Part6

ユキたちが、サラの修行の日々に耐え抜いてから約二週間が経過した。


「んっ、ふっ!ハァア!」


「いいぞユキ、その調子だ」


この日は、森でユキとサラが戦っていた。


そんな中、森にたまたま来た上位剣士が、サラに声をかける。


「おー、サラ」


「ん?」


「こんな朝早くから、弟子と修行か?」


「おおー、タックか、久しいな」


「あぁ、お前が弟子をもつとは、変わったな」


「まあな。そっちこそ、仲間がいるようだが、パーティーメンバーか?」


「あぁ、最近コイツらとパーティーを組んだんだよ」


「貴方がサラさん、なんですか?」


「あぁ、君は?」


「俺はカザって言います」


「カザか、よろしくな」


「はい!ん?」


「?」


カザは、サラの近くにいたユキを見つめる。ユキも見つめられ、カザの方を見る。


「お前、何でサラさんと一緒にいるんだ」


「え、なんでって、弟子だから、だけど」


「!?弟子!サラさん、それはホントですか!?」


「あぁ、私の弟子のユキだ。そして、後ろにいるサオリとミユキも」


「弟子、ですか?」


「まあ、そんなとこだ」


「…失礼ですがサラさん、この女って、強いんですか?」


「あぁ、ユキは強い。剣技も十分に教えられているしな」


「…」


またまた見つめられ、少し困るユキ。


「サラさん」


「ん?どうしたカザ君」


「この女と、手合わせしてもいいですか」


「ユキとか?なんで」


「貴方の後継者に相応しいのは、きっと俺のはずです。この女より、俺のが絶対強いですよ。だから、もし俺が勝てたら、サラさんの弟子にしてください」


「…まあ、戦う分には、別に構わないが…どうだユキ?」


「…(負けたら、弟子交代。それは絶対嫌だけど、ここで逃げると、また言われそうだしな。それに、この人もきっと強い。なら、これは逆に良い機会でもある、サラさんから教わった剣技で、証明してみせる。ボクが後継者だと)いいですよ」


「わかった。なら、この場で決闘をしよう。どちらが上か。タックも良いか?」


「俺は別に構わんが、いいのかサラ」


「まあ、ユキの実力を見れる良い機会だからな」


「…わかった。では、カザとユキによる決闘を始めよう」


こうして、ユキとカザによる決闘が始まった。


「では、決闘を始める」


サオリとミユキを含めた、決闘を観戦する者たちは、少し離れた。


そして、サラが決闘の指揮をとった。


「HPバーを最初に削るか、相手にまいったと言わせた方の勝ちとする。双方、準備はいいか」


ユキもカザも、剣を抜き構える。


「はい」


「ボクも、大丈夫です」


「では、始め!」


「っ、んっ!」


先に動き出したのは、カザだった。


カザは、連撃が得意な剣士。そのため、ユキに剣による攻撃を、なんどもなんども試した。


「っ!」


だが、ユキも負けじと、その攻撃を防いだ。そしてユキは気づいた、カザは、サラの後継者に早くなりたい故か、どこか焦っている事に、それは当然、サラやタックたちも気づいていた。


