最終選考の落ち方(有益度★★★★★)

※近況ノートに掲載した記事のリライト版です。


 まず宣伝からなんですけども、拙作『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』の書籍版(KADOKAWA文芸書)ですが、4月下旬発売で予約スタートは3月頭になる予定です。是非ともですね、ご予約いただけますと幸いでございます。


 さて……本編です。

 新人賞の最終選考まで何回も残って何回も落ちて、結局デビューすることになった私なんですが、振り返ってみると色々と見えてくるものがあるなと。

 一次落ち二次落ちくらいはなんで落ちたのか教えてはもらえないわけですが(といいますか、商業のステージに上げるにはクオリティが足りていないというケースが多いと思いますので、まずは技術面に課題を見出して対策も立てやすい)、最終まで残るとまたちょっと話が違ってくるわけです。

 まずそこの部分で私は色々と勘違いをしていたわけなんですが、最終まで残ったら商業レベルに達しているんだろうから後はもう運だけだろうと思ってたんですね。

 ところが別の賞でも最終に残って同じように落ちてですね、これはどうやら運が悪いとかではなさそうだぞ、と気づいたわけです。

 この世には"最終までは残るけど絶対に受賞・デビューできない作品"っていうのがあるんじゃないのかと。


 で、思い返してみると編集者さんから直接電話をもらったり、雑誌に選評が載ったりしてフィードバックがもらえるんですけど、そこで言われたことに大いなるヒントがあったんですね。

(褒めてもらってる自分に都合のいいところだけを覚えていて、都合悪いところは記憶から消していました……)


・書店に並んでいてもおかしくないレベルだと思ったけど、売れるビジョンが見えなかった。

・プロがペンネームを変えて送ってきてるのかと思った。でもあなたが新人ならこの作品でデビューしない方がいい。

・書店店頭で自分の本が並んだ時のことをイメージして、他の作品に勝てるテーマを見つけてほしい。


 要するに最終選考まで残っている作品というのは全部クオリティ的には商品レベルもしくは少しの直しで商品になるという判断のもので、後の受賞するかしないかを分けるものって何?っていう話なんですけど、募集時に大っぴらには言えなけど「売れる可能性があるかどうか」っていうことなんでしょうね。

 売れているとは言い難いマイナージャンルであれば幾ら上手くても不利だし、マイナージャンルで最終選考横並びになると書店店頭でキャッチ―な印象を与えられそうだと判断できる作品が勝ちますよとそういうことなんだと思います。

 自分が編集者だとして、やはり売れるタイトルを担当したいと思うのは自然なことだなと。あくまでビジネスであり、商品を探している中で、売れそうにないけど面白いものというのは俎上には上げて検討してもやはり商品にはなれないということでしょう。

 面白ければ受賞とか上手ければ受賞っていうわけではないと。


 私としてはいや面白かったなら受賞でええやん、と釈然としない気持ちでいたわけですが、それではいつまでも同じところで足踏みすることになるので、結局自分が好きなものを書くというのは大前提にしつつ、店頭に並んだ時のイメージを考えたりとか色々と意識をアップデートしていったところ、『夜道~』でデビューできることになりましたとさ、というお話です。


 ちなみに過去にどういう作品書いてきたかを担当編集者さんに話した時に「よくそこからちゃんとしたエンタメ作品に軌道修正できましたね……」って言われたわけですが、いったいどんな作品を書いてきたのでしょうか――?


・忍者が巨大ロボットと戦う和風バトルファンタジー

・VR上での疑似的宗教体験によって得たものは真の宗教体験と言えるのか?

・東日本と西日本が分裂して機械生物に乗って戦う戦争SF

etc.


 こうして見ると、確かにやべーなって感じしますね。

(いつか悪い例としてこれらのタイトルの梗概や選評なども公開するかもしれません)

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