其ノ十三 蜜柑
安子様は思わず、
「え、ああ、その事なら何でも有りません。ちょっと、近くまで来たものですから。」
と早口で口走ってしまうと、御手に握りしめていらっしゃった御住所録を、
「ああ、そう? そうだ、せっかくお見えになったんだから、
染子様はそう仰り、乾いた手拭いであらかた拭き終わった
「もっと持って行って頂きたいけれど、
染子様の笑顔と優しさに、安子様はそれ以上何も言えず、とぼとぼと染子様の屋敷の門をくぐられました。
御心優しい安子様にはどうしたって、あの様に色々な事をお一人で抱え込んで、それでも健気に笑顔で過ごしていらっしゃる染子様に、来年度の大奥(PTA)
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