第8話 敵の力量

 登校途中のことです。また。黒い闇が現れました。この通学路で強力な召喚獣に会うのは二度目です。これは誰かが意識的に召喚している様子です。大きな音と共に現れたのは、ギリシャ神話のキマイラであった。ライオンや蛇に鹿などが共存する化け物です。


 これまた強そうだ。そんな事を考えていると。ライオンの口から黒い毒の息を吐くのであった。


「くっ!」


 辺りが黒い毒の霧に覆われて、私は息が苦しくなる。これはどうする……単体に有効な『桜花』でいくか。私は手のひらに炎の塊である桜花の花びらを召喚する。


「ふ~」


 私が息に力を込めて花びらをキマイラに届きます。そして、桜花の花びらの一つ一つが飛んでいくと大きく弾けてキマイラを襲う。やがて、キマイラ全体が炎に包まれ炎上する。


 弱い……弱すぎる。


 これは要、警戒です。大体、肝心の黒い毒の霧がまだです。


 うん?


 燃えているキマイラの獣体に対して影が動いています。


 本体は影か!


 倒し方は剛力の剣で影を突き刺すしかないですね。問題は燃えている上部です。やはり、剣術で切り裂くしかないか……。


 私は術式を走らせて剛力の剣を召喚します。その後にダッシュして燃える獣体を攻撃です。


「くっ、ゲホ、ゲホ!!!」


 私の気管に入った黒い毒の霧が起動力を奪う。ここは我慢だ。私はせき込む口を押えてキマイラの上部を切り裂くと影だけが動き出す。


「はああああ、ゲホ、ゲホ!!!」


 更に無理をして、ふらつきながらキマイラの影を突き刺す。


『ギヤーーーー』


 キマイラの悲鳴が聞こえます。勝ったか?すると、キマイラの影は消えていく。


 ふ~ぅ、ギリギリ勝てたか。この戦い方は変えないと体がもたないな。


 しかし、誰でしょう、この私を試しているかのようです。


***


 翌日、美化部で三人が集まると。白花が仕入れてきた。北斗のメンバーの分析を始める。


「まず、海戸さんだが、サイボーグ巨大クモの使い手であり、昨日あれだけ気持ちよく快勝したので大人しくしているだろう」


 海戸さんだが見た目はそこそこ良いが。やはり、器が小さい印象である。


「次の氷河さんだ、これが姉ちゃんと正反対の性格に使う召喚術も氷属性です」


 簡単に言えば計算高くてクールビューティーである。嫌いなモノは徹底的に潰すタイプだ。


「噂では『絶対正義』を嫌っているとか」

「やりにくいな」

「はい、裏の『北斗』の会長と言われ。その実力は姉ちゃんと同等かと」


 白花は氷河さんの話に入ると厳しい面持ちになるのであった。


「更に『北斗』会長の『筒本 陣』さんは、五芒星の一人です」


 五芒星はこの学園の代表的な存在として選ばれた人達です。ちなみに、私も五芒星の一人ですが実感はありません。


「陣さんは鉄の召喚術の使い手で、またの名を『鉄巨人』です」


 うぁ~強そうだ。


 私が頭をかいていると輝夜さんが麦茶を用意してくれました。


 ありがたく、麦茶を頂くと。輝夜さんの不思議な気配を感じます。

白花も首を傾げています。


 ……?


 あれ?普通だ……やはり、気のせいだったようです。そんな事より、今日の課題だ。


 だから……筆記は苦手なのです。


「姉ちゃん、また、僕を頼るの?」

「えぇ、頼ります」


 私は麦茶を飲み干すと、気合を入れて課題に取り組みます。


「どうぞ、麦茶のおかわりです」


 輝夜さんが麦茶を優しくコップに注ぎます。これからの季節は冷えた麦茶に限ります。部室の外には初夏の日射しが降り注いでいます。

今日も暑くなりました。

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