03-04 ある夏の日

 ここでの生活を始めて1週間が過ぎた。

 

 いつものように、朝食の準備を行い、一緒に朝食を頂く。

 それからは、リビングで話をしたり、注文した科学情報誌を読んだり、建物の外に出て運動したり。


 私と詩織は庭でキャッチボールをする為、グローブとボールを注文した。

 詩織は父親と室内で、タオルを丸く結んで、それでキャッチボールをしていたようだ。


 グローブを付けて、軟式ボールを投げるのは初めてとの事。

 詩織の投げ方はオーバースロー。

 私はしゃがんでグローブを構える。


 『ズバン』

 いい音が響く。

 コントロールも良い。

 詩織の投げるフォーム、さまになってる。


 投げる時、わずかに足を上げる。

 その時、私の意識はスカートの奥に向いてしまう。

 ……いかんなぁ~


 『ズバン』

 今日のご褒美は、薄いペパーミントでした。


・・・・・・


 ある朝、私は夜の蒸し暑さで目を覚ました。


 朝食まで時間がある。

 私は、この建物の外に出て、広大な庭園を散策した。

 朝日が昇り始めた。気持ちいい。

 

 暫く歩いていくと、水の音がする。

 高さ3mぐらいの、穏やかな白糸の滝だ。

 昨日の雨で、水が溜まったのだろう。


 近くまで歩いていくと……誰かいる。

 詩織だ。

 水際に腰掛けて、落ちてくる糸のような水に手を伸ばしている。


 私同様、早く目が覚めて、この庭園を散策していたのだろう。

 綺麗な水だ。

 熱帯夜が続いている。

 気持ち良さそうだ。


 その時、詩織が立ち上がった。

 透き通るような肌。

 すらりと伸びた足。

 そして、水に濡れたインナーが、ふくらみかけた胸の上部に貼りついている。


 私は、見てはいけないものを見てしまった。

 やはり詩織は、人間ではなかった。

 そこにいたのは、水の妖精だった。


 私は気付かれないよう、そっと、そこから立ち去った。

 どうしたものか……インナーを浮かせる2つの先端が、脳裏に焼き付いて離れない。

 これは……いかん。


・・・・・・


 朝食の時間まで、まだ時間があるが、私はリビングに向かい朝食の準備を始めた。


 しばらくすると、詩織も朝食の準備をしに来た。

「おはようございます」

「あぁ、おはよう」


「朝食の準備、今日はいつもより早いですね」

「ああ、ちょっと今日は、早く目が覚めてしまって……」


 詩織の髪からシャンプーの香りが漂う。

 あの後、浴室でシャワーを浴びてきたようだ。


 朝食の準備が整い、二人でテーブルに着いた。

「それでは……」

「「いただきます」」

 お互いに、食事前の挨拶をして食べ始めた。


 詩織は私に話し掛けてきた。

「実は私も、明け方、目が覚めてしまって、この庭園を散策していました」

「……夜、暑かったからねぇ」


「そしたら、すっごく綺麗な白糸の滝があって、手を伸ばして浴びていたら服に掛かっちゃいました」

「……そーなんだぁ」


「ヒンヤリと冷たくて気持ち良かったです」

「それは良かった」


 今、詩織は薄手のシャツとスカートを着ている。

 詩織を見ると、脳内では服が透けて、その中が映し出される。

 ……これは……いけない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 はい。これはもう病気です。


 次回:(第4章1話)新しい入居者

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