はじめまして。「面白い小説発掘祭!」企画からお邪魔させていただきました。
読んだことの無い方の作品を……と、取り敢えずショートショートの御作を目に留め、拝読させていただいたのですが、取り敢えず・で片付けられない考えさせられる作品でした。
文章は、ライトノベルの多い中で、しっかりと状況と情緒が伝わる、素敵で好きな雰囲気があり、物語の世界に引き込まれました。
しかし読み進めるにつれ、ミステリーか、ホラーか、ファンタジーか……とハラハラさせられ、ラストで納得・と同時に遣る瀬無い想いも抱きました。しみじみと考えさせられる作品で、丁度読んだのがお盆の今だからか、余計に感傷的に受け取っちゃったのかもしれません。
不思議で独特の雰囲気を持った面白い作品でした!
作者からの返信
コメントありがとうございます。
「ライトノベルの多い中で」というのは、どのフィールドのことを指しての言葉が分かりませんが、その中にあって、好きな雰囲気の筆致であったようで良かったです。
「しかし読み進めるにつれ」は、勝手ながら「そして読み進めるにつれ」であると理解していますが、よろしかったでしょうか。
私の読者ならもう聞き飽きているはずの言葉がありまして。
「人が考える葦ならば、作家は考えさせる葦でなければならない」
というもの。
文書を読ませて、読者に「考える」という行動を起こさせなければ書く意味が無い、ということなのですが、私の信念の話なので全ての作家に当てはまる義務ではありません。
「考えさせられる作品」は基本であって、物語を構成する最低条件です。それと同時に最大の目的でもあります。
考えて頂けたのならそれだけで十分嬉しいです。
こんにちは。批評企画に参加ありがとうございます。主催の染谷市太郎です。
数回読み直し、なぜこの作品をこちらの企画に参加させたのかを考えました。
おそらくまだまだ足りない、完璧でないという思いからの参加だと考えております。
しかし、こちらの作品は、しっかりとした知識と文才を下地にし、高い完成度を持っていると思われます。
私は未だ修行中の身ですので、こちらの作品にこれ以上の指摘をすることはできない、と正直に伝えさせていただきます。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
私が染谷さんの作品に上手く評価を付けられなかったのと同じですね。手段が同じでも目的はまるで違う。もちろん読者を楽しませることは目的として同じでも、そのベクトルが違いますもんね。
普段触れないような作品な触れられるのも自主企画の良い面だと思います。改めてありがとうございました。
編集済
はじめまして。こんばんは。
雪の舞うベルリン。趣きのある図書館。
美しくも残酷な天使が似合う世界観に
圧倒されました。惹かれました。
所々に生を感じさせる鮮やかな赤。
それなのに何か重苦しいものを抱えた
陰のある主人公の姿に不安を感じていたら…死。
主人公はどうして差し伸べられるままに
天使に手をとらせたのだろう。
ダミエルさんは何故巻き込んでしまったのだろう。
罪の意識?絶望?共感?
わかるような違うような…
(何度も読みましたが確信が持てず)
読者に委ねる作品だったら読み流して下さい。
(失礼なことを言っていたら、本当にすみません)
とてもとても気になる作品です。
これを書かれたことが本当に凄いと思います。
返信の返信。
お返事ありがとうございました。
命を救うための手で、命を消すうちに
何かが壊れていったのかもしれないですね。
エンゲルは死をもたらす存在。
引き寄せられるのは死を望む人々。
なるほど、腑に落ちました。
とても哀しく切ない作品だと思います。
良いものを読ませていただきました。感謝です。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
そろそろ解説を書いてもいい頃かも、と思っていましたので、ちょっと行間部分を補っていきたいとおもいます。
返信の場所をお借りして申し訳ないですが。
まず「私」は日本人であり、優秀な医師です。
医師を目指す人の多くは、何を望んで医師になったのでしょう?
