第84話 SPでステータス直上げ

 イッテツさんとミミちゃんに別れの挨拶をした俺たちは、その足でファス平原へと向かった。目的は俺と妻の武器作成に必要な鉄鉱石採掘ポイントまでの攻略を進めること。また杖を作成するのに必要な素材を落とすイベント限定の魔物がこの次のフィールドにも出現するらしいので、ついでに倒してしまいたい。


「そういえばもうビッグスライムってリポップしてる?」

「100%してるね。俺たちがあれを倒したのって1週間以上前だから」


 エリアボスに関して以前掲示板で調べた情報によると、まず奴らは1パーティーに対して1体出現する仕組みになっている。そのためエリアボスが出現するエリアに2パーティーいた場合は、2体のボスが現れる。ただし、プレイヤーには自分たち用に湧いたエリアボスしか見えない。

 そして1度倒すとリポップするまでに数日かかるらしい。正確な日数はもう忘れてしまったが1週間以内だったような気はする。


 俺たちがビッグスライムを倒してから10日以上経っているからリポップしているのは確定と考えていい。


「じゃあ、また戦わなきゃいけないんだね」

「そうなるね」


 俺たちは普段からエルーニ山からペックの森、そしてファーレンへと移動をしているがその都度レッサーコングキングを倒しているわけではない。どうやっているのかというと、いつもあの魔物が居着いているエリアを逸れた道を使っているのだ。そうすれば、一応エリアボスを倒さずにフィールド間を移動できる。


 ただし、この方法はどんな場合でも使えるわけではない。

 まず1度もエリアボスを倒さないでこの方法を使った場合だが、その先の村や町に入ることができないように設定されている。あくまでもこの方法は1度ボスを倒したプレイヤーが毎回毎回フィールド移動するたびにボスを倒さなければならない状況に陥らないように用意された救済ルートだからである。

 そしてもう1つ。エリアボスが出現する場所を通らないと絶対に次のフィールドに行けない場合だ。今回はこれが当てはまる。ファス平原と次のフィールドであるレッチェ街道を繋ぐ道は1つの橋のみ。その前にビッグスライムが鎮座しているのだ。橋を使わずに行こうとすれば、荒れ狂う大河を泳いで越えなければならない。一応、他の潜水持ちプレイヤーが通過できるか試したらしいが、流れに押されてまったく目的の方向に進めなかったらしい。最後には酸素ゲージが0になりHPがどんどん減って死亡したと書いてあった。


「でも、私たちだけで倒せるかなぁ……」

「前回はけっこう苦戦したもんね。でも、どうにかなると思うよ」


 ビッグスライムと初めて戦ったときのパーティーメンバーは俺と妻、それからマモルにすらっち、ぶーちゃんだった。

 今回は俺と妻とスラミンのみ。他の子たちは寝ていたり、遊んでいたりで経営地に残ったままだ。元の予定ではファス平原でサクラボアの狩りからのミミちゃんのお店訪問で終わるつもりだったから、マモルたちがいなくても大丈夫だろうという考えもあったしね。


 とにかく前回よりかなり数的には減ってしまったパーティーだが……俺はそこまで悲観的ではない。というか、勝てそうにないならわざわざここまで寄り道しないよ。


「どうやって戦うの? やっぱり火傷にしてから一斉攻撃??」

「う~ん、前回は数がいたからそれでやり切れたけど、今回は同じ方法だと無理だと思うよ」

「じゃあ、どうするの?」

「奴の弱点を突くんだよ」

「なるほどね……ちなみに弱点ってなんなの?」

「ビッグスライムの弱点は火らしい。だから俺のファイヤーボールがかなり効くと思うんだ。もちろんヒートラインで火傷にはするけどね」


 前回、ヒートラインを使用した際にビッグスライムがやけに嫌そうな反応を見せた。それが気になった俺は、その日ログアウトしてからビッグスライムの弱点について調べてみたところ火に弱いことが発覚した。

 最近習得した火の攻撃魔法を使えばかなりのダメージが見込めるはず。そこに追加で妻の高火力な闇魔法とスラミンの溶解液でどうにかできるのではと考えている。


「それなら、あとは私のパワーアップした闇魔法でどうにか押し切れるか」

「そうそう押し切れるとおも――――ってパワーアップしたってどういうこと? もしかして熟練度が上がって新しい魔法でも覚えたの?」

「違う違う。SPを15くらい魔力に振ったんだよ。マモルの速さとかハイトの耐久力みたいに飛び抜けた長所を作りたいなって思って!」


 ……なにそれ初耳。


「ほら、ステータス見せてあげる。かなり立派なものになったよ」




リーナ・アイザック(ダークエルフ)

メイン:見習いテイマー Lv.13

サブ1:見習い料理人  Lv.6

サブ2:見習い農家   Lv.1

HP:160/160 MP:230/230

力:11(+1)

耐:4(+9)

魔:63(+5)

速:30

運:15

スキル:テイム、鑑定、料理、栽培、伐採、採掘、植物魔法、水魔法、闇魔法、短剣術(初級)

称号:―

SP:9




「うわぁ……火力高っ」


 素で60越えってヤバいよ、絶対。闇魔法の威力も考えるとマモル以上の攻撃を出せるでしょ。

 サブ職の1つが未だにLv.1のプレイヤーのステータスとは思えないね。


「へへっ、恐れ入ったかな? ハイト君!」

「もちろん。俺の装備込みの耐久でも魔法で攻撃されたら、大ダメージを受けそうだよ」

「そうでしょそうでしょ! 2度目のビッグスライム討伐は大船に乗ったつもりでいていいよ」


 魔力の高さを褒めた結果、さっきまでのビッグスライムに勝てるかなとか言っていた妻はどこかへ消えた。今は自身満々なようなのできっとステータス以上の活躍をしてくれるだろう。



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