『夜を越える旅』を観た(コラム)

 お久しぶりです。たまーに更新されるエッセイ、ディストピアジャーナルです。

 リアルに起こっているサイバーテロ事件によって、このカクヨムもうっすらディストピア感が漂っているような気がしなくもないですね。


 さて、今日は別にサイバーテロについての話ではなく、最近観た映画の話をします。

 

 私が頑なにTwitterと言い続けているXのTL上で一瞬話題になっていた『夜を越える旅』という映画を観ました。

 これについてちょっと何か書きたいなと思いまして。

 ネタバレ全開でいきますが、多分ジャンルから何から何までネタバレなしで観た方がいい作品なので、映画をちゃんと楽しみたい人は一旦ここでお別れです。

 アマプラで観れます。

 観たらまた来てください。

 80分の短い映画なのでいつか観るかもという方はささっと観ておいた方がいいと思います。

 本当に容赦なくネタバレします。

 では、のちほど。







 はい、というわけでここからはもう観たよという方、ネタバレやこのエッセイ読んでから観るかどうか決める方、一生観る気がない方だけかと思います。

 まぁ、正直なところ、観たから小説とか創作のレベルが上がるとかそういう類のものではないんですが、けっこう特殊な映画なんですよね。

 途中で映画のジャンルが別物になるタイプです。

 その転換の急激さがとんでもなくてですね、いわば『カメラを止めるな』とかシベリア少女鉄道の演劇とかに近い感じがあります。

 前半がネタ振りとか伏線パートで後半で一気に回収していくタイプですね。

 WEB連載なら即切られるタイプの手法なので、小説ではまずやらないというか、やるメリットがないですよね。

 ↑で近い作品として挙げたのも映画と演劇ですし。これらは前半で長い伏線パートをやっても、基本的には伏線の回収からラストまで劇場に観客を縛りつけられるという特性があるんですよね。

 作品トータルで評価してもらえるので、多少の退屈さというリスクを負えるわけです。

 小説は必然性があっても序盤が退屈だと最初の読者に読んでもらえない、買ってもらえないじゃないですか。特に連載だといつ回収されるかもわからないし、そもそも伏線かどうかも読み手にはわからないですからね。

 ここまで読んで、そのタイプの作品なら観るがな!という方は一旦戻っていただいて大丈夫ですよ。待ってますんでね。


 あ、大丈夫ですか、そうですか。

 じゃあ、言っちゃうんですけど、青春ロードムービーが心霊ホラーになります。

 漫画家志望のフリーターの青年が大学時代の友達数人と旅行に行くんです。で、昔好きだった女の子が遅れて合流してくるんですよ。

 この女の子が美人なんですけど「昔、私のこと好きだったでしょ?」みたいなことを言ってきたりとかして、漫画の賞が獲れなくてデビューはできないわ、この旅行も彼女から詰られながら借りた金で来てるわ、友達はちゃんと社会人やっててコンプレックスえぐいわで逃げ場がない主人公君はちょっとだけ青春を取り戻せた感じで救われるんですけど、まぁこの女の子ってのが幽霊で、誰か(自分の口車に乗りそうな、昔自分が好きだった人とか元彼?とか)をあの世に引きずり込もうとしてるんですね。

 で、そのホラーに舵を切る瞬間がSNSで話題になってたわけです。

 怖いというか、今⁉︎ 嘘だろ!みたいなタイミングなので、ビックリし過ぎて笑っちゃったんですけど。

 私、事前にホラーにスイッチするという情報を薄っすら入れてしまっていたので、残り時間から(来るならそろそろだな……)っていう余計な計算しちゃって、驚きが弱くなっちゃって勿体なかったなーって思いました。


 で、さらにネタバレしていくんですけど、お化けの女の子は美人なんですけど、とんでもなく理不尽なことを言ってくるんですよ。

 主人公ともう一人の男のどっちか片方は死んでこっちに来なさいと、マストだと。

 死ぬのは確定で、どっちかだけ選んでいいよっていう話なんですよ。

 ホラーパートに入る前に「漫画ならこっちでも描けるよ?」みたいなことをおっしゃるんです。青春パートだと彼女が住んでるのは遠方っていうニュアンスでしか示されないので、遠くってもはやこの世でもないのかっていうのが明らかになった時にとんでもないこと言ってんな……と。

 そんな無茶な! って話ですよ。それ言い出したら、なんでもありじゃん!

