10-03 海風と陸風
シャワールームから出た私とBMさんは、マスターユニットが置かれている部屋へ行った。
「お疲れ様でした」
みんなから、労いの言葉を頂いた。
みんなはその部屋で、スレーブから送られてくる情報を確認している。
そして、やはり外の世界が真っ白だったという事に、みんな驚いていた。
C子さんが言った。
「地上での放射線量、まだ少し高いですね」
B子さんが言った。
「しかし、短時間なら地上へ出ても問題ないレベルです。そろそろ私たちを救助に来ても良い頃ですが……」
CMさんが言った。
「まあ、食料は4年分あります。放射線量が問題ないレベルまで下がるのを気長に待ちましょう。もしも救助が来なければ、それから行動を起こしましょう」
そこで、このモニターシステムの活用と、得られる情報についての話し合いが持たれた。
地上に設置したスレーブユニットの送受信機能を使って、他の生存者への交信が出来ないか、それをBMさんとB子さんに担当してもらう事となった。
次に、採取した地表の砂に含まれる放射性物質の解析を、CMさんとC子さんが担当する事となった。
そしてスレーブユニットからの時間に対する放射線量の推移から、問題ないレベルになるまでの予測を、私と詩織とアノンさんが担当する事となった。
そして、1週間後に最初の報告会を行う事として、今日は解散となった。
私は自分の部屋へ戻った。
ベッドで横になり、地上へ出た時の事を思い出していた。
シェルターへ戻る時、空を見上げた。
あの時に感じた違和感……なんだったのか。
・・・・・・
スレーブからの放射線量などの情報は、随時記録されている。
私は、スレーブのカメラを操作して、外のようすを見ていた。
・・・・・・
そして1週間が経った。
担当した内容についての報告を各班でまとめ、報告してもらった。
最初に、BMさんから、他の生存者とコンタクトが取れないかの試みを報告された。
このスレーブユニットが出力する電波の送信距離は、半径10km程度との事。
さまざまなチャンネルで交信を試みたが、応答は無い。
この事実から、この半径10km以内に、人は居ない。居ても送受信機を持っていない。持っていても、送受信機を使う時間が異なっている。
ただ、なんにしても、この10km以内に、人口密集地は、無いかもしれないとの事。
引き続き、生存者とコンタクトを取る試み 及び その手段を検討したいとの事だ。
次にCMさんから、白い砂についての報告がなされた。
一部の採取した砂から、汚染されたエリア全体を判断するのは危険であるが、採取された砂に含まれていた放射性物質は、ほとんどが半減期の短いものとの事。
ただ、計算よりも放射性物質の量が少ない事を付け加えられた。
そして最後に私から、時間に対する放射線量の推移から、問題ないレベルになるまでの予測についての報告を行った。
結論から言うと、1週間の変化から予測するのは難しいが、後1ヵ月くらいで問題ないレベルまで下がるのでは……との予測を述べた。
それと、放射線量は、深夜に減衰する傾向がある事を伝えた。
その理由として、私個人の仮説であるが、海風、陸風によるものではないか。
太陽からの放射熱によって、陸は温まりやすく冷えやすく、海は温まりにくく冷えにくい。
日中は、陸地が暖められ、地表の空気は膨張して上昇する事で、海から陸へ風が吹く。
夜間は海上の空気が上昇する事で、陸から海へ風が吹く。
海風は海上の空気を陸へ運び、陸風は陸上の空気と一緒に放射線物質を海へ運ぶ。
その現象が起こっているのであれば、CMさんの言われた計算と合わない事への説明の1つになるのではないか。
そのような報告を行い、今後も報告会を開く事として終了した。
しかし、実は私には、もっと気になる事があった。
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次回:(第11章1話)深刻な事態
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