其ノ八 稚児医者

 赤鬼あかおに先生は、処置を終えてからこう仰いました。

青梅あおうめを誤食した様だね。熟してない生の梅は毒素を持っている事があるから、食当たりに似た症状が激しく出る事が有る。特に体が小さいお子さんだと、弱い毒でも命取りになる事が稀にある。」


左様さように御座りますか。」

 初島はつしま様が心配そうに相槌を打たれますと、赤鬼あかおに先生は、


「なあに、全部吐かせて胃を洗浄して置いたんで、安静にして置けば明日にも元気になるだろうよ。今回はお母さんが急いでここへ運んで来て下すったから、大事には至ら無くて良かった良かった。」


「本当に、本当に良かった……。ほっと致しました。」

 初島はつしま様が仰ると、赤鬼あかおに先生はこう続けられました。

「じゃあ、お母さん、下剤を処方して置きますんで、少し落ち着いたら飲ませて下さい。それで毒素を完全に体外に排出させるんで。」


「あのう、先生、実は……。実は私、この子の母親では無いのです。」

 この様に初島はつしま様が仰ると、

「え?そうなの? わしはてっきりお母さんかとばっかり。じゃあ一体、この子の親御さんは何処でどうして居るんだい?」

 赤鬼あかおに先生は、初島はつしま様にそう問われました。

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