第49話 鉄防具
「ここがわたしの、お店。ゆっくり、見ていって」
ミミちゃんの案内で向かった先にあったのは、レンガ造りの1階建て。シンプルな盾の看板が吊るされている防具屋だった。
彼女自身が特徴的な見た目をしているので、店の方もそういう外観にしているのではないかと予想していたが違ったようだ。
そういえば俺が買った皮の盾も普通の物だったので、趣味と仕事でキッチリと線引きしているのかもしれない。
「うん、そうさせてもらうね」
店の入り口付近には様々な鎧を着せたマネキンが並べられていた。俺や妻が装備しているような皮の鎧。他にはタンク系のプレイヤーが好みそうな重量のある銅の鎧や石の背負い甲羅などがあった。
鎧に関してはレッサーコングキングの背皮というレア度2の素材を持っているので、素材持ち込みで作ってもらえないかと頼むつもりである。一応、ボス素材なのでレッドボアの皮で作られている皮の鎧より性能が良い物ができるはずだ。
イッテツさん情報によると、武器や防具の制作には時間がかかるらしい。ゲームなので現実と比べると制作過程は簡略化されているしアシストも入るのだが、それでも良い物を作るには腕も時間も必要なのだということだ。店に大量に並べるような数打ち物なら、スキルでわりと簡単に制作できるとも言っていたが。
今回はミミちゃんが素材持ち込みで鎧制作を受けてくれたとしても、初めて扱う素材なのできっと完成までにそれなりの時間がかかる。よって俺はしばらく今着ている鎧で過ごすことになるだろう。
鎧のことはさておき。
お目当ての盾のコーナーを見せてもらおう。
まず初心者に掲示板などでよくオススメされる皮の盾。それを様々な色に染めた商品が置かれていた。
皮の盾
レア度:1 品質:中 耐久値:30/30
上昇値:耐+3
特殊効果:なし
軽く扱いやすい盾。木を円盤状に加工した物に皮を貼りつけられている。
通常色、ピンク、青、黒と鑑定してみたが、内容は同じ。色がついているのは完全にオシャレ要素というわけだ。
前回は間に合わせだったし、金銭的余裕もなかったので皮の盾しか買えなかった。だが、今日はお金に余裕があるので他の盾も見ていこうと思う。
頑丈な石の盾
レア度:1 品質:中 耐久値:100/100
要求値:力(8) 上昇値:耐+4
特殊効果:なし
頑丈な石の形を整えて作られた原始的な盾。
銅の盾
レア度:1 品質:中 耐久値:70/70
上昇値:耐+4
特殊効果:なし
銅で作られた盾。皮の盾と並び、初心者向けで扱いやすい。
鉄の盾
レア度:2 品質:中 耐久値:150/150
要求値:力(25) 上昇値:耐+15
特殊効果:なし
鉄製の盾。装備するにはそれなりの力が必要。
鉄の大盾
レア度:2 品質:中 耐久値:180/180
要求値:力(30) 上昇値:耐+20 減少値:速-2
特殊効果:なし
鉄製の大盾。装備するにはそれなりの力が必要。
「へぇ~、ついに鉄製の装備が売り出されるようになったんだ」
鑑定結果を見るに、これまでの装備とは一線を画す性能だね。その代わりに装備するためにある程度のステータス値を要求されるらしい。鉄の大盾に関しては、マイナス効果まである。
「うん。素材を知り合いが、譲ってくれた」
「ミミちゃんは防具製作者としてかなりの有望株で。シャルロット佐藤さんっていう大手クランのクラマスさんから贔屓にしてもらっているんですよ」
カタカナ+漢字の名前……掲示板で、同じ法則で名前をつけている人が掲示板に書き込んでいるのを見たことがある。もしやシャルロットさんという方は、あの人たちのクランのトップなのではないだろうか。
「そのクランというのは……」
「エクストリームな漢達というクランです。すでに経営地を手にしたということで有名なところですね。ちなみにこのクラン名なのに、頭であるシャルロット佐藤さんとクランの幹部陣は全員女性なんですよね」
ああ、やっぱりそうなんだ。
クラン名といい、掲示板に現れる人たちといい、ここの人たちはかなり癖が強そうだな。
「シャルは、とてもいい、人。今度、ハイトも会って、話してみるといい」
「機会があればそうするよ」
ミミちゃんがこうまで言っているということは、きっと悪い人ではないのだろう。今後、出会うことがあれば挨拶くらいはしてみようか。
「うん。それで、どの盾買う?」
また急に話題を変えるミミちゃん。
「えっ、と鉄の盾が欲しいかな」
正直、あの性能を見せられて買わないという選択肢はない。
だが、力の要求値が25なのに対して、俺の素の力が23しかないという問題がある。要求値を超えなければ装備できないのか、それとも装備の能力が完全には発揮されないのかはわからないが、とにかくどうにかして力を2あげた方がいいのは事実である。
仕方ないSPを使うか。
たしか22くらいは溜まっているはずだ。2ポイントくらいステータスに振っても問題はないだろう。
「わかった。鉄の盾は、50000G」
ミミちゃんの抱えていた熊のぬいぐるみがまた勝手に動き始める。テクテクと歩いてきたかと思うと、俺の前で手を差し出した。
きっと代金を渡してくれということだろう。
「はい、これで丁度のはずだよ」
ぬいぐるみは俺から代金を受け取ると、すぐにミミちゃんの元へ戻っていく。
「うん、たしかに。じゃあ、これ」
ミミちゃんから鉄の盾を受け取った俺は、早速装備してみることにした。
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