第64話 魔力操作
ゲーム内で夕食を終え、妻は一足先にログアウトしていった。俺は残りの素材でなんとかおいしいポーションを作成できないかと挑戦する。4つ残っていたラニットペアーを全て消費し、失敗。だが、コツはなんとなく掴めてきたような気がしていた。そして最後1つしかないアップルンを素材に使用したとき、ついに錬金術が成功する。
<見習い錬金術師のレベルが1あがりました>
<錬金術の熟練度が規定値に達しました。錬金術失敗時、超低確率でアイテムが残るようになりました>
<新たに魔力操作の取得条件を満たしました。スキルリストより取得可能です>
大量のアナウンスが聞こえるが、一旦放置。先に作成したアイテムを鑑定する。
低級ポーション(アップルン風味)
レア度:2 品質:低
使用者のHPを最大HPの10%回復させる。苦味はかなり抑えられ、ほのかにアップルンの香りがする。
上手くできたみたいだ。
実際に飲んでみて確かめたいところだが、1つしかないアイテムを無駄に消費したくないので、あと数個作成できたらそのときに試飲しよう。今日は素材がないから無理だけど。
ひとまずポーションはアイテムボックスにしまっておく。
本当はこれでログアウトするつもりだったのだが、気になるアナウンスが流れたのでそうもいかなくなった。
レベルアップも嬉しいし、錬金術の熟練度が上がって失敗しても超低確率で素材が残るようになったのも有難い。だが、これらはおまけ程度に思っていた方がいいだろう。本命は魔力操作とかいう明らかに有能臭プンプンな新たなスキルだ。取得条件は明確にはわからないが、おそらく魔力を一定以上のレベルで操作できるようになることとかだと思う。この条件なら、錬金術師じゃなくて魔法使いなんかでも取得できそうだからレアなスキルというわけではなさそうだが。
俺は早速、スキルリストを開いて魔力操作の詳細を確認する。
「効果はスキル名そのままって感じかな」
魔力操作は魔力を使用する際に細かな操作をしやすくなるらしい。更に魔法発動時には、短時間にはなるが魔法の進行方向などを操作できると。
これ魔法を戦闘に組み込むプレイヤーには必須級のスキルな気がする。
例えば、ヒートラインを発動したとして。そこで敵の速さが高かったりして火線上から逃れた場合、普通のプレイヤーなら魔法が失敗に終わるので再使用するためにはクールタイムが終わるまで待たなければならない。しかし、このスキルを持っていれば敵が動いた方へ火線を操作して追えることになるので、魔法が失敗する確率を低くできる。持っているのと、持っていないのでは戦闘のしやすさがかなり変わるだろう。リカバリー能力が非常に高い良スキルだ。
それに魔力の細かな操作がしやすくなるというのも錬金術を使う俺にとってはかなり良い効果だ。
取得するのは確定だな。
消費SPは14とかなり多いが、これは必要経費だ。
ハイト・アイザック(ヒューム)
メイン:見習いテイマー Lv.13
サブ1:見習い錬金術師 Lv.7
サブ2:見習い戦士 Lv.7
HP:290/290 MP:134/290
力:28(+11)
耐:27(+24)
魔:36
速:18
運:30
スキル:テイム、火魔法、錬金術、剣術(初級)、槍術(初級)、盾、気配察知、聴覚強化、鑑定、解体、採取、潜水、伐採、魔力操作←new
称号:<ラビットキラー>
SP:8
よし、取得完了。
せっかくよさげなスキルを取得できたんだし、どこかで試してみたいな。今は夜だし、下手すれば、ナイトウォーカーと遭遇するかもしれないけど……そのときは逃げればいいしょ。
というわけで、エルーニ山へ1人で入った俺は気配察知を頼りに魔物を探す。できればあまり経営地から離れない場所にいてくれると助かる。
「おっ、いた」
この感じはブラックボアか。
突進でまたぶっ飛ばされそうだし、相手が気づく前に攻撃を仕掛けよう。
俺は自分の目の前に魔法陣を展開。
赤く輝いてはいるもののブラックボアとは少し距離があるのでバレないだろう。
「ファイヤーボール」
新たに使えるようになった火魔法を発動する。魔法陣から火の玉が発生。そしてブラックボアとはややズレた方向へと飛んでいく。
失敗――――したわけではない。魔力操作の効果を確かめるためにわざと外したんだ。
このままではファイヤーボールが茂みに入ってしまうので、すぐに魔力操作を使って軌道をやや左へと逸らす。
プゴッオオオオオオ。
背中の体毛を一瞬で焼かれたブラックボアが悲鳴を上げる。
「何もさせないよ。スラッシュッ!!!」
流石にファイヤーボール1発では仕留められなかったので、反撃を食らう前に斬撃を放つ。それと同時に自身は走り出して敵との距離を詰め、2度斬りつける。
「うん、いい感じだね」
ブラックボアは動かなくなった。
一応、素材を持ち帰るため解体する。
黒ボア肉
レア度:2 品質:低
ブラックボアから稀に取れる肉。ガツンとしたワイルドな味わいが好きな獣人が好んで食す。
あっ、ボア肉手に入った。
次にログインしたとき、妻へ渡そう。
これ以上調子に乗って狩りをしていると痛い目に合うような気がしたので、俺は大人しく経営地へと戻りログアウトした。
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