《カクヨム・ディストピアジャーナル》和田正雪（責任編集）

国士無双『不能共』の衝撃（有益度★★★★★★）

　ヤバいもん読んだ。

　『不能共』っていう作品なんですけども。

　私と同日デビューの草森ゆき先生の作品です。

　カクヨム版を拝読して衝撃を受けたんですけど、見本誌をいただいて書籍版でもう一回読みまして。

　もう一回震えた。これねぇ、比喩とか誇張とかじゃなくて……本当にブルっとくるんですよね。

　まったく予想だにしないというか、そんなことあるの!?っていう衝撃と恐怖。

　けっこう本読む方だと思ってたんですけど、読んだことのない類の小説でしたね。

　まさに国士無双。

　国士無双って意味知ってます？　麻雀の役の名前ですけど、由来としては国に他に並び立つものがないっていう意味なんですよ。

　BLっていうジャンルを読んだことがないわけなんですけど、他にこういうのなさそう。あるのかなぁ、他にこういうの。

　中村明日美子先生の漫画くらいしか読んだことないからちょっとわからない。

　色々と言いたいことはいっぱいあるんですけど、どこもネタバレできなくてなんか曖昧な感じのことしか書けないんですよね。

　もう皆さんにも早く読んで！としか言えないんですけども。

　とりあえず一章のラストくらいまで読んでほしい。

　ビックリし過ぎて、続き気になるのに一旦落ち着くために一晩寝かせてから再び読み始めましたからね。

　そうですね……あとなんだろうな、ネタバレせずにこの作品のすごいところなんか言えるかな。

　『暴力』というものに対しての扱いというか考え方とかですね。

　私の中の常識では暴力っていうのはフィクションにおいても最後の解決手段なんですよ。何かを解決するために色んな方法を試して、それでも分かり合えなかったり、どうしても必要なときに暴力によって解決を図るわけなんですけども『不能共』は違うんですよ。

　暴力によって何も解決しない。というか何かを解決するための暴力じゃないんですよね。完全に手段じゃなくて目的化している。

　嘘みたいなタイミングで嘘みたいな酷いことする。すぐ殴る。すぐ飯捨てる。

　わかってても毎回ビックリする。すぐ殴られるし、飯捨てられる。

　これは技術とか計算で書けるものじゃないと思うんですよねぇ。

　ガツンとやられたなぁ。

　登場人物全員の個性も突き抜けていて感覚おかしくなるんですが、私は朝陽ママが一番好きです。この人も常軌を逸した守銭奴なんですけど。にもかかわらず一番マトモっぽい感性の持ち主なので落ち着くーってなります。

　いや、でもやっぱ朝陽ママとも友達にはなれないな。

　https://www.kadokawa.co.jp/product/322210001441/

　みなさん買いましょう。

　で、私が言ってることがどういうことか答えあわせをしてほしい。

　私は見本誌をいただいたんですが、もう1冊買います。電子版を。特典掌編ついてくるらしいですし、こんなんなんぼあってもいいですからね。