第三話「赤ずきん」

 (何度見ても、本当にきれいに整頓されているな、これらのもの全部自作なのだろうか・・・

  それだとしたら日曜大工どころではないな、職人の域をいっている気がする、それこそ本棚の装飾品もかなりきれいに彫られていて売り出してもいい値段になりそうだ。)


 「何見ているんだ、さっさと座ればいいだろうに」

 「すまない、さっきはあまり部屋を見えていなかったからな、なんとなく興味で見てしまった」

 「いや気にしてない、さっさと話しを聞きたいだけだ」

 「そうだな、では失礼して座るとしますか」


 (この椅子も木で作られているわけだが釘もなしで木材どうしをただ組み合わせているだけだが組みからがマジで匠の域に達している、こっちの世界になさそうな技術のはずなんだが、それを何も見ないで作るのは本当に腕を持っている証拠だな


 (さて、あらためて狼男の巣窟に戻ってきたわけだが、果たしてどうやって話を切り出すべきか・・・)

 (いかんせん本の話はできないのが何とも言えないな・・・)

 (どうするの?結構話せない部分しかないけれど・・・)

 (そうなんだよな~どうしたものかなとは思っている。マジでどうしよう・・・)

 (はぁ・・・本当あなたは毎回計画性が全くないわね・・・はぁ)

 (いや2回もため息つかなくてもよくないですか!とまぁどうしたもんかと悩んではいるが何とかなると信じてる)

 (ハァ・・・)


 「じゃあ、あの話の続きを聞かせてもらおう」

 「そうだな、まず改めてだが、お前はかなり近い時間に殺されるのが確定している。これはどうあがいても揺るがない結果だ、そしてお前はおばあさんと赤ずきんを食うことになる。これもお前の行動で変わることはない結果だ。」

 「流れとしてはお前がおばあさんに成り代わっておまえは赤ずきんも食らい、その後狩人に銃を撃たれてお前は死ぬ」


 「そうか、それで赤ずきんとおばあさんは俺が食らった後は生きているのか?」

 「そればかりはわからない、としか答えることができない、だがお前が死ぬのが確定していたとしてもお前が死ぬ必要がない状態にする方法はある」

 「どういうことだ?そんな方法があるのならぜひ聞きたいものだが、どうすればいいんだ?」


 「それはまたあとで話すとしてお前を殺されたように仕向けるためにはお前以外の協力が必要になる、そのためにはまず狩人の力が必要になるということになる。」

 「だからまず俺らは狩人に会ってくるから今は待つことがお前にできる最善のことであると思ってくれればいい。」

 「それにしても今更なんだが意外と冷静なんだな、てっきりまた怒り出すのかと身構えてはいたんだが、おまえが冷静に聞いてくれてありがたいよ」


 「いや、そこまで冷静ではない、がなんとなく俺の本能がそうさせる未来になる気がするから冷静でいられているだけだそれにおばあさんと赤ずきんが無事であるかもしれないと考えられているからなのかもしれない」

 「ともかくもどかしいと思うがもう少し待ってくれ狩人と会話してからの話になってしまうから動けないというのが正しいな。」

 「あぁわかった、気を付けて向かってくれ正直その狩人を信じられてはいない」

 「十分気をつけるさ、まだ解決してないからな、何が起きるかわからない」

 「あと、赤ずきんの家を教えてくれないか?」

 「ここまで来たのはいいがここからどうやって向かえばいいのかわからないんだ」

 「なるほどな、といっても結構すぐ着くと思うぞ、この家から出て左に向いてまっすぐに進んでいたらつくからな、迷うことなくつくと思うはずだ」

 「そうなのか?ここに来る前ですら結構森の深い所に住んでいると聞いたんだが、お前がそう言うならそうなんだろう、ありがとう」

 「じゃあ、そろそろ行くはまたあっちで話が進み次第戻ってくる」

 「わかった、では待っている」


 「最後に聞いておきたいんだが、これらの家具は全部何も見ないで独学ですべて作ったのか?」

 「そうだな、全部自分で作ったがそれがどうかしたのか?」

 「いや、なんでもないただなんとなく気になっただけだから気にしないでくれ」

 「そうか」

 「すまないな、変なことをきいて」

 「いや気にしてない」

 

  カイトたちは椅子から立ち上がり、狼男の巣穴から出て赤ずきんの家を目指すことにした。


 (まずは、狩人の情報も欲しいが、一番元凶に近そうな赤ずきんの家から向かうとするか、そこで一番物語の元凶に近い二人の情報を得てから狩人の家に向かうか)

