伏線とレッドヘリングについて考える(有益度★★★)

 最近書いた(書いている)作品はいっぱい伏線が張ってあるタイプで、とにかくそれをどう回収していくかに腐心していたんですけど、回収する必要ってある? という疑問が付きまとっているので、このエッセイで少し考えてみることにしました。


 ミステリには【レッドヘリング】あるいは【燻製ニシンの虚偽】と呼ばれる手法があります。

 ニシンの燻製というのは匂いが強いので、猟犬に獲物の匂いを嗅ぎ分けさせる訓練の際にダミーとして使ったというところから来ているらしいですね。

 つまり小説の中でも、読者を騙すための偽の手がかり(っぽい)描写のことを言います。

 これ、どうなんですかね?

 難しくないですか?

 いや、楽なんですけど。

 使うと楽であるがゆえに完成度を考えると処理が難しいと思うんですよね。

 個人的にはホントにこれ良し悪しだと思っていて、犯人や事件の真相を隠すのには有用ですけど、読み終わった後に「あれ、なんだったんだろう?」「回収されないままの伏線あったよな」っていう読後感残る気がするんですよね。

 超極論ですけど、血まみれのナイフが登場だけして、別に真相とは何の関係もないって許されるのか? っていう話です。

 本筋とは関係ない偽の情報だとしても別途回収した方がいいと思っています。

 あれは実はこういうことだったのですっていう感じで。

 小説じゃないんですけど、アメコミのバットマンシリーズで『ロングハロウィーン』『ダークビクトリー』という名作があるんですね。これ、ノーランの『ダークナイト』の基になった作品なんですけど、レッドヘリングが強くてですね、あれはなんだったんだろう?というモヤモヤが強く残るんですよ。そもそも『ロングハロウィーン』って難解な上に事件の真相が読者に明かされなくて、自分で考えてねっていうタイプの作品なんですけど、作中の描写だけだと推測すらできない箇所っていうのが出てくるんですよ。考察サイトもあったりするんですけど、これ許されるのか?っていうのはずっと引っ掛かってますね。


 でも、長期連載作品であればガンガン出していくべきだとも思ってるんですよね。

 私が気が向いたらいきなり更新する探偵Vではとりあえず間を埋めるためとか、なんとなく思いついたことでも書いたら残しています。後から使える可能性があるからなんですよね。

 ただのモブが後々になってメインキャラに昇格するとかもありますし。一種の読者サービスとして機能しやすいので。

 ハンターハンターでもあの時のあれがここで出てくるのか⁉みたいなのよくありますよね。懐かしいキャラが死ぬためだけに再登場するとか伏線でもなんでもないパターンはまぁなんともいえない気持ちになりますけど。

 長期連載の漫画で何年も前の一コマを伏線として再利用するのはその時には後になって使おうとは考えてなくて、後で辻褄をあわせようとすると自然と伏線として機能してるだけなんじゃないかな、と個人的には思っていて、そのための種はたくさん撒いておくに越したことはないのかなと。ただ、不自然に無意味なシーンが増えすぎると作品のクオリティとして微妙になるのでほどほどに。


 ここまで書いてきて思うのが、一冊とか上下巻(10~20万字)で完結させるタイプの作品は極論、すべての伏線は回収されるべきだけど、長期連載作品は回収されるかどうかわからない描写がちりばめられていても許容できる、とは私は考えているらしい、ということがわかりました。

 長期連載作品だといつか回収されるかもしれないと思って流したり、忘れたりするので、後々になって出てきてもお得感しかない、というのはあるかもしれないです。

 あくまで私自身がそう考えているというだけで正解ではないと思いますが、やっぱり新人賞に出したり、単巻商品として世に出すものにおいては不自然な情報はなるべく排除した方が美しくまとまる気はしますよね。


 ではでは。

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