「どうした、防いでいるだけじゃ終わらないぞ!」


「っ!」


「(この女、ホントに大して強くない。これなら勝てる!)」


「…」


「お姉ちゃん」


サオリとミユキも、どちらが勝つかは分かってはいるが、少し心配になった。


だが、その心配は、次の行動で消えた。


「んっ」


「!」


カザは見つけた、ユキの隙を、そして迷わずその隙に剣を振るう。


だがその隙は、ユキによる作戦だった。


「これで終わりだ!」


「!」


ユキはその隙を利用し、カザの剣をしゃがんでかわした。


そしてカザに隙ができ、隙になった頸の直前まで剣を振るった。


「あ、あ…」


「…これ以上剣を近づけたら、流石に避けられないよ。降参、してくれる?」


「…ま、参った…」


「…勝者、ユキ!」


「…(良かった。勝てた)」


「お姉ちゃん!」


「ミユキ」


「凄かったよ!」


「えへへ、ありがとう」


「成長したな、ユキ」


「サラさん、ありがとうございます」


「…」


「大丈夫か?カザ」


「はい、ですが、悔しいです」


「まあ、相手はサラの弟子だからな。それに、あのユキという少女、かなりの手練だ。余程努力をしたのだろう」


「はい、…ユキ、さん」


「?」


「先程は、失礼な事を、言ってしまい。すいませんでした!」


カザは頭を下げた。


「…大丈夫ですよ。顔を上げてください。ボク、ボクは、いずれ誰もが認めてくれるような剣士になれるよう努力します。そして、貴方からも認められるように、頑張ります」


「はい、俺も、頑張ります」


「…」


同じ志を持った剣士がユキの周りにいる事に、嬉しさを感じたサラ。


「ん?」


「?どうしたサラ」


「これは」


「?どうしたんですか?サラさん」


「遂にきたようだ」


「!?それって」


「あぁ、剣士狩り、討伐命令だ」


「…」


遂に剣士狩りと、本格的に戦う時がきたユキたち。


「今ユウマから連絡が入った。今から、第二十階層の会議室の場所まで来てほしいと。タックにはきたか?」


「あぁ、俺の所にもきた。カザ、行くぞ」


「は、はい!」


「ユキ、サオリ、ミユキ、私たちも行くぞ」


「はい」


こうして、タックはカザたちと、サラは、ユキ、ミユキ、サオリ、この四人で、会議室まで向かうこととなった。


そして、第二十階層の会議室に着いたサラたち。


そこにはユウマはもちろん、他の剣士たちもいた。


「来たか、サラ、そしてタック。後ろにいるのは、パーティーメンバーか?」


「あぁ」


「私のパーティーメンバーだ」


「ここに連れてきたって事は、そういう事で、良いんだな?」


「あぁ」


「わかった。では会議を始めよう。今わかってる情報、それは剣士狩りたちのアジトだ。第十七階層の洞窟、そしてもう一つが、第五階層の洞窟だ。上層部からの情報によると、リパがいる可能性が最も高いのは、第十七階層の洞窟だ。俺はコイツらと第十七階層の洞窟を攻める、サラとタックたちは、第五階層の洞窟に向かってくれ」


「ユウマ。なぜリパは、第十七階層の洞窟にいる可能性が高いんだ?」


「第十七階層の洞窟は、闇取引の連中がよく剣士狩りの賭けをする場所みたいでな。リパ、ヤツはそこには、よく姿を見せるらしい。それに、そもそも剣士狩りってのは、上位剣士を目指す者たちを楽に上げてやろうという、闇取引の連中の考えから始まった。そして、楽に上位者になりたい欲求に勝てなかった者たちが、座を奪う為、金を払い、剣士狩りに汚れ仕事を頼む」


「そんな理由で、ですか」


ユキが口に出す。


「あぁ、だが実際世の中、楽していけるなら、誰だってそうしたいと思うのかもな。実際俺も、そういった連中を見てきた。だが、自分が手を汚さず、人に頼んで、楽にして上に行こうという考えは、理解できないし、殺すという行為は、許されていいはずがない。だから俺たちで、剣士狩りも含め、その腐った考えに終止符を打つ」


「そうだな、ユウマの言う通りだ。リパを見つけた際は、ためらう必要はない。リパは剣士の道を捨てただけではなく、人としての考えも捨てている。我々ができるのは、リパを裁くのではなく、殺してやることだけだ」


「殺し…」


「あぁ、ユキも、頭では分かっているはずだ。この世には、どうしようもない悪がいることに。どれだけ裁こうが、変わらないヤツもいる。殺さずに終わりたいなんて甘い考えは、リパには通用しない。そんな甘い考えは、自分を殺すだけだ」


「…情報と作戦は以上だ。なにか質問があるヤツはいるか?」


「…」


「よし、ではこれより作戦を開始する。剣士狩りの歴史を、止めるぞ」


剣士と剣士狩り、正反対の二つの戦士たちの戦いが、今、始まろうとしていた。


サラたちは、剣士狩りを止める為、遂に動き出した。

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