Part8

ランキング第二位のサラが倒された。


その衝撃の光景に、剣士たちは驚きを隠せなかった。


「あ……サラさん!」


ユキはサラの元へと急いで向かう。


リパは倒れたサラに向けて、剣を振り下ろそうとしていた。


「!」


その光景を見て、ユキは剣に魔力を込め、その行ないを止めようと走っていた。


「やめろーー!!」


「…んっ」


ユキはなんとか間に合い、リパの剣を防いだ。


「くっ」


「…きたか、ユキ」


リパは距離をとった。


「…」


「サラの次と思ったが、お前から来てくれるとはな」


「ユキ!」


「タックさん、サラさんは」


「大丈夫だ、まだ息はある」


「良かった」


「ユキ、ヤツは手練だ。俺が時間を稼ぐ。サラを連れて逃げるんだ」


「ダメです」


「…ユキ」


「ヤツが簡単にボクたちを逃がすとは思えません。それに、ここでヤツらを止めないと。次のチャンスは無いかもしれない。だから、ここで倒します」


「…わかった」


「タックさんは、サラさんに回復魔法をかけて、守ってください。リパはボクがやります」


「だがユキ、ヤツの強さは」


「分かっています。確かに二人で戦うほうが良いのかもしれない。でもそれじゃあ、サラさんを守る人がいなくなります。他の皆も、剣士狩りに手一杯。なら、ボクがやるしか、サラさんの弟子であるボクが、ヤツを倒さなきゃいけないんです」


「…わかった。だが、少しでも無理と判断したら、俺が代わる。それでいいな」


「はい!」


「なんだ、二人で来ないのか?」


「お前の相手はボクだ」


「全く、勇気と無謀は違うんだぜ?師匠であるサラが勝てなかった相手に、弟子が挑むのか?それに、前会った時は、手も足も出なかったヤツが」


「前とは違う」


「…まあ確かに、以前よりは力は増しただろうが、それだけだ。勝てる訳がないだろ」


「勝てる勝てないじゃない。倒さなきゃいけないんだ。お前はボクの手で。師匠の務めは、弟子が引き継ぐ」


「そうかい、なら、俺はお前を殺すとしよう」


「んっ」


「っ」


リパは剣に魔力を込め、ユキに迫った。ユキも負けじと剣に魔力を込め、リパの一撃を防いだ。


「…ハァー!」


「んっ、ハァーア!」


「…」


剣でのパワーバトルでは、ユキはリパとほぼ互角だった。


「へえー、やるなお前。俺と渡り合えるのは、この場ではサラだけだと思っていたが」


「…お喋りか、余裕だな」


「ふっふっふ、いいねえ、ますます殺したくなったよ」


「…んっ!」


ユキはリパの剣を振り払い、距離をとった。


「…」


「お前に聞きたいことがある」


「あぁ?」


「なんでそこまでの強さがあって、剣士を狩るんだ。剣士がお前に何かしたのか」


「俺が剣士を狩る理由、そんなの簡単さ。俺はモンスターを倒すより、剣士を倒す方が、心地いい、生きてる実感が持てるからだ」


「理解できない」


「まあ、お前みたいなタイプの剣士には分からねえだろうな。俺がランキング第二位に入る前、俺はランキング上位者になるため、モンスターを狩り尽くしてきた、そして第二位に上り詰めた。だが、俺の心はなぜか満たされなかった。そして思いついた。獲物を変えた場合、俺は満足するのか。そして一人目の剣士を狩って、確信した。俺はモンスターを狩るより、人を、剣士を狩る方が、気持ちが良いってな」


「…クズめ」


「クズか、ただの剣士から見れば、そうなのかもしれないな。だが、俺はそれでも構わない」


「あと、なんでお前は生きてる。ユウマさんに殺されたはずだ」


「あー、あん時か。上層部が俺を邪魔者と判断し、ユウマに俺を殺すよう仕向けた。あの時は俺も死んだと思ったよ。ユウマ相手に手も足も出せずに敗れた。流石ランキング第一位と言った所さ。だが俺は、生きていた。何故かと思ったよ。そして分かったのは、俺には命が二つあると言う事だった」


「命が、二つだと」


「あぁ、生まれ持った能力さ。まるでモンスターのようだったよ。そして、今両手を剣に変えているが、これは生き返った時に、神から授かった力だ」


「神だと」


「姿を見たわけではないが、こんな力を授けられるのは、神ぐらいだろう。この力で俺は剣士を狩る。俺にとって剣士狩りは、お前たちがモンスターを狩るのとなんら変わりない」


「んっ」


「さて、お喋りはこれくらいにして、そろそろ、俺の本気を見せてやろう」


リパはそう言うと、本気でユキを仕留めるため、魔力をため始めた。


「……!」


そしてリパは、モンスターの姿へと変化した。


「これが俺の進化した姿だ」


「モンスターの姿が、進化か」


「恐怖したか?」


「いや、むしろ。斬りやすくなったよ。ボクは人を斬ったことがないから、殺すのには正直抵抗があった。でも、モンスターの姿なら、遠慮しなくて良さそうだ」


「ふんっ」


ユキとリパが対峙している中、サラはタックの回復魔法で目を覚ました。


「んっ、はぁ」


「サラ!よかった。大丈夫か?まだ痛む所はあるか?」


「大丈夫だタック。それよりヤツは…!」


サラが辺りを見渡すと、ユキがリパと対峙している光景を見る。


「ユキ…」


「あぁ、今ユキがリパと戦ってくれている。驚いたよ。まさかユキにあそこまでの力があるとは」


「なら、私も…っ」


サラは、立ち上がりユキの加勢にいきたかったが、呪いのせいで、戦う所か立ち上がることすら、困難な状態だった。


「おい、無茶をするな。今サラはゆっくり休め。いざとなれば俺が加勢にいく」


「…ユキ…」


「大丈夫ですよ。師匠、アイツはボクが、倒しますから」


「……頼もしくなったな」


「…」


頷くユキ。そしてサラも、ユキを信じ、リパはユキに完全に任せることにした。


モンスターへと姿を変えたリパと、サラの弟子の剣士ユキによる、剣士狩り対剣士の戦いの終わりが、遂に見えてきた。

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