11-03 上空写真

 再び地上へ出る事となった。

 では、誰が出るか。

 全員が出たいと言い出した。

「外の世界、見たい」

 との事だ。


 まあ、地上での放射線量、現在はそれほど高くない。

 短時間での作業という事で、明日、全員で地上に出る事となった。


 シェルターの倉庫にあったドローンを確認した。

 マニュアルによると、ドローンの重さは約1Kg、飛ばせる距離は約300mとの事。

 ドローンでの上空撮影は、私とBMさんが担当する事となった。


 ビデオカメラは、前方から見て斜め下向きに付いている。

 それを真上に飛ばし、ドローンを水平方向にゆっくりと回して360°の上空映像を撮る。


 失敗して墜落したら取返しがつかない。

 そこで、室内で飛行させ、操縦トレーニングを行った。


 ドローンを真上に飛ばすだけなら、それほど難しい操縦ではない。

 それを、水平方向にゆっくり回すのが難しい。

 ゆっくり回さないと、遠くの景色ほどブレてしまう。

 そこで、10°回して静止させ、10°回して静止させ、それを36回繰り返す事で、360°の上空映像を撮る事にした。

 その操作の感触をつかむまで、トレーニングを行った。


・・・・・・


 そして次の日、モニターシステムで地上が晴天である事を確認した。

 特殊マスクと手袋を全員装着した。

 予定どおり、全員で出発した。

 BMさんが先頭で階段を登る。

 私とCMさんでドローンを運び、後尾で登った。


 全員で地上に出た。

 見渡すかぎりの白い世界に、みんな言葉を失っていた。

 そして空を見上げた。

 抜けるような青空。


 しかし、一羽の鳥も飛んでいない。

 動物もいない。

 私たち以外、動くものがいない。

 ただ、地表の白い砂だけが、風に舞っている


 私とBMさんで、ドローンを飛ばした。

 真上に飛ばし、ドローン搭載のビデオカメラで360°の上空映像を撮った。


 しばらく撮影した後、無事にドローンを着陸させた。

 そして私たちは階段を下りてシェルターへ戻った。


 シェルターへ戻って最初にする事、それは、シャワールームに入り、地上で付着した放射性物質を含むチリを洗い流す事だ。

 我々男性3人は、男性用シャワー室に入り洗剤でくまなく洗い、シャワーで流した。


 すると女性シャワールームから、「キャッ、キャッ」といった声が聞こえてきた。

 ん……けしからん! 〔←い~じゃん!〕


 シャワールームで体を洗った後、ドローンで撮って来た映像の解析を早速始めた。

 空からのビデオ動画を静止画として切り抜き、高度と方角の情報から繋ぎ合わせていく。

 そして、シェルター真上から見た半径10kmの上空写真が出来上がった。


 それを見ると、この白い砂のエリアは半径約5kmの円形である。

 核爆発のすさまじさが伺える。


 その円の中心は、このシェルターから南に2km先のあたり。

 おそらくそこにウイルスミサイルが落とされ、それを焼き尽くす為に核が落とされた。

 しかし、このような森林地帯に、何故落としたのか。


 そして、半径5kmの白い砂の外側に、茶色のエリアが確認出来る。

 おそらく森林火災が発生し、焼けた木々ではないだろうか。

 焼けた木々のエリアの幅は、北側と南側が約3km、西側が約2km、東側が約5km。

風は西から東に向けて吹いていたのだろう。

 よく火災が鎮火したものだ。

 核爆発により上昇気流が発生し、その後、大雨が降ったのかもしれない。


 そして、焼けた木々のエリアの外側に森林地帯が確認できる。

 このシェルターは、爆心地から北に2km。

 よって、北に向かえば約3kmで白い砂のエリアを抜ける。


 その先、火災によって燃えた木々のエリアが約3km

 そしてその先が森林地帯。

 つまり、北へ向かえば約6km先に森林地帯がある。


 ここを出て、生活の拠点を移すのであれば、白い砂のエリアと火災によって燃えたエリアの更に外側だろう。


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 次回:生き延びる為に

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