第47話 不意の遭遇
アネットさんと話し合いをした結果、ゲーム内で10日後から経営地での建築が始まることになった。その日は俺が疲れてしまったためアネットさんが帰った後すぐにログアウトした。
翌日の夕飯後。妻は趣味絵を描くと言っていたので、1人でフリフロへログインする。丁度、ゲーム内も夜中だったので、今日は従魔2体と一緒に出かけようと思う。
「マモル、久しぶりにファーレンへ行こう。俺の盾を買いたいから」
流石にいつまでも盾がない状態でスキルを腐らせたままにするのはもったいない。なので今日は盾を購入するつもりだ。ついでに槍でしっくりくるものが見つかれば買うかもしれない。せっかくランダムスキルスクロールで槍(初級)を手に入れたんだ。一度は試しておきたい。お金はアネットさんたちに支払う分を考えてもまだ200000Gほどあるので気にしなくていいしね。
俺が武器を買うとなれば、相手はもちろんイッテツさんだ。そして盾を売ってもらうのは、以前イッテツさん経由で皮の盾を売ってくれた防具屋さんということになっている。
今日は空飛ぶバガードの下をマモルの背に乗って移動しているのだが、特別いつもより早く移動できるというわけでもない。バガードの速さにマモルが合わせて移動していると、俺が自力で移動するのとそう変わらなくなってしまうからだ。
それなら俺は自分で歩きたいのだが、マモルがそうはさせてくれない。途中で背から飛び降りてみたが、それに気づいたマモルはシュンっとうなだれてしまった。悪いことをした気分になったので、今は大人しく乗せられている。
アァー!
アァーー!!
もうすぐ山を出られる。といったあたりで突然バガードが警戒せよ。と大声で鳴いた。マモルがスピードを落とし慎重に前に進んで行くと、気配察知に魔物の存在が引っかかった。
「……これまでに遭遇したことない魔物だ」
ギリギリ山のフィールドだと考えた場合、未知の魔物が現れても何らおかしくはない。なぜなら、俺たちはまだエルーニ山の全てを知っているわけではないからだ。バガードはいつも通りの道筋で移動していたようだが、野生の魔物はそうはいかない。
「マモル、バガード。わかってると思うけど、もうすぐ接敵するから気を抜かないでね」
カァー。
バガードからは当たり前だと言われた。マモルの方はどんな魔物がくるのかワクワクしているらしく俺の言葉は耳に入っていない。
「……姿が見えない?」
スキルは魔物が俺たちの前にいると示しているにも関わらず、視界には生き物の姿は映らない。俺では夜の森という場所では遠くまで見ることはできない。だが、暗視スキルを持つマモルならば敵の姿を見つけられるはず……なのだが、マモルも俺同様に相手を視界に捉えられてはいなかった。
「バガードも相手の姿は見えないよな?」
アー。
そうだと返事がくる。ということは敵は姿を隠すのが得意なようだ。なにせ気配察知によると俺たちの半径3m以内まで近づいてきているらしいからね。
「マモル、姿を見つけるのは諦めよう。素直にスキルを信じて、感知した場所に攻撃をしかけよう」
今回、索敵スキルを持たないバガードは参戦しない。ただ、巻き込まれぬように飛んでいる高度を上げた。
初手でしかけるのは俺だ。3m以内、それも完全にスキルによって居場所が特定されているのなら、姿が見えなくとも攻撃は当てられるはず。
その場合、マモルの攻撃では一度で倒してしまうかもしれない。可能であれば攻撃を当てた場合、相手を視認できるようになるのか。などを知りたいのでマモルと比べれば力の数値が低い俺が攻撃をすることにした。今後、妻が同じ魔物と遭遇したときのために少しでも役立つ情報を得ておきたいのだ。
相手に気取られては避けられるかもしれない。なるべく自然な動きで手を背に回す。そして頑丈な石の剣の柄に触れると同時に俺にできる最速の動きで引き抜く。そして大きく一歩、気配のする方へと踏み出し剣を振り下ろす。
ミシっと骨のような物にヒビを入れた感覚が手から伝わる。剣先を見ると木の幹にへばりついた四足の爬虫類がいた。俺の一撃は見事、敵を捉えたようだ。
しかし、妙だな。見た感じだとこいつは体色を変えて潜むカメレオン系の魔物のはずだが、俺の攻撃を受けた箇所から血ではなく闇色のモヤモヤとした謎の物体が蠢いている。
目で見て取れる情報には限りがあるか。こいつがまた変色して姿を消す前に、鑑定しておこう。
ナイトウォーカー(クラス:コモナ―)
闇夜を歩く不定形の存在。
普段は生息する場所に適した生物の姿を取り行動する。自身がナイトウォーカーだと看破されるとたちまち姿を変貌させ、夜の名を冠する者の恐ろしさを見せつけるだろう。
鑑定するべからず。
「鑑定しちゃいけないなら、する前にわかるようにしてくれよ!!」
俺が叫び声を上げると同時にカメレオン体全体から黒いモヤモヤが溢れ、膨張し始める。どう見てもヤバい魔物だ。
でも、鑑定した情報では、こいつはボスでもなければユニークでもない。だったら、マモルと一緒なら倒せるはずだ。なんたって俺たちはユニークボスを倒したパーティーなんだから。
「マモル喜べ、こいつは倒しがいがありそうだ」
相棒は興奮した様子で、尻尾を地面に叩きつけ始めた。
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