 あの世でできないこと大喜利上手い方が行かなくていいとかじゃないのよ。

 この会話はできるんだけど、話が通じない感じはいいですよね。

 こんなノリで書いてますけど、けっこう怖いです。

 あと真の姿はめちゃ怖いんですよね、お化けのサヤちゃん。

 最後までずっと美人の姿に化けといてくれたら一考の余地もあったかもしれないんですけども。

 お化けサイドも配慮が足りないというか、怖い姿では説得にも応じられないじゃないですか。

 まぁ、それはともかく。その後も展開がすごく変なんですよ。除霊とかできないかって、インチキ除霊師のところに行くんですけど……。

 やれるべきことは全部やった上でダメだったということを観客に提示したいのか、だとしたらインチキじゃなくてガチの除霊の失敗描写でいいですし、緩急をつけるためのコメディパートにしてはあんまり笑えないという居心地の悪いシーンがあるんですよね。

 どの効果を狙ったものなのかはっきりしない気持ち悪さが目的なら成功はしてるんですけど、たぶんそういうことではない気がします。

 この辺は観ていただきたいところではあります。見どころではないですけど。


 で、最終的に二人の男はどっちが生贄になるかじゃんけんで決めることになるんですよね。

 じゃんけんっていうのはこの作品において割と重要というか、一応じゃんけんである必然性はあります。

 主人公はじゃんけんで勝つんですけど、顔に出ちゃうから目を閉じてるんですよね。なので相手がその目を開けるまでの間に後出ししてズルして勝っちゃうっていう展開になります。

 めちゃくちゃネタバレなんですけど、まぁこれは先に注意してますし、この勝敗は重要ではないです。


 この先の展開っていうのがまた曖昧で、考察の余地があるというか、どのパターンなのかわからないんですよね。

 主人公はじゃんけんで負けて死ぬ運命なんですけど、ラストシーンは主人公が漫画を描いている背中で終わるんですよ。

 つまり、「じゃんけんは最初の勝敗が有効だったから、後出しした方が死んだ」「主人公は死んで、あっちで漫画を描いている」「この作品は主人公が描いた漫画(作中作)※そういう解釈もできるシーンはあります」というような考察ができるんですけど、確定はできない(と思うんです)感じなんですけど、これってどうなのかなと。

 観客の皆さんに委ねますよっていうことだと思うんですけど、制作サイドは決めてないことはないじゃないですか。

 個人的にはこのラストによってこの映画の評価が下がる、ということはなくて、楽しんで観られたんですけど、自分がやるかというと結構悩むところですね。

 要するに確定させないことで、観客は自分が一番好みのエンディングを無意識に選び取って作品を評価することになるわけですよ。

 なんなら、数パターンの解釈があるとすら思わない可能性もありますよね。

 ちょっとズルい気はします。

 はっきり描かないというのは演出としてありなんですけど、エンタメとしてはある程度確定できる情報は提示してほしいなぁと。

 っていうのが私の好みっていうだけの話なんですけどね。


 もうここで3000字ですか。なんというか勢いで3000字も何か書きたい気持ちになったわけなので、良い映画だとは思います。


 そろそろ終わりでもいいんですけど、最近面白かったオススメコンテンツをちょこっと紹介してから終わりますか。

『キメねこの薬図鑑』

→以前『知覚の扉』について書いたような気がしますが、これはドラッグで見る幻覚とか感覚が漫画になっているのでとてもわかりやすいです。自分で体感できないものは資料で勉強するしかないので、可愛くてわかりやすいとそれだけで良いじゃん!って思います。


『ペーパーマリオRPG』

→リメイク版なんですけど、こんな面白かったっけ?ってビックリしました。こういうテイスト好きなんですよね。発想の転換に次ぐ発想の転換というか、ずっと仕掛け絵本を見ているような感覚です。マリオはアクションもRPGも傑作ばっかりで基本ハズレなしですけど、自分が作るものもこうありたいものです。


 そろそろエッセイを書くのにも疲れてきたので、書かなきゃいけない方のものに戻ります。

 いつ何が発表できるのかわからないまま、デビュー作刊行から一年が経ちましたけど、何かしら書いてはいますので。

 ではでは。

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