第89話 スラミンの強み




スラミン(スライム)

Lv.8

HP:65/65 MP:41/41

力:13

耐:17

魔:8

速:10

運:10

スキル:溶解液、液状化、毒生成、物理耐性

称号:―




 スラミンのステータスを初めて見せてもらった。ステータスの基礎値は低く変なところはない。至って普通のスライムだ。

 しかし、スキル欄にすらっちやバク丸は覚えていないものを発見する。


「毒生成ってどう考えてもスライムが普通に覚えるスキルじゃないよね?」

「そうだよ。スキルスクロールを使って覚えてもらったの」


 やっぱりそうか。

 でも、妻はランダムスキルスクロールを入手直後に全て使っていたような気がする。


「もしかして選択スキルスクロールで毒生成を覚えさせたの?」


 そうだとしたら少しもったいない気がする。選択スキルスクロールはその魔物が取得可能な膨大な数のスキルの中から好きなものを1つ選んで覚えさせることができる代物だ。だったら、状態異常系のスキルよりもっと直接攻撃ができるものや地のステータスを底上げできるバフ系、もしくは更なる耐性を覚えさせたほうがよかった気がする。

 まぁ、妻が自分で決めたことなので特に口出しするつもりはないが。


「うん。ランダムスキルスクロールはもう残ってなかったから」

「そっか。でも、毒生成を覚えさせただけでスライムがマーマンジュニアに勝てるものなのかな。対面した感じマーマンジュニアの方が強く感じたんだけど」


 妻がスラミンのステータスを見せてくれたおかげで、通常の個体では持ちえないスキルを所持していたことはわかった。


 だが、俺にはこのスキルでどうやってマーマンジュニアを倒したのかがわからない。

 毒生成という名前からして毒を生み出すスキルだろうが……使い方といえば、精々相手に生み出した毒をぶつけて状態異常を引き起こさせることくらいしか思い浮かばない。毒を使ってくる魔物はこれまで登場しなかったため状態異常の内容は知らないが、他のゲームなどを参考にすると割合ダメージや固定ダメージが入る的なもののはず。でも、それだけだと速度低下と割合ダメージを与える火傷の下位互換になってしまうので、何か他の効果もあると予想できる。


「もしかして毒の状態異常って他ゲーより強い感じ?」


 俺の言葉を聞いて、妻はニヤリと笑う。


「正解! このゲームで毒を受けると、解毒ポーションを飲むまで永遠に毎秒固定ダメージを受けることになるの」


 なるほど。そうきたか。


 火傷は速度低下+割合ダメージを与えるが、時間制限付き。対して毒の場合はアイテムやスキルを使って状態異常を解除しない限りずっとダメージを受け続けることになると。しかも毎秒ダメージがあるということは毒になってからすぐにアイテムを使用しても多少ダメージを受けることになる。それにアイテムを使用するという明確な隙を作り出せるからなかなかに有用な状態異常だ。

 先のフィールドではいずれ状態異常に耐性を持った魔物が出てくるだろう。だが、今のところそういった魔物の出現情報はないので、現環境なら俺が思っていた以上に状態異常スキルは重要なものなのかもしれない。


 さっきは選択スキルスクロールで毒生成を取るのはもったいない気がすると思ったが、間違いだった。これくらい使えるスキルなら、入手難度の高いアイテムを使ってでも覚えて正解だっただろう。


「かなり有用な状態異常だね。毒の効果を知った今なら、スラミンにも十分に勝ち目がある戦いだったと思えるよ」


 魔物であるマーマンジュニアが解毒アイテムを持っているとは思えない。従魔にはしていないのでスキル構成もわからないが、鑑定時の説明と実際に戦った感じゴリゴリに近距離で戦うタイプだったので状態異常を回復させるスキルも持っていないはず。

 なので今回のスラミンVSマーマンジュニア戦は、敵側が毒に侵された時点で勝負がついていたのだろう。マーマンジュニア側に勝機があるとすればステータスの差にものを言わせてごり押しで倒すくらいだったろうが、残念ながらスラミンには溶解液での遠距離攻撃や液状化による緊急回避もある。それらを上手く組み合わされて毒によるダメージが蓄積する時間稼ぎをされて、その僅かな勝機すらつぶされてしまったのだろう。


「そうなると今度は火傷との重ね掛けが可能かどうか、とかが気になってくるなぁ」


 火傷の割合ダメージと毒の固定ダメージは共存するのか、しないのか。そもそも状態異常を2つ以上同時に敵へ付与できるのかなど知りたいことがたくさん頭に浮かんでくる。


「たしかに。せっかくだし、次に魔物と戦うことになったら試してみようよ!」

「いいね。なら次の敵は単体できて欲しいな。今回みたいに複数体いるとスラミンと俺が共闘しづらくなるから」


 この後、マーマンジュニア3体を解体してドロップアイテムを回収。それぞれどんなものか確認したいところだったが、橋の上で悠長に過ごしてまた複数体の魔物に襲われたら堪らない。俺たちは足音をできる限り消しつつ、急いで橋を渡り切ることにした。


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