  と次の目的を考えていると


 「で、どうするの?これから」

 「どうするって、そりゃ赤ずきんの家もといおばあちゃんの家に向かい二人の情報を得て狩人に狼を殺すのではなく仮死状態にするように説得してこの物語は解決するだろう?ただそれだけだよ」

 「それだけって仮死状態にするってどうするのよ?」

 「簡単な話だ、麻酔薬とか昏睡薬とか使ってやろうかと思ったが、物語的には死ぬのが確定しているそしてグリムでは腹を裂かれて救出される終わり方である以上最悪「死亡」という状態にはならないといけないためここは誰もが知っている方法を使おうと思う。」

 「まさか球体状のものを脇に挟んで血流を止めることで仮死状態にするの?」

 「そんなことしなくても仮死状態にする方法はある」

 「ようは冬眠状態にしてしまえばいいだけだ、あいつは狼男ではあるが人間ではない」

 「ということはおそらく狼に近しい人間という状態である以上冬眠状態になれば仮死状態になるということだ、そうすることであとは狩人が空砲を撃つだけでめでたしめでたしというわけだな」

 「でその冬眠状態にするためにはどうするつもりなの?」

 「これも簡単な話だ、急激に温度さえ下がってしまえば人間は凍えて死んでしまうが動物というものはスイッチのように切り替えることができるつまり急激に温度が下がったとしても生命活動自体は行っているため、人間とは違い、冬眠は狼男の周囲だけ温度を急激に下げるだけで冬眠にすることができるというわけだ」

 「なるほどね、その温度を下げるのに魔法を使うわけね」

 「そういうことだ」

 「でその冬眠は熊とかの冬眠と違い息をしているのではなく、無呼吸に近いため外から見ると死んでいるも同然となり「死亡」という認識になるということだな。」

 「で結構歩いてきたんだがどこにあるんだ?と思ったがようやく見えてきたな」


 狼男の巣穴から直進し歩き続けているとログハウスのような丸太で作られた家がカイトたち目の前に見えてきたのであった。


 トントン


 「誰かいますか~」


 トントン


 (もしかして、開いてるのか?やってみるか)


 カイトがドアノブを握り、ドアを押したら

 

 ギギィ

 

 という音を立て扉が開くのであった。


 「おいおい、戸締りしてないはさすがに不用心が過ぎますよっと」


 (開けたのはいいもの、ログハウスらしく、暖炉とか机、椅子があって食器が二人分置かれているっていうことはこれから夕飯か?で奥に続く扉があるっていうことはあそこにばあさんがいるっていうわけか)

 

 (とりあえず行ってみるか)


 「失礼しますね~」

 「不法侵入じゃないですよ~開いてたから入っただけなのと返事がなかったので心配で入っただけですよ~」

 「それを不法侵入っていうんでしょ」

 

 ペシッ!

 

 「いて!まぁいいじゃないか、さてと扉の前まで来たがはてさて」


 トントン


 「誰かいますか?」

 「いないなら開けますよ~」

 「どちら様ですか・・・」

 「おお!いたのか、よかったよ、いなかったら警察だ!って言いながら入るところだった。」

 「ケイサツ・・・って何ですか?」

 「ああ、そこは気にしなくていいよ」


 (あなたが変なこと言ったから向こう、困惑が先にきちゃってるじゃない)

 (いや~仕方ないだろ、勝手に入るのもあれだったんだし)

 

 「そうですか、それでここに何か用ですか?」

 「ごめんなさいね、私たち旅人みたいな人たちなんだけど、森に来たのはいいもの道に迷ってしまって道を聞こうと思って森のどこかにおばあさんがいることを聞いていたからさまよっていたらここにたどり着き、扉に鍵がかかっていなくて入っただけなので、できれば道をおしえてほしいな~って思っています。」

 「そうでしたか、ではいったんそちらに向かいますので暖炉のあたりで待っていただいてもいいですか?」

 「わかりました」


 (ほら行きましょ)

 (まぁ少し待ってたら出てくるだろう)


 さて何から切り出すべきか・・・


 「お待てせしました」


 声がした方を見てみると、そこにいたのは童話に出てくるように赤いレインコートのような服を着たおんなの子が立っていた。


 (見た目は確かに16歳くらいだろう、髪の毛も茶色と史実にかなり沿った髪をしている俺的に髪が長いのはポイント高いな。)

 

 ガシッ!


 (いてぇじゃねか!)

 (なんだかいやらしい視線を向けていたからよ)

 (なんでだよ!そんな目線は向けてねぇよ!)

