12-02 初めての朝

 屋外での夕食会を済ませ、火の後始末をしっかりして解散となった。

 各自、選んだ家へ行く。

 私と詩織も家に入った。


 ここは、ガスも電気も水道も通っていない。

 懐中電灯で探すと、太陽光充電式のLEDランタンがあった。

 ここでの夜の灯りは、ランタンを利用しているようだ。


 寝る準備をした。

 布団があったが、半年以上畳んだままの状態である。

 天気の良い日に十分干して、使えるようであれば使いたい。


 そこでしばらくは、私も詩織もシェルターから持ってきたシュラフ(寝袋)で寝る事にした。

 これなら、詩織を食べちゃいそうになる気持ちを抑えられる。

 詩織と一緒に同じ部屋で寝た。


 明日も、やる事が一杯ある。

 しっかりと寝なければいけない……等と考えている内に、今日の疲れによるものだろう、深い眠りに堕ちていった。


・・・・・・


 翌日、目を覚まして横を見ると、詩織も目を覚まして嬉しそうに私の方を見ていた。


「おはよ」

「おはようございます」

「どうした?」

「はい。起きたら外は雨が降っていて、このままシュラフに入っていました」


「ああ、本当だ。雨を見るの、何ヵ月ぶりだろう」

「そうですよね」

「起きた時に雨が降ってると、布団から出たくなくなるよね」

「はい。シュラフに入ったまま、レイさんをずっと見ていました」

 ……いかん、シュラフでなければ、食べちゃうところだ。


「でも、昨日は雨が降らなくて、本当に良かった」

「はい。途中で降られたら大変でした」

「そして、今は雨をしのげる家がある。本当にありがたい」

「はい」


「今日は、ここの周りを探索するつもりだったが……」

「ええ、雨があがるのを待ちながら、ゆっくりと休みましょう」

「そうだね」


 その後、私と詩織はシュラフに入ったまま、雨音を聞きながら、他愛の無い話しをした。

 こんな時、話す相手がいる。

 それが、どれほど心の支えになっているか、改めて考えさせられた。


・・・・・・


 それからしばらくすると、戸を叩く音がした。

 雨の中、B子さんが連絡に来た。


「CMさんの家にみんな集まっていますが、来られませんか?」

「ありがとう。行きます」


 そして雨の中を、私と詩織はCMさんの家へ向かった。


・・・・・・


 CMさんの家へ着くと、みんな集まっていた。

「おはようございます」

 朝の挨拶を済ませ、私と詩織は、空いているスペースに座った。


 CMさんが話し始めた。

「みなさん、昨日の移動で、足首を痛めたり、体に不調を感じている方は、いませんか?」

 CMさんの問いかけに、不調を伝える人はいなかった。


 CMさんが、話しを続けた。

「今日は、この地域を散策する予定でしたが、あいにくの天候の為、ゆっくりと体を休ませ、ここへ置いて行く機材等の整理を行いましょう。我々は3日分の食料しか持ってきていません。よって、明日は午前中、このまわりを散策して午後にはシェルターへ向かいます」


 すると、C子さんが質問した。

「もしも、明日も天候が悪ければ、どうしましょう」


 CMさんが答えた。

「明日も雨天の場合は、雨具着用のうえ、午前中からシュルターへ向かいます」


 みんなは、残念な表情を浮かべた。

 そして、さまざまな人が発言した。

「ここまで来て、探索しないで帰るのは……」

「なんとか、食料を節約して、もう一日」

「しかし、次の日も雨天かもしれない……」


 それに対してCMさんが発言した。

「我々の食料と体力には、限りがあります」


 そう、シェルターからここへ向かう計画が立てられた時、さまざまな事態を想定していた。

 その1つが、天候の問題だった。

 しかし、さまざまな事態に対応する事を考え始めた時、何も出来なくなってしまう事を感じた。

 そこで、取返しのつかなくなる事と、そうでない事に分けて考えた。


 CMさんが付け加えた。

「今回持ってきた機材は、ここへ置いていけます。よって、今度ここへ来る時は、沢山の水と食料を持って来れるでしょう」


 ここで無理して、取返しのつかない事になってはいけない。

 CMさんの話しに、全員が同意した。


 そして、明日は天気が回復してくれる事を祈って、ここへ置いて行く機材の確認を行った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 次回:自給

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