12-06 トレジャーハンター

 今日は、朝から晴天に恵まれた。

 シェルターから持ってきた小型ソーラーパネルを広げて、ドローンのバッテリーを充電している。

 この充電が完了したらドローンを飛ばして、ここから北へ向かう山道の先を確認するつもりだ。


 ここを利用していた人は、車でこの山道を利用していた。

 となると、この山道の先に、町があるのかもしれない。


 充電が完了し、ドローンを飛ばした。

 先日、畑を探す為に飛ばした時は、解像度を優先する為、半径3㎞のエリアを写した。

 今回は、半径10㎞のエリアを写す。


 ドローンでの撮影を終え、画像データをパソコンに移して確認した。

 北に向かうこの山道の先に何があるのか。


 しかしこの山道は、3㎞少し先で、東西に伸びる幅の広い公道に繋がっているだけだった。

 この公道の先は、写っていない。

 公道の先を目指すのであれば、相当な距離を覚悟する必要がありそうだ。


 残念な気持ちで上空写真を見ていたら、気になるポイントを見つけた。

 山道から公道に繋がった先に、整地されたエリアと、その隣に建物らしきものがある。

 これは……もしかしたら……。


 皆を集めて上空写真を見てもらった。

「この整地されたエリア、車は確認出来ませんがパーキングですよね」

「となると、隣の建物は……」

「これは……あれだ……あれしかない!」


 なんだなんだぁ?

 皆さんもったいぶってぇ!

 しかし、その予想が外れていた時の残念な気持ちは計り知れない。

 何にしても、ここから片道4㎞ある。

 しかし……もう……皆さん行くつもりだ。


 BMさんが、倉庫からリャカーを引っ張り出してきた。

 おいおい、もしも空振りだったら、カラのリャカーを引っ張って帰ってくる訳ですよね。

 その時の悲しい気持ちは、想像するだけで心が痛い。


 しかし皆さん、このテンションの高さは、何処から湧いてくるのでしょう。


 そして、全員でリャカーを引っ張って出発した。

 片道4㎞。

 人間の歩く速さで、約1時間。

 しかもリャカーを引っ張っての移動である。


 ところが皆さん速い速い。

 あっという間に着いてしまった。


 車の止まっていない駐車場。

 その先に見える建物は、期待どおりのコンビニだった。


 電気が消えている。

 誰もいないようだ。

 扉は自動ドアで、電気が来ていない為、開かない状態。

 それを、むりやり開けた。

 中は、荒らされていない。

 さすが日本人。


 店内は、腐敗した生ものの匂いが充満している。

 しかし、私たちにとって、そこは宝の山だった。

 缶詰、ビン詰、ペットボトルの飲料水、ビール、日本酒、ウイスキー。

 また、栄養調整食品や、パウチ ゼリーなど、賞味期限が切れていないものも沢山ある。


 その時、生活の拠点をここのコンビニへ移すのは?

 といった提案が成された。

 しかし、残念ながら現在は、電気も水道も通っていない。

 近くに小川のある現在の拠点の方が適しているのでは……という事で、生活の拠点を、ここへ移すのは諦めた。


 そして私たちは、食べられそうなものを手あたり次第、リャカーに積んだ。


 本棚を見ると、いかがわしい本が並んでいる。

 しかし、今は女性達と一緒である。

 特に詩織のいる前で、この手の本には、手を伸ばせない。


 するとアノンさんがその本を取って、ペラペラとめくって見ている。

 そして「ふーん」と言って、私をチラッと見た。


 しまった!

 私の視線の先を捕捉されていた!

 これは恥しいぞぉ!


「さーて、他に持って行けそうな食料は……」

 等と言って、私はその場から離れた。

 

 CMさんは、リャカーに積んだものを1つ1つ、紙に書いている。

 そして最後に『非常時の為、拝借致します』と書いて、その紙をレジに置いた。


 私たちは、そのリャカーを引いて、住処へ向かった。

 さながら財宝を見つけて、それを積んで帰るトレジャーハンターの気分である。


 これで、畑に植えた作物が収穫出来れば、食料事情は更に安定する。


 そして、その日の夕食は、まるでお祭りのようだった。

 お酒飲みながら大騒ぎ。

 賞味期限間近のものから頂いていった。


 しかし、詩織さんがシェルターから持ってきてくれたビールより、美味しいお酒はなかった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 アノンさんは、レイさんの視線の先を追いかけていたようです。

 アノンさんの心に気付かないレイさんです。

 まぁ、レイさんらしいですね~


 次回:嫌な予感

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