 (あなたがどう感じたかはどうでもいいわ、私がそう思ったから蹴ったのよ)

 (理不尽過ぎない・・・)


 「あのどうかされましたか?」

 「いえいえ、気にしないでください」

 「それで道に迷ったそうですが、時間も時間なので一緒に夕飯食べていきますか?」

 「ではお言葉に甘えていただきます」

 「食器をご用意しますね、そこに座って待っていてください」

 「ありがとうございます。」

 「お世話になります。」


 しばらく二人が座っていると


 ガチャガチャ


 と二人の前に木の皿、木のコップ、ナイフ、フォーク、スプーンとおかれていき、スープが皿にコップに水が注がれていく。


 「よいしょ」


 ドンッ


 バケットいっぱいに入っているパンが二人の目の前に置かれた。


 「す、すごいな・・・」

 「これだけのパンをいつも食べているのか?」

 「そういうわけではないんですけど、お二人のために増やしてみました・・・」


 (ああ、そのテレ顔はあの狼を落ちるはずだ)


 ドスッ

 

 (いてぇ!)


 ちらりと正面にいたヒヨリを見たが表情を変えず赤ずきんの方をみていたため、何も言わず、いったん赤ずきんと話を進めるために切り出そうとした。


 「すまない、今おばあさんはどこにいるんだ?」

 「ああ、すみません、今呼んできますね」


 といってさっき出てきた扉に向かい走っていった赤ずきんを目で追い、しばらく扉の方を見ているとそこから車椅子に乗せておばあさんらしき女性と赤ずきんが出てきた。

 おばあさんはこちらも史実とおりで、白髪で髪の毛を上で結んでいるのか頭に帽子をかぶっている

 (服も寝間着姿からさっするに、ほとんど歩けない状態で同じ服を着た状態が続いているのか?)

 (なんにしてもこの車椅子もそうだが、周囲の暖炉や椅子のつくり、テーブルにおいても言えるがもしかして・・・)


 「お待たせしてしまってすみません、こちら私のおばあちゃんです。おばあちゃんこちら旅人さんだって」

 「どうもすみません、このような時間に、道に迷ってしまって気が付けばここにたどり着き、赤ずきんさんに夕飯を誘われたところなんです。」

 「ご丁寧にどうも・・・この状態ですみませんねぇ数年前から下半身が動かなくなってきてねぇ」

 「いえいえ、お構いなく」


 赤ずきんは椅子が置かれていないところまで車椅子を持っていき席に着いて食事を始めしばらく食事を楽しんだのであった。


 「早速で申し訳なんだが、俺たちは旅人としてここ来てとある謎を解決しに来た魔法使いくらいに考えてくれたら大丈夫だ」

 「それでなんだが、いくつか聞きたいことがあるんだ、まず1つめがここに狩人が来たことがあるか、2つ目がまたその狩人のことをどれくらい知っているか?」

 「3つ目があなたは本当に赤ずきんという名前なのか、4つ目がそこのおばあさんとの関係性とあなた自身のことを教えてほしいな」

 「わかりました、ではまず私のことからだんだんと話していきますね。」

 「私の名前は赤ずきんといいます。そしてこちらが私の祖母です、この家自体は祖父と祖母の2人で暮らしていたのですが、数年前に祖父は他界し祖母と私だけになってしまいました。私の紹介としてはこんな感じですね」


「そして狩人さんについてですが、彼は最近ここを何度か訪ねに来ています。どうやら彼はここ周辺に住む狼を倒しに来たんだそうです・・・」

 

(なんで言いすぼんだんだ?)

(なにか躊躇しているかのような感じがしたが・・・)


 「ここからは私が話そう」


 そう口を開いた赤ずきんのおばあさんが話し始めた


 「もともとここにはあの人と私が近くの町から離れて一緒に住み始めた場所だったんだよ、ただあの人は先にいってしまった・・・そして私もこんな体になってしまって頼れるのがこの子だけしかいないから数年前からここに住んでもらっているんだよ。」

 「そして数日前からここに狩人と呼ばれる男が来だしたんだよ、まさしくさっき赤ずきんがいったように狩人は町の依頼でここ住んでいる狼を倒しにきたと言っていたんだよ。そしてこの森の調査のために何度かこの家に訪問しに来たというわけだよ。それ以外は特に何かほかに用事があったわけでもなさそうだったよ」

 「なるほど、大体のことはわかりました。」

 「では、狩人がどのあたりに住んでいるか知っていますか?」

 「すまないねぇ、さすがにわからないんだよ、町からの依頼できているという話だからきっと山を降りた町にいるとは思うよ」

 「ありがとうございます。狩人についてはこちらで探します。」


 「ではもう一つお聞きしたいのですが、最近黒いもやもやした何かと出会った記憶はありますか?」

 「そうだねぇ・・・見たような見てないようなそんなかんじだねぇ・・・」

 「そうですか・・・赤ずきんさんのほうはどうですか?」

 「私ですか?そうですねここに来るまでの森で一度黒い何かを見た気がするんですけど、気が付いたらいなくなっていたので気のせいかなとは思っていたんですけど、もしかしたらそれが探しているやつだったりしますか?」

 「恐らくそうだと思います。それで、申し訳ないのですが、一度あなたのことを『視』させていいただけますか?」


 ガシッ!


