其の十三 沈黙
雪組の
鐘の音がごおんと遠く響き、大広間に差し込む日差しが、ちょうど目線の真上にあり、時刻は真昼
「どなたか、五つのお役目のうちいずれかを引き受ける者はおらぬか。早く挙手せぬか。」
進行役のお
しかし、雪組の御父母方のうち、どなたも名乗りを挙げる方はおらず、一同顔を伏したまま、ただただ
どなたにもそれぞれ、お引き受けになれぬ事情がお有りなのでしょう。辛い沈黙は永遠に続くかとすら思われました。
そうこうするうちに、安子様は花子様のお着物が湿って居る事にお気づきになられました。
皆様の凍るような沈黙を破るように、安子様は勇気を振り絞り、声をお出しになられました。
「あのう、娘のむつきがお湿りしたようで、申し訳ございませんが、
この者、まさか逃げる気ではあるまいな? とでも言うような、まるで刺すような一同の視線を、一身に浴びる安子様でございました。
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