第4章

04-01 新しい入居者

 ある日の定時連絡で、本日よりこの施設で新たに2人、入居する連絡を受けた。

 ここへは15時頃、到着との事。


 そしてその時間となり、正面ゲートが開いたのを私と詩織は窓から見ていた。

 私たちを連れて来た、あのトレーラーが入って来た。


 私と詩織は建物から出て、正面ゲートに向かった。

 トレーラーから、127と名乗ったあの女性が、男性と女性の2人を連れて降りて来た。


 年齢は2人とも20代後半から30代のように見える。

 理知的でスマートな感じの男性。

 そして、エレガントで上品な感じの女性だ。


 127さんは、私と詩織を2人に紹介した。

「ここでは個人情報は明かさない事となっておりますので、仮称として、こちらで付けさせて頂きました。彼はAMさん。そして彼女はAFさん。尚、Aの後に付いているMはmale(男)、Fは female(女)の意味として付けさせて頂きました」


 ……なるほど。

 本名を伝えれば、ここから解放された後、ネットで検索されるとヒットしてしまうかもしれない。


 私は2人に挨拶した。

「はじめまして」


 そして次に、連れて来た2人を私たちに紹介した。

「彼はBMさん。そして彼女はBFさん。尚、お好きな名前を付けて頂いてかまいません。その場合、私にご一報下さい」


 BMさんが言った。

「名前なんて、ここでは単なる記号ですから、私はBMでいいです」


 するとBFさんは、

「えーせっかくですから……maleとfemaleって、オスとメスという意味合いが強いですよね。……では、私はB子にして下さい」


「了解しました」

 127さんは了解した。


 そして私と詩織に言った。

「今後、BMさんとB子さんも、この施設でしばらく生活して頂く事となりましたので、よろしくお願いします」

「……はい」


「尚、定時連絡は、別々に行ってください」

「……了解しました」


 そんな話をしている間、作業員らしき人が、トレーラーから色々な物を降ろしている。

 BMさん達の食材や生活必需品のようだ。


 その作業が終わると、127さんはトレーラーと一緒に帰っていった。


 私と詩織がここへ連れて来られた時、私たちはセンタールームに案内され、色々な説明を受けた。

 しかしBMさん達に対しては、それが無かった。

 既に色々な説明を受けた上で、ここへ連れてこられたのだろう。


 私たちに対してBMさんは相当警戒している。

 それに対してB子さんは、積極的に話し掛けてくる。


 私は例の研究内容と個人情報を伏せた内容で、自分たちの事を話した。

 そして、私たちの知っている範囲で、BMさん達にこの施設を案内した。


 最初に定時連絡の為に、センタールームに設置されたホットラインを確認してもらった。

 定時連絡は時間をずらして行う事にした。


 次に、リビングルームを案内した。

 リビングに設置してある大型の冷蔵庫6台。

 その1台にのみ食材が入っていたが、2台めの冷蔵庫にも食材が入っていた。

 この先、入居者が増えていくのだろうか。


 そして、12部屋あるプライベートルームの内、私とAF(詩織)が2部屋使っている事を伝え、BMさん達も2部屋専有する事となった。


 BMさん達と、ここでの生活を話し合った。

 お互い干渉しないで、適度な距離を置いてお付き合いしましょうという事で合意した。


 初めてという事で、その日の夜は、BMさん達と夕食をご一緒する事となった。

 しかし、BMさんもB子さんも、料理は苦手のようである。

 この中で料理が一番得意な詩織に、2人は積極的に習っている。


 お互いに干渉しない、との話し合いであったが、料理を習う理由から、しばらくは一緒に食事を作り、一緒に食事する事となった。


 私と詩織は、別々の部屋で寝る事にしているが、BMさんとB子さんは、同じ部屋で寝るようだ。

 どうやら、そういった関係らしい。


 それから数日後、BMさんとB子さんは、この施設の建物の測量を始めた。

 この施設の図面を描いている。

 彼らは、建設関係の仕事をされている方なのだろうか?


 しかし、ここへ連れて来られたという事は、訳ありなのだろう。

 ……どーも、結びつかない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 この施設、いったい何なのでしょう。

 ……まさか、地下に拷問部屋が? 〔←やめなさい!〕


 次回:連れて来られた人達

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