第85話 2度目は完勝
「もうそろそろビッグスライムの出現エリアだから気をつけて」
ファス平原のエリアボスが出現するエリアの前まできたので、俺は妻へ注意を促す。
「わかった! 姿が見えたらすぐに魔法を唱えるね。スラミンは初めてのボス戦だけど緊張し過ぎないように」
スラミンはバク丸と同時期に仲間になった妻の従魔だ。これまで戦っているところはそんなに見たことがないが、スキル構成は進化前のすらっちやうちのバク丸とほぼ変わらないはず。そう考えると戦闘スタイルは溶解液による遠距離攻撃が主なところか。
妻もスラミンも後衛なら、俺はいつも通り1番前でタンクをすればいい。今回はそれと並行して火魔法による攻撃と状態異常付与をしなければならないが……パーティーメンバー数が少ない状況でそれをするにはタイミングを見計らってやらないと痛い目に合いそうだ。
とりあえず敵の攻撃に耐えて耐えて隙を見つけ次第、ヒートラインを発動しよう。火傷にさえすれば、相手の速さも落ちるので再びファイヤーボールで攻撃するチャンスもできやすいだろうから。
「あっ、あそこにいる!」
慎重に足を進めるとエリアボスが反応する範囲に入ったらしい。ビッグスライムの姿が現れたかと思えば、こちらに向かってぽよんぽよんと近づいてくる。
「ほんとだ。前は張るから攻撃よろしくね」
それだけ伝えて、俺も相手に方へと足を進めた。
俺とビッグスライムの距離がじわじわと縮まっていく。相手は未だに攻撃を仕掛ける素振りを見せない。
「攻撃してこないなら、有難く先手はもらうよ」
流石に初っ端から魔法を使ったら、魔法陣を展開している間に攻撃されて不発に終わるだろう。なので、ここは出が早く威力もそこそこある剣術(初級)の武技で仕掛ける。
「くらえ、スラッシュッ!!!」
縦に全力で振り下ろした剣から斬撃が発生してビッグスライムへと真っ直ぐに飛ぶ。水色の巨大魔物ではそれを避けることはできず、額のど真ん中に直撃。
レベルアップした分、以前よりいくらか威力が上がったスラッシュはゼリー状の肉体の一部を削り飛ばした。
「スラミン、溶解液!」
一旦、動きを止めたエリアボスは、肉体の再生をし始める。少しずつ俺に抉られた額の傷が治っていく。
それを阻止するため、妻が己の従魔に追撃の指示を出した。素直にそれを受け取ったスラミンは遠距離から溶解液を発射。
再生に意識を向けていたビッグスライムは溶解液を避けられなかった。
「ナイス、スラミン! 私もやっちゃうよっ。闇魔法、ダークバレット!!!」
妻の魔法陣の展開が終わり、闇の弾丸が真っ直ぐに敵へと放たれた。この魔法は俺の武技やスライムたちの飛ばす溶解液より少し速さで劣るのだが、ビッグスライムはバカの1つ覚えのように再生することばかりに意識を向けているので避けられそうにない。
魔法が直撃することを確信した俺は、追い撃ちをかけるため火魔法の魔法陣を展開し始める。初めて戦ったときはそれなりに苦戦したのだが、今回は敵の行動や弱点を把握しているため全く負ける気がしない。というか、このまま完封できそうだ。それならヒートラインで相手を弱体化させるよりも、ファイヤーボールを叩きこんで一気に決着をつけてしまおう。
「よしっ! 当たった!!」
自身の魔法が標的へ直撃したことを確認した妻が喜びの声を上げる。
…………うわぁ、やっぱり火力が段違いに上がってる。
妻は前回の戦いからいくつかレベルアップした上で、更にSPを15も魔力に振ったのだ。その暴力的な魔力で繰り出される闇魔法はHPが高めに設定されているはずのビッグスライムを一気に瀕死の状態へと追い込んだ。
最早、満身創痍。次に何かしらの攻撃を受ければ終わりの状況。流石にここで再生を選んでも意味がないことをビッグスライムも悟ったらしい。
体をフルフルと揺らして見せた直後。玉砕覚悟で高く跳び上がり、俺たちを押し潰そうと空から襲いかかってくる。
いい覚悟だけど、少し遅かったね。攻撃する前に見せる動きさえなければ俺の魔法を止められただろうに。
「火魔法、ファイヤーボール!」
展開した魔法陣から人の顔くらいの大きさの火球が現れる。それを真っ直ぐとこちらへ降ってくるビッグスライムを迎え撃つように放った。
<見習い戦士のレベルが1あがりました。SPを2獲得>
ハイト・アイザック(ヒューム)
メイン:見習いテイマー Lv.14
サブ1:見習い錬金術師 Lv.7
サブ2:見習い戦士 Lv.9
HP:340/340 MP:300/300
力:31(+11)
耐:32(+42)
魔:37
速:19
運:31
スキル:テイム、火魔法、魔力操作、錬金術、剣術(初級)、槍術(初級)、盾、気配察知、聴覚強化、鑑定、解体、採取、潜水、伐採
称号:<ラビットキラー>
SP:14
「意外と余裕だったね~」
戦闘終了後、ステータスを確認しているとスラミンを頭に乗せた妻がこちらへと駆けてきた。
「そうだね。相手の行動や弱点を把握していたとはいえ、全員ノーダメージで完封勝利できるとは思ってなかったよ」
「私も。ちなみにハイトはどうしてこんなに楽に勝てたと思う?」
何か言って欲しそうな顔でそう聞いてくる。きっと褒めて欲しいのだろう。
「もちろんリーナの魔法があったからだよ。俺の火魔法を使う前にビッグスライムのHPをほぼ0まで追い込んだんだから」
「やっぱりそう思う? ……私、今日のご飯はパスタが食べたいな~」
これはリアルのご飯の方の話だね。
今日の晩御飯は何にするかまだ決めてなかったし、おねだりに答えてパスタを作るとしますか。
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