07-03 逃亡計画

 それから3日が過ぎた。

 この1ヵ月間の解放期間が終われば、私と詩織はまたエリア3へ連れ戻される。

 そして詩織は、3番目の論文の理解に専念する事になる。


 3番目の論文の内容が組み込まれれば、盾としての役割から矛としての役割が可能となる。


 現在は、核弾頭ミサイルが最終兵器とされている。

 しかし、それを撃ち落とす事を可能とする電磁パルス砲によって、核は最終兵器ではなくなる。


 核が最終兵器でなくなれば、戦闘機などの通常兵器が主戦力となる。

 この戦闘機に、小型化した電磁パルス砲を搭載させれば、世界を席巻する事が出来てしまう。

 やはり、この電磁パルス砲、盾としての役割を超えてはならない。

 その為には、現在の電磁パルス砲に3番目の余剰次元物理学を、組み込んではいけない。


 私は散歩と言って庭園に詩織を誘い、話しをした。

「この1ヵ月間の解放期間を利用して、私と詩織はここから逃亡する」

「はい」

 私の提案に、詩織は同意した。


 私は詩織に伝えた。

「私と詩織は監視されている事を前提に、動かなければならない」

「はい」


「そこで、逃亡計画が察知されないよう、詩織には、通常の生活を送っているように見せて欲しい。私は考えている逃亡手段を確認しながら、ここでの生活を送ります」

「はい」


「そして定期的に散歩を装って、庭園のここで打ち合わせましょう」

「了解しました」


 それからというもの、詩織は何か忙しそうだ。

 屋外に小さなビニールハウスのようなものを造り、庭園で採取したコケを育てている。


 そして、毎日開かれる女子のお茶会。

 はつらつとしている。

 大変良い感じだ。


 私は庭園を散歩しながら、この敷地の外周を確認した。

 この施設は、高い鉄格子で囲まれ、その上には高電圧の掛かったフェンスが取り付けられている。


 では、その電源は、何処から持ってきているのか。

 それを見つけるのが目的である。


 そして、それは意外と簡単に見つける事が出来た。

 そう、そもそもこの高電圧を掛けたフェンスは、内部の人を逃がさない為の設計ではなく、外部から野生動物が侵入しない為のものと言っていた。


 よし……これを切断すれば……なんとかなる。


・・・・・・


 それから数日後、私は詩織を庭園に誘い、大まかな計画を伝えた。

「今から1週間後を目標とします。それまでに行う事として、まずは逃亡に必要な食料を確保する。それとハシゴを作る」

「了解しました」


「次に逃亡手段についてですが、この敷地の周りに張られた高電圧フェンスの電源ケーブルを切断し、ハシゴでフェンスを乗り越えて敷地の外へ出ます」

「了解しました」


 私は、詩織の目を見て言った。

「それからは、私と詩織の逃亡生活がはじまる」


 詩織も私の目を見て答えた。

「令さんと一緒なら、この世界の果てまでも」


 ……うっ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 さあ、令さんと詩織さんの逃亡生活が、いよいよ始まる……?


 次回:(第7章 最終話)ただごとではない

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