07-02 星に願いを
私と詩織が頂いた1ヵ月間の解放期間が、今日から始まる。
あの施設へ127さんと一緒にヘリで向かった。
127さんは言われた。
「あの施設から、あなた達を連れ出した時、ホットラインで皆さんから大変な抗議を受けました。『彼らを何処へ連れて行くつもりか!』『A子ちゃん無事か!』……って」
詩織は、静かに笑った。
あの施設には、私たちを心から心配してくれる仲間がいる。
やがて上空から、施設が見えて来た。
ヘリは施設の上空で停止し、ゆっくりと降下していく。
庭園の広場で、BMさん達、CMさん達が見える。
127さんは言われた。
「今日、あなた達が施設へ戻る事、皆さんに伝えてあります。尚、今回エリア3で見て来た事、皆さんにはご内密に」
「了解しました」
私と詩織は応えた。
やがてヘリは着陸した。
私と詩織はヘリから降りた。
127さんはヘリに乗ったまま、私と詩織に向かって言った。
「1ヵ月後に迎えに来ます。では、良いバカンスを!」
そして127さんとともに、ヘリは飛び立っていった。
振り返ると、BMさん達、CMさん達が歩いてくる。
途中でC子さんが走り出し、詩織に飛び付いて言った。
「おかえり」
そしてB子さんも詩織に抱き付いて言った。
「おかえりなさい」
私はBMさん、CMさんに向かって言った。
「戻りました」
BMさんが手を出したので握手した。
CMさんが笑顔で言った。
「おかえりなさい」
・・・・・・
そらからは、みんなで昼食の準備を行い、昼食会となった。
私と詩織が何処へ連れて行かれたのか。
そこで何をしていたのか。
誰も聞いてこない。
みんなも、話せない事を抱えているからだ。
・・・・・・
その後、女子会の名のもとのお茶会が開かれた。
リビングに詩織を残し、私は自分の部屋へ行ってベッドで横になった。
・・・・・・
それからしばらくすると、部屋のチャイムが鳴った。
扉を開けると、詩織が立っていた。
「女子会が終わったので、令さんのお部屋へ来ちゃいました」
「はい。……では、一緒に庭園を散歩しませんか」〔←詩織ちゃんが部屋へ来てくれたのにぃ?〕
「はい」
私は詩織を連れて、庭園に出た。
ゆっくりと歩きながら、話し掛けた。
「女子会、どうでした」
「はい。お2人とも、すごく心配されていました」
「何の挨拶も無しに、突然だったからね」
「はい……」
私は詩織に話し始めた。
「この施設には、私たちを監視するカメラやマイク等、無いと言っていました。しかし今回の件で、状況は変わったと考えます」
「はい」
「この施設の部屋は、盗聴されている可能性があると思いまして、詩織を庭園へ連れ出しました」
「はい」
「エリア3での先生の論文、どんな感じですか?」
「……はい」
詩織は、少しのあいだ沈黙し、話し始めた。
「エリア3で見た、父からのビデオメールの件ですが」
「はい」
「父は、父が導いた余剰次元物理学を、私に教えたと言っていました」
「はい」
「実は、そのような事、無いのです」
「え?」
「父は、アリーナの中で私を守る為、そのような事を言ったのだと思います」
「だからあの時、詩織は私に向けて、否定のサインを送ったのですね」
「はい」
「しかしその後、詩織は先生の論文の解読……理解を引き受けた」
「はい。確かに私は、父の余剰次元物理学を、父から学んでいません。しかし父の論文をみていたら、なんとなく理解出来るような感じがしたのです」
……なんという娘だ。
「父はビデオメールで『盾としての電磁パルス砲を、完成させて欲しい』と言っていました。しかし父の論文を読み進めていくうちに感じたのです。『この電磁パルス砲、矛として完成させてはいけない』」
「……はい」
「その時、ミサイル発射のアラートが鳴り響きました。私は管制室に駆け付けました。電磁パルス砲が目標を撃ち落とした映像を見た時、私は意識を失いました」
私は詩織を包み込むように抱きしめて言った。
「そうだったのですね」
・・・・・・
その日の夕食は、詩織と2人で庭で食事する事にした。
キッチンで料理し、庭に置かれたテーブルに運んだ。
満天の星空を見ながら、私は冷酒を飲んだ。
詩織が言った。
「私はここで魔法使いさんに……初めての契りを結んで頂きました」
私は静かに応えた。
「はい」
そう、私は詩織の魔法使いだ。
詩織の為なら、どんな魔法だって使える。
……たぶん。
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初めての契りって……なんだぁ?
次回:逃亡計画
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