第41話 仮押さえ

 マーニャさんを含む3名のギルド職員が湖畔を調査し始めてから2時間ほど経過した。その間、ガストンさんは常に彼女らの近くで護衛を。俺たちは手持ち無沙汰になり、それぞれやりたいことをしていた。

 妻は絵の続きを、俺はみんなから少し離れたところでサブ職のレベリングと錬金術の熟練度をあげようとがんばっていた。錬金素材は持ち歩いてはいなかったが、採取スキルがあるので自分で集めた。この湖畔では薬草と水がすぐに用意できたので楽だった。集めた素材が切れたので、見習い錬金術師のレベルが1上がったことをステータスを見て確認していたところにマーニャさんから声がかかった。




ハイト・アイザック(ヒューム)

メイン:見習いテイマー  Lv.12

サブ1:見習い錬金術師  Lv.6

サブ2:見習い戦士    Lv.6

HP:260/260 MP:110/260

力:23(+11)

耐:25(+9)

魔:33

速:18

運:28

スキル:テイム、火魔法、錬金術、剣術(初級)、槍術(初級)、盾、気配察知、聴覚強化、鑑定、解体、採取、潜水

称号:<ラビットキラー>

SP:22




「ハイトさん、お待たせしました」

「あっ、終わりました?」

「はい。思った以上に土地が広くて時間がかかってしまいました。申し訳ございません」

「気にしないでください。俺たちはそれぞれやりたいことをして時間は潰してましたから。それで……結果を聞いてもいいですか?」


 ミスはしていないのでアウトとは言われないと思うが、こういうときは何故か緊張する。


「わかりました。では、結果をご報告します。こちらの土地はクラン<アイザック一家>による支配が――――認められました。よってギルドを通してエルレイン王国へ1000000G納めることで、この一帯はクラン経営地となります」


「やった!!! ハイト~、がんばったかいがあったね!」


 いつの間にか妻が隣にきていたようだ。マーニャさんからの報告を聞いて大喜びしている。両手でハイタッチを求めてきたので、それに応える。


「うん。これでやっと従魔たちと好きなように暮らせるね。今借りている宿じゃ、これ以上従魔の数を増やすのは厳しかったし、タイミングもばっちりだった」


 宿の女将さんのご厚意で従魔も泊めてもらっていたが、流石にこれ以上数を増やすのは迷惑になりそうだったからね。


「そうだねー。でも、土地は手に入ったけどクランハウスとかはどうしよう? 私たち知識もないし、家を建てたりできないよ」

「たしかにね。どうしようかな……」


 スキルに大工的なものってあったっけ?

 あれば取得してがんばってみるのもありだけど……そういえば見習い大工って職業があるって聞いたことがあるな。でも、それだと他の職業のプレイヤーは取得条件を満たせずに大工に必要なスキルを取れなさそうだ。


「それでしたら、ファーレンの大工たちを頼ってみてはどうですか? なんでしたら、ギルドの方からご紹介もできますので」


 マーニャさんから提案があった。プレイヤーの大工を探してもいいが、人気職の見習い戦士とかと比べると選んでいる人は少なさそだし、探すのも手間もかかりそうなので今回はギルドを通して町の大工さんたちにお願いしよう。


「お願いしたいです」

「わかりました。でしたら、献金をして頂く必要もありますので、一度ファーレンへ戻りましょう」

「あの、今ここを離れても別の来訪者に上書き支配とかされたりしませんか? 献金が終わるまでは正式にクランの経営地となったわけではないですよね?」


 ギルドに確認までしてもらった土地を奪えるなんて嫌らしい仕掛けは施されていないと思うが、一応確認を取っておく。


「その心配はありません。冒険者ギルドの方で確認まで済ませて、仮押さえ状態になっているので」

「だったら大丈夫です。リーナ、すらっち町へ行こうか」

「いいよー。でも、マモルとバガードはいいの?」

「あの子たちはあそこで遊んでるから好きにさせてやろうかなと思って」


 マモルとバガードはこの2時間ずっと一緒に遊んでいた。どうやら気が合うらしい。従魔同士の仲が深まるのはとても喜ばしいことなので、このまま遊ばせておくために置いて行こうと思っている。

 それにこの湖畔は日陰が多くて、マモルの日照ダメージも気にしなくていいからね。


「そっか。じゃあ、早速ファーレンへ戻ろう!」

「あ、でもバガードの案内なしだと山を下るのに時間がかかりそうだなぁ……」


「安心しな、兄ちゃん。俺は今日でこの山は4回目だ。流石になんとなくのファーレンの方向は掴めてるから、案内なしでもどうにかなる」 


 流石先輩冒険者。ガストンさん頼りになるなぁ。


「じゃあ、帰りの魔物は僕たちがやるのでガストンさんは先導役お願いします」

「おう、任せろ。ひよっこ共、素人が3人いるんだから撃ち漏らすなよ?」

「「はい!」」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る