 「いってぇ!このやろう!」


 「どうかされましたか?」

 「いえいえ、お気になさらないでください」


 (おまえ、なんで蹴るんだよ!)

 (あなたの鼻の下が伸びてたからよ)

 (伸ばしてねえよ!)

 (白々しい…)

 

 「え?どういうことですか?」

 「ともかく、赤ずきんさんは一度黒いやつを目にしたことがあるんですよね?」

 「そうですね、おそらくそうだと思います。」

 「でしたら、大変申し訳ないのですが、赤ずきんさん、あなたに触らせていただいてもいいですか?」

 「腕だけで十分なんで、私たち魔法が使えるんですが、それであなたの体をみて健康状態とかを確認できるので診させていただけないか、と聞こうとしたんですよ、この人は。」

 「そういうことだったんですね、えぇ大丈夫ですよ。」

 「ありがとうございます。それでは失礼して『スキャン』発動」


 そういって、ヒヨリは横に座っている赤ずきんの腕をとり、『スキャン』を発動させた。

 ヒヨリの目には、サーモグラフィーのように周囲の熱源体はオレンジや赤で見ることができ、黒いやつだけ黒くわかりやすい状態にで見ることができる。ほかにも 一応健康状態なのかどうかも診ることができる。『サーチ』とは違い状態が詳細にわかるためこっちの方を重宝したりする。


 (状態的には、あの狼男と同じようねつまり元凶はこの子ではないということは・・・)


 「なるほど、大体わかりました。」

 「特に変わったところはないようです。ですがあなたが一度会った黒いやつと関わってくるのですが、黒いやつを見つけたとき、立ち眩みや一瞬気が遠くなったことありましたか?」

 「そういえば一瞬立ち眩みが起こったような気がします、そのあと同じとこを見たらいなくなってたのかもしれません。」

 「やはりそうでしたか。その黒いやつというのは心を住処としてその心の欲望を蝕む存在なのですが、それがやはりというべきか赤ずきんの中にいました。」

 「その黒いやつは狼のところにも現れて、襲われたそうなのですが、狼との関係は何かあったりしますか?」


 「狼さんとはとくにはないですよ・・・」

 「本当にそうなんですか?」

 「そうです!」

 「おぉ・・・そうですか、では一つお伺いしてもよろしいですか?」

 「どうぞ、こたえられる範囲であればですが・・・」

 「赤ずきんさんではなく、おばあさんその乗っている車椅子はだれが作られたものなんですか?」

 「これかい?これは、じいさんが生きていたころに作ってくれたんだよ・・・」

 「そうですか、では次にこの座っている椅子ですが結構作りこまれており、木だけで組まれており、素晴らしい椅子だと思います、ではこの椅子もおじいさんがお作りに?」

 「えぇそうですよこれらのものは基本おじいさんが作ってくれたものですねぇ」

 「そうなんですか?それにしてはおかしいんですよ、その車椅子の構造やこの椅子の木の色などを考えてもほかの家具はまさしく年季が経ってしまって少し傷んでいるのを感じるのにその車椅子とこの座っている椅子はまるで最近、遠くても数年以内に作られたというほど新しいんですよ。」

 「それに、おばあさんが腰を痛められたのはここ数年のはずなんですよね、それにおじいさんがなくられてからだそうで、ということはつまり、これらの新しいものは赤ずきん、おばあさん以外の誰かが作ったものもしくは買ってきたものであるはずなんですよ。」

 「つまり、この新しいものは 狼さんが作ったものという考えに辿り憑くというわけです」

 「弁解の余地などはないはずですがいかがでしょうか?」

 「はぇぇ驚きました。たったこれだけの情報でそこまでたどり着いたんですねぇすごいですねぇ旅の方」

 「ええ、もういいですね赤ずきん、この人たちはおそらく信じてもいい方たちだと思うよ」

 「そうね、おばあちゃん、すべてのことを話しましょうか狼さんとの関係なども含めて」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

 引き続き、よろしくお願いします

 

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