一人称と二人称と三人称の話(有益度★★★★★)
以前、公募でもWEB小説と同様に一人称の方がウケる傾向にある(和田正雪調べ)。しかし、三人称の方が書きやすいということを書きましたが具体的になぜか?ということについては一切書きませんでした。
が、最近よみかのの予約数が伸びて、感謝ポイントが貯まってきたのと、エッセイの最新回がどうしようもないキモい回になっているのでちょっと有益なことでも書いておこうと思い立ったわけです。
まぁ、今見たらアマランはまた地の底(10万位以下)ですけども。
というわけで、創作論の本で読んだりして勉強したことと、自分で編み出した工夫について書きます。
皆さん、どのくらい意識してます? 人称。
「私は」が一人称で、「和田氏が」が三人称、「あなたが」が二人称ですね。
二人称が効果的なケースというのはレアなので、一旦置いておきます。
一人称はもうなんとなくそういうもんとして認識されているような気がしますが、意外と一人称っていうのは制限が多いんですよ。書く側も読む側もサラッと流していることが多いと思いますが。
制限ってなに?っていうのは、「私」が見ているもの、考えていることしか書けない、です。
何を当たり前のことを、と思われるでしょうがちゃんと意識するとこれが実は結構キツいということがわかってくると思います。
主人公、視点人物が見ている認識できる範囲、語彙、性格に描写がすべて引っ張られるんですよ。
あなたが書いてる一人称視点の描写、本当に主人公が見てることで、考えてることで、知っていることですか?
天気なんかがわかりやすいですね。
雨のシーンならいいんですよ。誰でも雨降ってたら、雨降ってんなって思うから。でも、いつもと変わらない晴れの日とか曇りの日とか大抵の人はなんとも思わないじゃないですか、現実生活でわざわざ心の中で「今日は晴れだ」ってモノローグ入れることないでしょう。朝起きてカーテン開けた瞬間くらいですか。でも毎回朝起きるところからシーン始めるわけでもないでしょう。かといって、読者に周囲の状況を説明しないわけにもいかない時ってのはあるもんです。
家具の配置とかインテリアもその類ですね。見ない奴は見ない。
家具の色なんか興味ない視点人物には見えてない。
カリモクの一人掛けソファも興味ないキャラにとってはただの椅子です。椅子。
私は黒い椅子に座った。
or
和田氏は家主がいつも座っている黒いカリモクの一人掛け用ソファに遠慮がちに腰掛けた。
ってことです。
あと主観では書けない描写ってのもありますね。
表情とか。
照れた時とか、三人称なら「顔を赤らめた」とか顔の色について鏡がないシーンでも書けますが、一人称だと赤いかどうかなんてわかんないから「顔が熱くなった」とか自覚できる描写で書かざるをえませんね。
っていう一人称は実は縛りプレイっていうのどのくらい自覚されてますでしょうか。
一方で三人称は簡単です。
○月○日快晴。
これでOK。
まぁこれ一人称小説でやってもいいんですけど、擬似的な回想というか、「○月○日よく晴れた日だった」ってやると後から思い返すとあの出来事があった○月○日はよく晴れていたなぁ、みたいなニュアンスで自然ですよね。
これは私よくやります。一個上の次元にもう一つ主人公の視点置いて、擬似回想シーンにすることで当時の情景を思い出しているっていう体で情景描写をするという。
でも現在進行形で、今日は○月○日とか天気とか友達の家に行っていちいち見慣れた家具の配置を説明するかっていうと不自然じゃないですか?
で、私が一人称小説を上手く書く上でどういう工夫をしているか、という話ですが……視点人物の頭を良くする、です。
それだけ? それだけ。
主人公をはっきり頭が良い人ですよ、色んなものごとによく気がつく人ですよ、とします。
ミステリー要素を入れる、というのもやります。
これで相当に自由度が上がります。
まず知識や語彙力がある人物の視点だと一人称でもかなり説明が楽になります。なぜなら視界に入ったものが何か知っているから。
前にTwitterでちらっと書いたんですが、高校生主人公だと煙草の銘柄とか知らないじゃないですか?
あぁ、このバニラの匂い……ウィンストンキャスターか、とかならないし、そこで一個描写に制限が生まれますし、説明するには知っている人が教えてくれる必要があるわけですよね。
でも煙草吸わない人にわざわざ教える意味もわかんないですし、いきなり難易度上がりますよね。
何を知っているかの幅を広く取っておくと一人称視点ではかなりミスしにくくなると思ってます。
まぁヤンキーモノじゃない学生社会にそんなもんそもそもないから説明の必要もないんですけど。
あと学生主人公っていうのは逆に学校っていう読者の共通認識がある世界での出来事なのでわざわざ固有名詞とか言わなくてもいいっていうのもありますね。
でも学生や子供なんて使える漢字の量まで制限受けますからね。バランス感覚が実は必要なのです。
ともかく、主人公の知識量が豊富な状態にあって、別に殺人とかじゃなくて些細なことでも謎を提示すると周囲を観察することが自然になるので一人称小説は格段に楽になると思います。
で、そこを起点に考えて、主人公の属性や知識に偏りを持たせたりすることでオリジナリティある一人称小説になっていくんじゃないかなと。
いかがでしょう?
で、戻ってきました。二人称。
そもそもそんなに存在しないんですけど、ミシェルビュートルの『心変わり』という作品があるので、これを読みましょう。それでだいたいわかります。
感情移入を超えてもはや一体感と呼べる状態を作って、主人公である「あなた」「きみ」と同じように心情を変化させることに意味がある場合に使うと効果的だと思います。
あとゲームブックとかね。
三人称神視点は……まぁ書かなくていいでしょう。やる人あんまりいないと思いますし。でもこの間、ラブコメで読みましたけどね。すごいチャレンジャーだなってビックリしました。
と、まぁこんなところでしょうか。
なるほどねーと思った方は『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』を買いましょう。
まぁまぁ賢い大学生主人公の一人称小説ですからね。
アマランの地獄の底から救い出してください。
ちなみに以前にも書きましたが、よみかのをお買い上げいただいた方は購入特典として本エッセイをコピペしてお持ち帰りいただけます。どうぞご自由に参考になさってください。いつ消えるかわかりませんからね。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322210001442/
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