第10章

10-01 地上への道

 さて、私たちもそろそろ、次の事を考える時が来た。

 シェルターに潜ってから3ヵ月になる。

 現在、地上で受ける放射線量は、実際の所どのような状況なのか。


 それを調べる時期に来た。

 その結果によって、ここでの滞在日数も変わって来る。

 少し長くなるかもしれない。


 地上に設置されていた計測類は、核爆発によって破壊された為、地上のようすを知る事が出来ない。

 そこでシェルター内にある計測器を地上に持っていき、測定する。


 このシェルターから地上に出る方法は4つあり、その1つは私たちが乗って来たエレベーターである。

 しかしこのエレベーターは、核爆発時に駆動部が破損し、上がる事が出来ない。


 そして残りの3つは全て階段であり、ルート1からルート3まである。

 この階段は、地下10階の階段ような構造で、1階ごとに隔壁が作られ、地下30mのシェルターは、10枚の隔壁によって守られている。


 ルート2は、地上から2枚目の隔壁に変形が見られ、開ける事が出来なかった。

 しかし、ルート1とルート3は、地上に出る最後の隔壁を残し、全て開閉可能である事を確認している。


 今回、地上へ出る最後の隔壁を始めて開ける事になるのだが、この隔壁が開けられない場合は、コンクリートの天井に穴を開け、爆薬を仕掛けて粉砕させながら地上への道を作っていくしかない。


 とりあえず、今回はルート1で、地上に出る事にした。


 次に、地上へ持って行く測定機だが、このシェルターには、『モニターシステム』という測定器が用意されていた。


 このモニターシステムは、シェルター内に設置するマスターユニットと、地上に設置するスレーブユニットの2つに別れている。

 尚マスターはスレーブに電源を供給する為、この2つは有線でつながれる。


 モニターシステムには3つの機能がそなわっている。

 1つは、地上に設置したスレーブによって、放射線量を含め、気温、湿度などを計測し、その情報をシェルター内のマスターで確認する事が出来る。


 2つ目は、スレーブのカメラとマイクによって、地上の映像と音を、シェルター内のマスターで見る事が出来る。


 そして3つめは、送受信機能である。

 これによって、外との交信をシェルター内で行う事が出来る。


 このモニターシステムを使う為、このスレーブを地上まで運んで設置し、シェルター内に設置するマスターとケーブルで接続させなければならない。


 地上までの階段には、各階に隔壁としての扉があり、扉と壁との間にケーブルを通す穴が用意されている。

 現状は塞がれているが、塞いだ部品を取り外す工具も用意されていた。


 開けた穴を通して地上までケーブルを引くと、その長さは100mにもなり、ケーブルの重さは20Kgになる。


 次に、スレーブユニットだが、大きさは背中に背負える程度であるが、重さにして20Kg近くある。


 作業の危険性から、2人で行う事となり、その2人として、私とBMさんが名乗り出た。


 BMさんがスレーブを背負い、私がケーブルを担いで階段を登っていく。


 最初にケーブルをシェルターのマスターに繋ぎ、そのケーブルを引きながら階段を登っていく為、ケーブルの先をスレーブに接続する事は出来ない。

 地上でスレーブを設置し、そこで初めてスレーブにケーブルを繋ぐ事が出来る。


 シェルターに戻る際、各階の隔壁を閉めて、ケーブルを通した穴の隙間をパテで埋める。

 その作業を行いながら、階段を降りて行く。


 それが今回、私とBMさんが行うミッションである。


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 次回:別世界

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