12-05 林の中で

 山菜や木の実を採りに行く際、注意が必要である。

 道の無い林を歩いていくことになる。

 このあたりは目印になるものが無い為、遭難しそうになる。


 そこで、地図を作る事になった。

 方位磁石とトランシーバーを携帯して林に入る。

 地図を描きながら進んで行く。


 目印になりそうな木には番号を書いた布を巻きつけ、その番号を地図に記入する。

 そして、山菜など生えている所を見つけたら記入する。

 この作業は、2人以上で一緒に行動する事となった。


 最初はCMさんとC子さんとアノンさんの3人で出発した。

 CMさん達は慣れているようで、いい感じの地図が出来上がって来た。


 次の日、BMさんとB子さんによって、別の方角の地図が作られた。

 皆さん、こういった事、慣れているようで、さすがだ。


 だいたい地図は出来上がった為、今日予定していた私と詩織は、出来た地図を確認してほしいとの事だ。

 たしかに、書いた本人以外の人が確認して、補足情報を記入する必要がある。

 その確認作業を受けて、私と詩織は出発した。


 地図と方位磁石を確認しながら進んでいく。

 地図に書かれた番号と、その番号が書かれた布の巻かれた木を確認しながら進んでいく。

 なるほど、これは素晴らしい。

 これなら林で迷う事は無さそうだ。


 詩織が私に話し掛けた。

「なんか、デートしているみたいで、楽しいですね」

「ああ」


 いつもは、私と詩織とアノンさんの3人で行動していたが、最初のCMさん達にアノンさんも参加した為、私と詩織の2人だけで行く事になった。

 アノンさん……気をつかってくれたのかな?


 CMさん達が書いた地図の確認を終え、今度はBMさん達が書いた地図の確認に向かった。


 昼食の時間になり、シートを広げた。

 詩織は私の隣に座って、ピトッと私にくっついている。

 持ってきた食料を一緒に食べた。


 静寂な林の中、詩織と2人きり。

 これは、ちょっと、やばい。


 昼食を終えて、地図の確認作業を再び始めた。

 地図に書かれた番号と、山菜が生えているエリアを確認した。


 だが、ここに来た時に見つけたアケビ、山栗、等の木の実の記載が無い。

 ……たしかこの辺だった記憶がある。


 ここから先は、地図に描かれていないエリア。

 遭難したら大変である。

 方位磁石を頼りに、先へ進んだ。


 地図を描きながら進んでいく。

 歩いてきた道を戻れるように、服を一枚ずつ脱いで、目印として木の枝に掛けて進んだ。


 しばらく歩いていくと、詩織も自分の服を脱ごうとした。

「ちょっと待った!」

 慌てて止めた。


「今日は、ここまでにしましょう」

 引き返そうとした時、詩織が前方を見て言った。

「あれは……」


 そこには、山栗が一面に落ちている。

「……ここだ」

 この場所を地図に記した。


 山栗のイガは厄介なので、イガから抜け落ちている栗だけを拾い集め、リュックに入るだけ入れた。


 たしか、アケビを見たのもこの近く。

 山栗が落ちていた場所を目印にして、もう少し先へ進んだ。


 あった。

 しかし、アケビのような熟した実を入れる袋、持って来て無い。

 まあ、目的は地図の確認だ。

 こんど皆で拾いに来よう。

 アケビの木の場所を地図に記し、目印として掛けた私の衣類を回収しながら、私たちの住処へ向かった。


 帰る途中、急に天気が崩れ出した。

 山の天気は変わりやすいと言う。

 私と詩織は、木陰になる所へ走り、そこで雨宿りをした。


 私が携帯していたトランシーバーが鳴った。

「雨が降り始めましたが大丈夫ですか?」

 確認の連絡だった。


 私は伝えた。

「木陰で雨宿りしています。雲の流れが速いので一時的な雨だと思います。私もA子も問題ありません」


 常に雨具は携帯する必要があると感じた。


 ……なんと!

 詩織のシャツが濡れて、胸に貼り付いている。

 薄い胸の膨らみが、露わになっているではないか!


 これは……いかん!

 この恰好で住処に戻ったら、詩織が水の妖精である事が、皆にバレてしまう!〔←レイさんの勝手な設定です〕


 私はシャツを脱いで詩織の肩に掛けて言った。

「風邪をひいたら大変」

「……レイさん」

「私は大丈夫だよ」

「……ありがとうございます」


 私はシャツを脱いでも、その下に肌着を着ているから大丈夫だ。

 しばらくすると雨が止み、私と詩織は住処へ戻った。


 みんなに拾ってきた山栗を見せ、山栗とアケビの木の場所を地図で示した。


 ナイフで栗の皮に切れ目を入れ、フライパンで焼いた。

 山栗は小さいが「これは美味しい」と言って、みんな喜んでくれた。


 今日は、みんなで山栗を焼いて食べた。


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 次回:(第12章 最終話)トレジャーハンター

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