其ノ七 棲家 

 太郎君たろうぎみと花子様、初島はつしま様、そして宗次郎そうじろう様をおぶわれた安子様の影が、暖かい三つの提灯ちょうちんの灯りと共に山門に消えて行きました。


 それをそっと見送ると、わたくしもほっとして、棲家すみかほこらに戻ることに致しました。



 さて、これまで何百年もの間ずっとそうして来た様に、私はこれからも、この寺子屋の隅の無花果いちじくの木の下の名も無いほこらにて、安子様のように身を尽くしても報われず、それでも懸命に生きるお母御達ははごたちを、見守っては語ってゆくことに致しましょう。


 まず、お母御達ははごたちが救われなければ、お子達こたちもまた、救われる事は無いので御座いますから。


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