第76話 影の蹂躙
マモル(骨狼)
Lv.12
HP:269/350 MP:194/195
力:58
耐:17
魔:30
速:64
運:13
スキル:骨の牙、威嚇、気配察知、嗅覚強化、暗視、採取、潜水、影魔法←new
称号:<闇の住人>
マモルが影魔法を実演してくれたが、一応ステータスの方でも確認した。スキル欄にしっかりと新たな魔法が追加されている。
「マモル、これからは自由に出歩けるね」
俺の言葉を聞いたマモルは嬉し過ぎる故か、影の傘をさまざまな形に変化させて浮かれている。星型にしたりハートを作ったり、手を型取りピースしてみたり。とにかく影魔法を最大限活用して気持ちを表していた。
マモルが大喜びしてくれると俺も最後の選択スキルスクロールを使った甲斐があるというものだ。
「それだけ動かせるなら、ブラックボアでも探して魔法の使用感でも試してみる?」
影魔法の試用を提案すると戦闘好きのマモルはすぐに了承した。
そういうわけで、俺はマモルと共に経営地を出てエルーニ山を散策している。気配察知は既に野生のブラックボアを捉えている。俺たちは走って距離を詰め、あえて気取られるように獲物の正面に出た。
プゴッ。
こちらを発見して小さく鼻を鳴らすブラックボア。まだ何も仕掛けていないのに足で地面をドンドンとその場で蹴り、突進の準備をし始めた。
「影魔法でどうにかなりそう? 無理なら、俺が受けるけど」
元気な状態のブラックボアの突進はまだ受けたことはないが、装備のおかげで大幅に耐久が上がっている今なら大丈夫だろう。もちろんノックバック無効なんて都合の良い効果はついていないのでぶっ飛ばされるのは変わらないが。
「あー、必要ないか」
俺の言葉はどうやらマモルの耳には届いていなかったようだ。なぜなら、返事もなしでこれからこちらへ突進しようとしている相手のいる方へ1歩、2歩と自ら近づき始めたから。おそらくお前の突進なんぞ、この距離で受けても余裕で耐えられるぞ的な煽りだと思われる。
プッ、プゴッオオオオオ!!!
俺にはニュアンスでしか理解できなかった煽りだが、同じ魔物であるブラックボアにはかなり効果があったと見える。先程とは比べ物にならないくらい汚い鳴き声を上げて突進を開始した。
距離が離れていないためブラックボアはすぐにマモルの前へと到達。勢いそのままにぶち殺してやると言わんばかりの気迫と圧がそこにはあった。
「へ?」
予想だにしていない出来事が目の前で起き、俺は間抜けな声をあげる。
てっきりマモルは自身の影を伸ばして受け止めるものだと思っていた。しかし、我が従魔はそれより苛烈で凶悪な魔法運用をして見せた。
フィールドは昼間の山。太陽に照らされた木々や草蔓からは無数の影が生まれている。それをマモルは利用し、己に迫るブラックボアへとけしかけたのだ。さまざまな植物の影が全て槍のような形状へと変化して敵を後方から攻撃する。
ブラックボア側は止まってしまえば一巻の終わり。自分のスキルの威力を信じて前方へと猛進するしかない。
相対するマモルは自身の影を使って、敵との間に暗色の壁を築く。そこへブラックボアは頭から突っ込むが壁にひびを入れるだけに留まった。最後は敵の後方から迫る影の槍たちが容赦なくその体に突き刺さりブラックボアを討伐して見せた。
「すごいなこれ……」
どう考えてもぶっ壊れじゃないか?
そもそも魔力が30のマモルが使用してこれなら、本職の魔法使いが唱えたらどうなるんだよ。この山ぶっ壊せるくらいの大規模な魔法でも発動できるんじゃ……。
「ん? どうした、マモル」
1人頭の中で影魔法のヤバさに悲鳴を上げていると、マモルが尻尾で俺の足をツンツンしてきた。
えーと、ステータス見ろって?
伝わってきたマモルの意思の通りにステータスを開く。
MPが0!?
さっきまで満タンだったのにどうして。
…………少し考えてみたが分かったかもしれない。まず影魔法を取得した際に使えるようになる魔法はMPを消費して影を自由に操るというもの。マモルが己の影を操って日傘を作る程度ならさほどMPを消費しない。だが、あれだけ多くの影の形を変えて操作すればどうだろう。確実にとんでもない量のMPが吹っ飛ぶことになる。
魔法を発動しているマモル自身がそれをわからないわけがないのだが、初の魔法使用でテンションが爆上がりした結果、椀飯振舞してしまったというところだろうか。
「MPを回復するポーションはまだ錬金できてないから、自然に回復するまで経営地で休んでいなさい」
これは急いでMPを回復できるアイテムの錬金に挑戦しなきゃいけないなぁ。
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