経験したことしか書けない問題についてと有益参考文献(有益度★★★★)
小説家は経験したことしか書けない問題。
定期的にTwitterに出てきますよね。
別に誰も本気でそう思ってるわけじゃなくて、これは大喜利のネタ振りなのでこのこと自体について論じるっていう回ではないです。
じゃあ、なんでこんなこと言い出すのかというと、経験するしないは置いておいて知らんことは書けないですよね?っていうことが言いたいわけです。
想像するにしてもとっかかりとか基礎知識は必要じゃないですか。
お金とか時間かければ取材できるんならした方がいいよね、と個人的には思っていますが、そんなんどうしようもない時は参考図書にあたるのが一番良いのではないかと。しかし書籍もその事象について客観的に分析してあるものと、主観的に体験が書いてあるものと分かれますよね。
で、今日はお金を払ったからといって体験することはできない物事が主観的に語られていて、自身の体験としてイメージしやすくなるよ、という本をご紹介しようかなと。
『知覚の扉』(オルダス・ハクスリー著)
これはですね、麻薬(幻覚剤)を使った体験の記録なんですけど、自分の内面にどういう変化が現れたかっていうことが書いてあります。メスカリンっていう物質を使うんですが、これはサボテンから抽出できるものでインディアンが儀式に使っていたものだそうです。
で、メスカリンを投与したハクスリーさんが思考や空間認識にどういう変化が現れたかとか、芸術作品を鑑賞してどう感じたかなんてことが書いてあるのがこの本です。
これホントに色々衝撃なんですけど、時間感覚について訊ねられて、このハクスリーさんなんて答えたと思います?
「時間は豊富にあるみたいです」
って言うんですよ。こんなの想像だけで書ける返答ではないですよね。時間に対して完全に無関心になってしまって、時計を見る気もしないし、なんか時間って沢山あるよなーって思ったらしいです。
ゴッホ、ボッティチェリ、ベルニーニ、エル・グレコといった芸術家の作品をどう知覚するかとかもかなり興味深かったですね。
実際にドラッグをやるわけにはいかないですが、なんとなくこういう感じでしょ?っていうイメージはあると思うんですよ。
でもそのなんとなくテレビとか映画でちらっと見たくらいのラリってるっていうイメージでは、こういう内面の感覚は掴めないですし薄っぺらいものになってしまいそうです。
並べて紹介するのも変なんですが、最近読んだ『辺境メシ』(高野秀行著)も良かったです。
食べ物系はなんとかなる範囲が広いですが、想像の枠の範囲内だとどうにもならないものってあるわけですよ。
以前にご紹介したヒーローズ・フィーストもですが、現代日本の家庭の食卓の範囲って豊富なようでピーキーな料理と食材については書けないんですよね。
この『辺境メシ』は日本では食べられない、食べたら捕まっちゃうような食材がどういう風に料理されているか、どんな味や食感か、どういう事情で現地で食べられているのか、現地の方がどうやって捕獲しているのかというところまで書かれています。
日本人的感覚だとあんまり美味しそうではないのですが……。
ファンタジーではモンスターの肉とか獲って美味しくいただく描写がけっこう出てくるわけですが、ホントかぁ?って思っちゃうんですよね。
でもワニはけっこう美味しいのでドラゴンとかも美味しいのかもしれません。
ちなみに私はワニ、クマ、カンガルー、ウサギ、サソリ、ナマズ、タツノオトシゴ(を漬けた酒)、トナカイとかは食べたことありますね。
高田馬場にそういうのを出すお店があるので、興味がある方は取材に行ってみてください。
タツノオトシゴ酒は今まで飲んだどんな飲み物よりも不味かったです。たとえるなら、ザリガニと亀を飼っている水槽の水をそのままグラスに入れたような味。
同じ苦痛を体験したい方にはオススメです。なんかビンの中に真っ白な幽霊みたいになったタツノオトシゴがいっぱい沈んでました。
最近、このエッセイのPV数がそこそこ伸びてきていますし、『よみかの』予約しましたとコメントをくださる方も増え、CM効果けっこうあるではないか!ということで今回もちょっと気合入れて書かせていただきました。
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