第79話 採取は流れ作業
ラニットディアを倒した俺たちは引き続きエルーニ山で月光草を探していた。もも肉がドロップアイテムとして手に入ったので、バガードもやる気満々。この勢いに乗って目的のアイテムを採取したいものだ。
「おっ、採取できる草発見」
足元にあるただの雑草が採取できるアイテムとして反応を示した。右手で掴んで引っこ抜いてみる。
苦味草
レア度:1 品質:低
毒はないが食用には向かない草。繊維質で噛み切りづらい上、噛めば噛むほどに苦味が口いっぱいに広がる。正常な味覚を持つ生物からは避けられているため他の植物よりも繁栄しやすく山や森でよく見かけられる。
なお、生産ギルドは1房1Gで買い取ってくれるが、他の場所ではゴミ扱いされている。
外れアイテムっぽいな。だって1房1Gって……流石にうまみが少な過ぎるだろう。錬金術に使用する薬草は買ったものばかり使っていたから、まさか採取でこんなものが取れるとは知らなかった。
その後も手当たり次第に草を採取していくが……なかなか目的のアイテムは手に入らない。地面に転がっているものから雑草の中にあるもの、木の枝に引っかかっているものまで、スキルが反応を示したアイテムを見つけては取る、見つけては取るを飽きるほど繰り返した。
あと途中何度か魔物との戦闘を挟んだが、相手はブラックボアだったので特に言及すべきドロップアイテムもなかった。
無心で流れ作業のように月光草探しをしていたが、ついに日が沈み始めて俺たちが帰る時間となる。結局、今日は望んだ結果は得られなかった。
薬草
レア度:1 品質:低
苦いが少し回復効果のある草。
食べることで最大HPの5%を回復することができる。
ヒノポポ
レア度:1 品質:低
夏前に赤い花を咲かせる植物。背丈は低くだいたい10cm前後のものが多い。生命力が強いため、採取してから3時間以内に別の場所へ植えるとそこで成長を再開する。
アップルンの種
レア度:2 品質:低
地面に埋めて水や栄養を与え続けると猿系の魔物が好んで食すことの多いアップルンの実をつける木が育つ。
石ころ
レア度:1 品質:低
どこにでも転がっている何の変哲もない石。
小型魔物の遺骨
レア度:1 品質:低
小型の魔物の死骸が時の経過とともに肉や臓器を失い骨だけになったもの。生前どういった魔物だったかはそうとう博識な研究者でないと特定できない。
苦味草20房以外に手に入ったアイテムがこれだ。ほとんどがレア度1の外れアイテム。レア度2がアップルンの種だったのは俺にとって唯一の救いだ。これを見習い農家の妻に育ててもらえばおいしいポーション作成に必要な素材が経営地で採取可能となる。そうなればわざわざファーレンへ買い出しに行く必要もなくなるのが有難い。
石ころは例の頑丈な石ブームのときなら手に入ったら嬉しいアイテムだったが……今はもうそれほど需要はない。あの稼ぎ時を逃さまいと大半の見習い錬金術師たちが頑丈な石を錬金して売り払ったので、今のファーレンの武器屋のほとんどは十分な数持っているから。
それに攻略最前線では鉄鉱石が発見されて武器や鎧は鉄製に。エンジョイ勢にも頑丈な石の剣はもう十分に行き渡ったため、今頃頑丈な石の剣を買うのは耐久値の確認を怠り武器を壊してしまった者くらいだ。
よって頑丈な石の剣の需要が少なく、その素材である石ころもプレイヤーからはあまり求められなくなったのである。
小型魔物の骨はマモルのおもちゃ兼おやつ。薬草も錬金術に使う。どちらも不要なものではないのだが、手に入ったところでいまいち喜べなかった。
あとはヒノポポとかいう植物だが、今のところ使い道はないのでアイテムボックスの肥やしだな。
どんな花をつけるのか気にはなるが、経営地に植えるつもりはない。生命力が強いと書いてあるし、元からそこに育っていた他の植物たちから場所を奪ってしまう可能性があるから。
鉢植えでも手に入ったらクランハウスの玄関先で観賞用に育てるのはありかもしれないが、どちらにせよまだ先の話だ。クランハウス自体完成していないし、鉢植えも持ってないからね。
「バガード今日はありがとう。また散策に出かけような」
カー。
経営地に帰還後、バガードに感謝を伝えると同時に次回の約束を持ちかけるともちろんと返事がきた。俺と違ってバガードは欲しいものが手に入って気分が良い状態が続いているので快く了承してくれたようだ。肉が手に入っただけでなく、採取中に出会った奴らとは別のブラックボアを帰り道で2体倒してレベルアップもできているからね。
バガード(一足烏)
Lv.5
HP:185/185 MP:68/95
力:11
耐:31
魔:16
速:9
運:13
スキル:飛行、挑発、硬化、土魔法
称号:―
……次の散策では俺のレベルアップと月光草を見つけることができるといいなぁ。
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