それは病気や怪我に苦しむ人を救いたい。あるいは、医学の徒として病の研究をし、その病で苦しまない世の中を作りたい。そういう夢を持っていたことでしょう。
ところが、主人公はビジネスとして、いわゆる積極的安楽死や、医師幇助自殺を病院の方針に逆らっておこなっていました。
その行動に至った経緯は、回復の望みがなく酷く苦しむ患者に耐えられなかったからか、自分の利益のためか、人から強要されたか、その辺は明らかにしていません。
しかし、常にその自分の行動に疑問を持ち、時間さえあれば図書館で聖書を開き、そこに「真実」を探していたのです。
なぜ教会ではなく図書館か。
それは罪の意識がクリスチャンでもない日本人の主人公が、教会へ行く勇気がなかったからでしょう。しかし聖書に答えは見つけられず、惰性で日本では「殺人」になる罪を犯し続けていることに疲れ果てます。
そしてエンゲルです。図書館でのエンゲルは、その歳と着ているものでかなり目立つはずです。
しかしながら、階段から降りてきた淑女はその存在に気付いていませんでした。
エンゲルは、死に近づいた者にしか見えません。(この物語ではそういう設定です)
そして、ダミエルはそのことに気付いていました。
ですので、ダミエルの部屋へエンゲルと共に主人公が来たのを見た瞬間、主人公も死ぬ運命だと悟っています。そして、主人公の様子を見て、自分と同じく死を望んでいると感じたのです。
ちなみにダミエルが主人公の務める病院を去ったのは、「死ぬための料金」を払うだけの経済力がなかったためです。
安楽死、尊厳死が語られる時、医師にかかる負担についてはあまり触れられることはありません。
仮に日本でも法律で「死ぬ権利」が認められ、医師が患者の意志通り死を選ばせることができるようになったとします。
意思表示できない患者に変わって、家族からの依頼を受け、致死量の薬剤を投与することもあるでしょう。
その際の医師の精神にかかる負担は、相当なものになるはずです。
今回の物語の裏テーマは、この「医師への負担」でした。
さて、作者の私はこの物語で、安楽死等を肯定も否定もするつもりはありません。それこそ、それぞれの読者の考えに委ねたいと思います。
「ベルリン・天使の詩」のモノクロとカラーの映像が交差する感じが、こちらの作品にダイレクトに繋がりました。人間から見る天使の姿は鮮やかだけど、天使の視点で人間たちはモノクロに見えるイメージです。
少女のセーターとトマトの赤がリンクして、それはどちらも死を表象している。
非常に美しかったです。
芸術的な語りの中に社会問題も織り込まれていて、読み応えがありました。
ありがとうございました。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
一般受けはしないかな、と公開当初は危惧していましたが、思えばこの場には私などよりクリエイティブな才能を持った方々が集まっていましたね。
予想以上に高評価を得て嬉しい限りです。
雪や寒さに隠しきれない「赤」という強い色に意味を見出して頂けて嬉しいです。ありがとうございました。
「ベルリン・天使の詩」はヴィム・ヴェンダースとソルヴェーク・ドマルタンのことを何故か淀川長治が毛嫌いしていたことをまず想い出します。
ゆるぎない美学でぴんと張りつめて書かれた掌篇。西山さんの脳内の知的な図書館の中に入り込むような気持ちになりました。トーンの低い色彩の中に浮かぶ少女の赤いセーターが「シンドラーのリスト」での赤いコートの少女と同じ効果を上げているように想います。
太陽のアイスバインという生気に満ちたタイトルから想い起すものとは正反対に、「ああ、そうか……」となる終わり方まで、きっちりと世界を創られる方なんだなぁと。密度の高い物語をありがとうございました。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
世界、創れていますでしょうか?
作者に自覚、自信ナシです。
「没入させれたら良いな」
くらいは思って書いていますが。
今作はいつもより好反応なので、よく出来たなぁ、と思いつつ。
それぞに色々と感じて頂いて嬉しい限りです。
企画にご参加いただきありがとうございます!
うわぁ……思わず二度読み。
重いテーマでありながら美しく、また懲罰的な残酷ささえ感じる、
とてもゴシックな印象を持ちました。
トマトは悪魔の実とも呼ばれますし、それがアイスバインのポトフに入っていることもなにやら暗示的に読めました。
少女(エンゲル)の存在が、重苦しいダークなシーンに一点華やかな差し色となって効果的ですね。
すごい話を読ませていただきました。ありがとうございます。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、ヨーロッパに入ってきた時点で「毒がある」と思われ観賞用だったトマト🍅悪魔の実から発想を広げて書いた作品でした。
で、ヨーロッパ舞台で図書館と言えば、ベルリン国立(州立)図書館だな、と。
あとは、現実でも問題になっている事柄を織り交ぜて煮込んだ感じですね。
楽しんで頂けて光栄です。ありがとうございました。
編集済
ご紹介いただき、ありがとうございました。
「これだけしか飛べないから、きっと人間だと思う」
このセリフが最高に魅力的でかわいらしかったです。
ダミエルと先生が、結局同じ道の先へいざなわれた理由はいくつかの可能性があって推測できるのですが、その謎は心のうちにはっきりさせないまま残しておきたいと思います。そのどれだったとしても、素敵だと思うからです。
ダミエルの「恨み」の線だけは、きっちり作中で否定できるように表現されているので、見事だと思いました。ありがとうございました。
作者からの返信
コメント、レビューありがとうございます。
欧州で認められ始めた「患者による死の選択」と「医師による死の執行」。
物語としての事実はそれだけです。登場人物たちの存在もその感情も不確かです。
それだけに読者の読み方にも幅ができて楽しめるはず、と信じております。