魔物が少し奥にいるんだよ。だからぶつかる前に引こうかなって。別に戦いたいなら、それでもいいよ」
「う~ん……さっきのスモールバットとの戦いでハイトが大変そうだったし、引き返すでいいかな」
奥にいる魔物がこちらへ歩いてこないか警戒しつつ、妻が採掘したアイテムを鑑定することにした。
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