第16話 再戦に向けて(3)
翌日、仕事を終わらせた俺はさっそくゲームにログインする。
「リーナが先にいるのって珍しいね」
いつもは俺の方が先にログインしていて後から妻がくるパターンが多いのだが、今日は逆みたいだ。いつも借りている宿の部屋で微妙な表情のマモルに妻がじゃれついていた。
「だって今日は私の従魔を探しに行くんでしょ?」
妻は両手でマモルをわしゃわしゃしながら、顔だけこちらへ向けて答えた。
「そうだよ。あのユニークボスを倒すために戦力が少しでも欲しいからね」
あとせっかくテイマーになったのに、従魔なしなのはもったいない。
「マモルがいたのに勝てなかったんだもんね。よ~し、私もがんばって強くなるぞ!」
「俺も次は一撃でやられるようなことはないようにしないと」
とりあえず昨日保留にしたスキルについて。
1日考えた結果、身体強化の取得は後回し。代わりに火魔法と盾のスキルを取ることにした。
火魔法を選んだ理由は、穏やかな草原なら足元の草に着火できるのではないだろうかと思ったからである。それができれば火の強さ次第では敵の行動を制限できるかもしれない。もしくは怨嗟の大将兎の毛皮を燃やせるかも。どちらかが可能であれば戦闘はかなり有利になるだろう。
もう1つの盾スキルだが、これは俺の持っている剣術(初級)などと同じく盾の扱いに補正が入るものだ。これにより盾で攻撃を防いだり、弾いたり、受け流すといった行動がしやすくなる。ただ装備を更新して耐久力を上げるだけでなく、盾によってダメージの軽減を計るべきだと考えた。
2つのスキルを取得した結果、SPがまたしても1桁台になってしまった。レベルアップ以外に手に入れる方法はないのだろうか。
「スキルも取ったし、装備の更新をしに行こう」
「その前に生産ギルドで低級ポーションを売らないとお金ないでしょ?」
「あっ、忘れてた」
宿を出た俺たちは、生産ギルドにて下級ポーション5つを納品しろと記載された常設依頼を受注して800Gを受け取る。それを4回繰り返し、計20本を手放して3200Gの儲けが出た。低級ポーションはあと10本ほどアイテムボックスに入れてあるが、これは自分たちで使う用なので、生産ギルドへは渡さない。
そして次に向かったのはイッテツさんたちの武器屋だ。事前に頼んでいた頑丈な石の剣などを受け取るつもりである。
このゲームではフレンド間のメッセージ送受信と掲示板機能のみログアウト状態でも使用することができるので、昨日ログアウトした後に頼んでおいたのだ。ちなみにこの機能を使って、イッテツさんとはよく連絡を取っている。
「お疲れ様でーす!」
武器屋に入るとカウンターのところで彼が待っていた。
「お疲れ様です。すみません、急に注文入れちゃって」
「気にしないでくださいよっ! 俺とハイトさんの仲じゃないですか」
「ありがとうございます。それじゃあ、昨日伝えたように頑丈な石60個お渡ししますね」
「はい、受け取りました。それにしても……本当に60個も用意するなんて、すごいですね。おかげでまた頑丈な石の剣を店に並べることができそうです」
実は昨日俺からイッテツさんへ連絡を入れると、最初は断られたのである。耐久値が頑丈な石の剣の方が銅の剣より高いという話が掲示板から出回って数日が経っている。そのせいで頑丈な石の剣が飛ぶように売れて材料不足に陥っていたのだ。もちろん知り合いに見習い錬金術師がいる見習い鍛冶師は頼み込んで素材を用意していたようだが、この武器屋は知り合いに見習い錬金術師がおらず困っていたようだ。そこで俺が見習い錬金術師であることを告げると、頑丈な石の剣代を無料にして必要な防具を知り合いの防具屋から取り寄せるから、頑丈な石が欲しいと言われて承諾した。
よってさっき生産ギルドで稼いだお金は武器代ではなく防具代となる。
「いえいえ。俺もサブ職のレベルが上がりますし、これからも言ってくれれば渡しますよ」
「本当に有難い。では、こちらをどうぞ。皮の盾が800Gと防具一式で1200Gなので、2人分で3200Gになります」
イッテツさんが立て替えてくれていた防具代を渡して、俺たちは装備の更新を終えた。2人してスキルや装備の構成が変わったので、一度ステータスを互いに見せ合うことになった。
ハイト・アイザック(ヒューム)
メイン:見習いテイマー Lv.6
サブ1:見習い錬金術師 Lv.5
サブ2:見習い戦士 Lv.2
HP:120/120 MP:180/180
力:14(+11)
耐:15(+12)
魔:25
速:15
運:21
スキル:テイム、火魔法←new、錬金術、剣術(初級)、盾←new、気配察知、鑑定、解体
称号:<ラビットキラー>
SP:6
<装備>
頭:なし
胴:皮の鎧(上)
脚:皮の鎧(下)
靴:皮の靴
装飾品:―
武器:頑丈な石の剣
盾:皮の盾
リーナ・アイザック(ダークエルフ)
メイン:見習いテイマー Lv.6
サブ1:見習い料理人 Lv.1
サブ2:見習い農家 Lv.1
HP:90/90 MP:110/110
力:7(+1)
耐:3(+9)
魔:31(+5)
速:26
運:8
スキル:テイム、料理、栽培、鑑定、植物魔法、水魔法
称号:―
SP:6
<装備>
頭:なし
胴:皮の鎧(上)
脚:皮の鎧(下)
靴:皮の靴
装飾品:―
武器:樫の杖
「ハイトに魔力で追いつかれそうなんだけど。それにMPで負けてるし……」
「サブ職が全く育ってない状態なんだからしょうがないよ。ユニークボス戦が終わったら、兎肉を料理して見習い料理人のレベルをあげよう」
逆に5つ分のレベル差があるのに覆せないのはすごいよね。流石特化型の種族。俺の経験からして見習いテイマーはレベルアップ時に魔力が1あがるのはほぼ確定と言っていい。後はサブ職でも魔力が上がるようなら、妻はかなり高火力な魔法系プレイヤーになれそうだ。
「うんうん!! そのためにぜーったい、ユニークボスを懲らしめないとね」
妻のやる気が更に上がったみたいだ。
「それじゃあ、本命のリーナの従魔探しに行こうか」
「よしっ! 今から行くから待っててね。私のまだ見ぬ相棒ちゃん!!」
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