11-05 出発

 私たちは、生活の拠点を移すことにした。


 目的地に着いたら、そこで食料の自給が可能かを全員で判断する。

 不可能と判断した場合は、シェルターへ戻る。


 可能と判断した場合は、そこに機材を置き、作物を植えて収穫出来るまで、シェルターとの間を往復し、シェルターの食料を運ぶ。

 そんな計画である。


「現地を確認しに行くのに、全員で行く必要は無いのではないか」との意見が出た。

 それに対して「全員一緒に行動するって決めたじゃないですか!」とC子さんが反論した。


「現地を確認した人と、確認していない人との間で、認識の違いが出てしまうのも良くない」との意見も出て、改めて全員一緒に行動する事となった。


 そこで、体力をつける為のトレーニングを、全員行う事となった。

 長距離の徒歩による移動である。

 誰かが途中で歩けなくなったら大変である。


 このシェルターに降りて、全員運動不足である。

 幸い、このシェルターには運動する事を目的としたエリアがあり、そこには、トレーニングマシンが用意されている。


 その中で、ウオーキングマシンを利用する事にした。

 全員、時間を分けて利用する。

 最初はゆっくりと、徒歩で3km歩き続ける。

 次第に距離を伸ばしていき、1日10km以上、歩く事を目標とした。


 走る必要は無い。

 だが、若い詩織は軽いランニングで3km走り、その後7km以上、歩くトレーニングを行っている。


 詩織のランニングしている姿は実に美しい。

 詩織の薄い胸が揺れている。

 私は、ただ、それに見とれていた。


・・・・・・


 そして私たちは、持って行く物の準備を始めた。

 持って行ける物には、限りがある。

 全員分の水と食料3日分と着替え。


 それと、放射線量計、トランシーバー、ノートパソコン、小型太陽光パネル、テント、寝袋、調理道具、作物の種、耕す道具……。

 現地から、更に上空写真を撮る為にドローンも持って行く。

 野生動物と遭遇した時の為に、麻酔銃を全員が携帯することになった。


 この麻酔銃の射程距離は、8mから10m。

 対象物に当たった玉は、中から麻酔薬が霧状に噴射し、それを吸い込む事で眠らせるとの事だ。


 射撃体験用に、模擬弾が用意されていた。

 それは、麻酔薬の代わりに匂いの付いた液体が霧状に噴射する。

 撃った人は、その匂いを嗅がないように、その場から後方へ逃げる訓練を行う為のもの。


 全員で、その射撃体験をした。

 野生動物と遭遇しない事を願うが、まったく居ないとなれば、それはそれで心配である。


・・・・・・


 それから1ヵ月が経った。

 地上での放射線量も、問題ないレベルまで下がった。

 私たちは明日、新しい居住地を探しに、全員で出発する事になった。


・・・・・・


 そして翌日、天候は晴れ。

 全員の健康状態を確認した。

 各自、登山用の靴を履いた。

 担当した荷物を背負った。


 朝6時、私たちは新天地に向けて出発した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 次回:(第12章1話)新天地を目指して

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