08-02 初めての規則

 このシェルターは、長期滞在用に造られている。

 全員1部屋ずつ割り当てた。


 電気と飲料水は普通に使える。

 そして大量の真空パックされた保存食。

 みんなで食堂に集まり、夕食を頂いた。


 このシェルターで生活するにあたり、最初の話し合いがもたれた。

 それは、不都合な現実として、今が昼なのか夜なのかが解らなくなってしまう事だ。


 もちろん時計を見れば解るのだが、太陽の光が届かない世界では、体内時計が狂ってしまう。

 今の私たちは、正にそれである。


 そこで昼間の時間は照明をつけ、夜は常夜灯を付ける事とした。

 必要に応じて夜間でも照明をつけるが、常夜灯が付いている事で、夜間である事を認識する。


 そして、

『皆さん一緒に、昼間の時間、活動しませんか』といった提案が成され、それに対して全員が賛成し、ここでの初めての規則が作られた。


 そんな話し合いが行われ、今日のところは解散し、各自部屋へ戻った。


 ベッドで横になる。

 今は夜の12時。

 しかし、とても眠れない。

 まあ、あたりまえか。


 食堂に行くとCMさんが1人でビールを飲んでいた。

「あれ、CMさんがお酒なんて、珍しいですね」

「ええ、眠れないもので」

「はい。私も眠れないもので、お酒無いか探しにきました」


 CMさんは立ち上がり、棚の所へ行って私に教えてくれた。

「この棚に入ってます」

 そう言って棚を開いた。


「これはすごい!」

 そこには、色々なお酒が沢山入っていた。


 しかし、棚に入っているビールは、当然冷えていない。

「このビール、冷蔵庫に入れますね」

「はい」


 私はビールの箱を持って冷蔵庫に向かっていると、B子さんとC子さんが現れた。

「あれぇ、2人だけで、ずるぅい」

「いやぁ」


 そしてBMさんも現れた。


 これはいかんと思い、私は詩織を呼びに行った。

 しかし、詩織がいない。

 詩織を探すと、リザーブルームの外で、心配そうに襲撃者の女性をみていた。


 私は詩織に声を掛けた。

「どうですか」

「あっ……はい。静かに寝ています」


「みんな、食堂に集まって飲んでます。詩織も行きましょう」

「……はい」


 そして飲み会が始まってしまった。

 未成年の詩織はオレンジジュース。


 みんなで明るい宴会となった。

 ……そう、みんな無理して明るく振る舞っていた。


・・・・・・


 次の日、リザーブルームを確認すると、襲撃者の女性は体にシーツを撒いて、起きてベッドに座っていた。

 意識がはっきりしたようだ。


 そこで、彼女と話しをする事にした。

 襲撃者……と言っても、知的な感じの女性だ。

 しかし、どのような訓練を受けて来たのか解らない。


 まずは、女性3人がリザーブルームの外で待機。

 男3人で中に入り、外からカギを掛けてもらった。


 CMさんが話し掛けた。

「日本語、解りますか」

 彼女は静かに首を縦に振った。


「これから貴女と話しがしたいです。その前に少しばかり貴女の両腕を拘束させてほしい。良いですか」

 彼女は状況を理解したようで、静かに首を縦に振った。


 私は彼女の後ろにまわり、両手首を後ろで縛った。

 そして女性3人が食堂の椅子を7脚持って、部屋に入ってきた。


 全員で椅子に座った。

 そして、CMさんから話しを始めた。


「まずは、お名前を教えて下さい」

 しかし、彼女は無言のままである。


 BMさんが言った。

「まあ、我々がコードネームで呼び合っているのに、彼女に本名を名乗ってもらうというのも……」


 私が言った。

「では、これから貴女を何て呼びましょう」


 C子さんが言った。

「Unknown(アンノウン)……不明さん」


 すると詩織が言った。

「では、アノンさんと呼ぶのは、いかがでしょう」


 B子さんが言った。

「いいですねぇ」


 男性たちは、静かに笑っている。


 CMさんが言った。

「では、これから我々は、貴女をアノンさんと呼びます。よろしいですか?」

 彼女は静かに頷いた。


 そして私たち全員、自分のコードネームを伝えた。

 ここへきて、今更コードネームも無いが、今となってはコードネームの方がしっくりくる。


 こうなった以上、アノンさんともうまくやって行かなければならない。

 彼女は私たちに、心を開いてくれるだろうか……?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 次回:戦端を開いたのは

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