第68話 初イベントスタート
もうすぐフリーフロンティアオンライン、初の公式イベント開催時間だ。現実で丁度、0時。10分後からスタートとなる。
「もうそろそろログインする?」
「そうだね。マモルたちにもイベントの概要とか軽く伝えておきたいし」
イベント自体はそこまで本気でやる予定でもないが、せっかくだから初日だけはちょっとがんばってみようという話になったので、俺たちはイベント開始前にログインした。
「マモル、バガード、それからバク丸。いい子にしてた?」
ログインしてする従魔たちの様子を確認する。
バガードは俺に気づくとすぐに飛んできて肩に乗った。
マモルは水浴びをしていたらしく骨身をぶるぶると振って水を払ってからこちらへと駆けてくる。
そして新顔のスライム。名前をバク丸とつけたその子は、ゆーくりとこちらへとぽよぽよ進んでいる。本当はもう少し早く進めるはずなのだが。数日接してわかったが、彼はどうやらマイペースな従魔なようだ。
「よし、全員揃ったね」
「こっちもみんな集めたよ」
妻のもとにはブラックボアのぶーちゃん、ヒールスライムのすらっち、そしてただのスライムのスラミンが集まっていた。
ちなみに俺のスライムの名前は、テイムするとき目の前に並べた5種類のアイテム全てを食べたため、バクバク食べる丸いやつを縮めてバク丸にした。バガードと大食いキャラが被ったなと思っていたらバク丸に否定された。本人いわく、好き嫌いがなく何でも口にするだけで、量自体はそこまで食べないそうだ。
それから妻のスライムのスラミンという名はいつも通りフィーリングでつけたらしい。
<イベント:ファーレンの春祭り>
ファーレンでは毎年、春に1年の豊穣を願って町を上げたお祭りが行われます。町民はお祭りの準備で大忙し。フィールドには期間限定の魔物が出現。フリーフロンティアオンラインの世界の新たな住民となった皆様も是非、お祭りに参加してお楽しみください。
(期間限定の魔物の討伐、それらのドロップアイテムを用いての生産活動、ファーレンの住民から出される期間限定クエストのクリアをすることでイベントポイントを稼ぐことができます。それらはイベント最終日である春祭りで好きな景品と交換できるようになっています)
強制的にウィンドウが目の前に開かれた。そこにはこれから始まるイベントについての説明が記載されていた。
説明はかなり簡素なものだ。事前にストーリー性はそこまでないのではと噂されていたので、別に驚きもしないが。ただ、住民たちから期間限定の依頼が受けられるみたいなので、それを進めていくこと自体をストーリーとして展開しているのかもしれない。
「急に出てきたからびっくりしちゃったよ」
「俺も。お知らせ通知がきたってことはもう日が変わったってことかな?」
「たぶんそうだと思う」
とりあえずこれから2週間の予定は従魔たちへ説明する。
夜は俺と妻それからマモル+他3体で一緒にフィールドでイベント限定魔物の狩り。昼はバク丸とファーレンで何かイベント関連の依頼を受けられないか探す予定になっている。
だが、俺たちはあくまでもエンジョイ勢なので、スケジュールはかなり緩い。なので従魔たちも水浴びやらなんやら好きなことをする時間ももちろんあるよと同時に伝えた。
バガードはご飯をくれるならそれでいいと答え、マモルは期間限定の魔物を狩れることに喜んだ。バク丸はめんどくさそうに体を震わせて、主人の頼みなら仕方ないなぁ的な反応を見せた。
妻の従魔たちはお祭りがあるということを聞いて、皆素直に喜んでいる。
「じゃあ、フィールドに出てみる?」
「そうだね。じゃあ、マモルは確定として残り3体、行きたい子いる?」
そう問うとスラミンがぷよぷよ揺れながら妻の頭に乗り、ぶーちゃんが俺の方へ寄ってきた。この2体は一緒に行きたいらしい。
「スラミンとぶーちゃんは決定だね! すらっちはいいの?」
妻は自身の従魔で唯一ついて行きたいと名乗り出なかったすらっちに問う。
「……そっか。すらっちは大人だね」
「すらっちはなんて言ってるの?」
「新人のバク丸を連れて行ってあげてだって」
「そっか。なら、お言葉に甘えてパーティーの残り1枠はうちのバク丸で埋めさせてもらおうかな」
勝手に連れて行かれることが決定したバク丸は、なにやらブルブルと震えて訴えてくるが気づかないふりをする。だって放っておくとずっと経営地の中でぐーたらしてそうだし。それにすらっちのご厚意を無駄にはするのは嫌だからね。でも、一緒に狩りに出て本当に嫌そうだったら途中でここまで連れて帰ってこよう。
「メンバーも決まったし、早速出発!」
妻のかけ声で俺たちの初イベントがスタートしたのだった。
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