其ノ十 軟禁

「これからお役決め(役員決め)が始まるのです。組ごとに決められた数のお役をつのり、どなたも現れ無ければその場で吹き矢にてどなたかに決めるのです。その際、一切この大広間から逃れ出る事は許されません」

 常磐井ときわい様はささやき声でおっしゃいました。


「なんと、太郎は? お子様方は?」

 驚く安子様でしたが、常磐井ときわい様は指の形をお口元でしいいとなさるだけでした。


「んおほん!」

 御組総取締おくみそうとりしまり(クラス委員長)の春日かすが様が一つ咳払いをなさるとお話しを始められました。


「お方々かたがた、まず雪、月、花、星の組ごとに四手にお分かれになり御着座ごちゃくざのこと。その後、御組おくみ毎に、御吟味方ごぎんみがた(選出委員)、瓦版かわらばんつぼね(広報委員)、お鈴係すずがかり(ベルマーク委員)、御縁日ごえんにちつぼね(文化・バザー委員)そして御組取締おくみとりしまり(クラス委員)のおのおの五名を、御話し合いにてお決めなされ。最後のお一人が決まるまで、ゆめゆめこの大広間をお出になるなど、お考えなされぬ様。」


 安子様の身重みおもの体には、さすがにこの平伏へいふく姿勢は辛く、悪阻つわりのものが胸に込み上げる中、こう思われました。これではお子を人質に取られた状態での軟禁と何ら変わらぬのではないか? お国のご法度はっとに定められた御人権と言うものを、まったく無視したお振る舞いでは無いのか? ほんに大奥(PTA)と言う所は、何と恐ろしき所なのであろうか、と。

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