第12話 生きる意味

『レディーゴー』


 私は夕刻に図書室棟の隣で氷河さんと決闘である。賭けるのは『絶対正義』と『シャドーカード』であった。氷河さんは素早く魔法陣を描き術式が走る。現れたのは全身が氷のサーベルタイガーであった。

その牙はものすごく、まともにくらえば即死である。


「姉ちゃんも召喚獣を召喚して」


 白花が叫ぶ、剣や炎魔法式の召喚術では勝てないとの判断だ。私は魔法陣を描き『フェニックス』を召喚する。フェニックスにまたがり空高く飛び上がる。空中で旋回してサーベルタイガーの様子をうかがっていた。


 氷河さんは「氷術ストーム」と叫び、魔法陣を描き術式を展開する。辺りに吹雪が立ち込めて完全に氷河さんのペースであった。


「『氷玉』だ」


 サーベルタイガーに命令する。サーベルタイガーの口に氷の渦が起きてそれを空中にいる私に飛ばす。


「避けろ、フェニックス」


 フェニックスの機動力でなんとかかわす。厄介だな、遠距離攻撃もできるのか。氷術ストームの吹雪は強まり私の体力を奪っていく。長期戦は不利だ。私は相打ちの判断をする。


「フェニックス、体当たりだ」


 私はフェニックスにまたがりながらサーベルタイガーに体当たりする。相殺する召喚獣に私は吹き飛ばされる。


「強い、私のサーベルタイガーが一撃で……」


 氷河さんは呟くと氷の剣を両手に召喚する。


「よした方がいいよ、その様子だと氷河さんは剣術に向いていない。サーベルタイガーが倒れた時点で降参すべきだ」


 白花が氷河さんに警告する。氷のサーベルタイガーみたいに高度な召喚獣は体力の消費が激しい。普段、剣や魔法式の召喚術をしていない氷河さんの負けだ。


 それでも戦おうとする氷河さんに、私は『剛力の剣』を召喚する。

その後、剣術戦に持ち込まれると氷河さんの氷剣は簡単に折れて、氷河さんは動けなくなる。


「勝負はついた、この吹雪を解け」

「私は負けない……」


 氷河さんは無理をして立ち上がろうとするが崩れ落ちる。


 うん?


 様子がおかしい。私は氷河さんに近づくと、氷河さんの体温が下がっている事を感じる。


「早く、この吹雪を解け!」

「『絶対正義』に負けるくらいなら死を選ぶ!!!」


 私は氷河さんに近づき弱い炎術で氷河の体を温める。


 しかし、気を失う氷河さんであった。


……。


 保険室で眠る氷河さんにリンゴをむいていると。


「ここは?」


 意識が戻る氷河さんであった。


「勝負は私の勝ちだ、報酬は氷河さんが生きる事でいいな」

「『絶対正義』らしいな……」


 氷河さんはリンゴを口にすると笑顔が戻る。


「高度な召喚獣の相殺の後でなおも戦える炎華の勝ちだ」


 負けを認めて氷河さんはスッキリした様子である。


「私もその『絶対正義』に魅かれたかな……」


 氷河さんは負ける事で何かの呪縛から解き放たれた感じだ。きっと、今まで無理をして勝ち続けたのであろう。


 窓を開けると初夏の香りが部屋の中に入ってきていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る