01-04 結婚しよう

 詩織の父、浅野教授が行っていた研究と、私が行っていた研究。

 その2つの研究成果を合わせる事で、核ミサイルの破壊を可能とする電磁砲が造られるかもしれない。


 しかしそれは、実現可能だろうか。

 気になるのが、電磁波に指向性を持たせる為の電磁波レンズ。

 果たしてこのレンズ、超高出力電磁波に耐えられるのか。


 目的は核ミサイル内部に仕込まれた制御回路を破壊すれば良い。

 半導体による集積回路は高電圧に弱い。

 それを破壊すれば、核爆発は起きない。

 制御回路の破壊を可能とする電磁波出力と、電磁波レンズ素材のデータから、実現性を計算する。


 この計算、かなり複雑である。

 誤っていたら、大変な事になる。

 私1人では心配な為、詩織と別々に計算する。

 同じ答えが出れば、その答えは信頼出来る。


 計算結果として、正の値が出れば、この電磁砲は実現可能。

 負の値が出れば、実現不可との結論が得られる。


 私と詩織は計算した。

 紙と鉛筆と関数電卓による計算である。

 結果を出すのに4時間掛かった。


 そして、私と詩織の計算結果は、2人とも同じ負の値だった。

 よって、この電磁砲、実現出来ないという結論に至った。


 詩織が言った。

「この電磁砲、今は実現不可の結論に至りましたが、いずれ誰かが完成させます。軍事利用されない為に、一刻も早く、この論文を発表して……」

「……」


 それから2人は沈黙した。

 同じ事を考えていたのだろう。


 浅野教授は、それをしようとした。

 そして、行方不明となった。


 今思い起こすと、研究発表、自分1人で行くと言った。

 先生は、何かを覚悟していたのかもしれない。


 その後、研究室と先生の家に空き巣が入った。

 もう既に、なんだかの組織が動いている?


 私は詩織に言った。

「この論文、簡単に発表出来ない。軍事利用されてしまう」

「……はい」

 詩織もうなずいた。


 ……浅野教授は研究発表に行く前『私に何かあった時は、娘を頼む』と言っていた。

 詩織に対しても、何かあった時には私の所へ嫁ぐようにと言っていたらしい。

 先生は、この研究によって生まれてくるものを、私と詩織に託したのだろう。


「この論文、人類80億人の生命を脅かす」

「はい」


「この論文、私と詩織さんは知ってしまった」

「はい」


「この論文、外部に漏れてはいけない」

「はい」


「私と詩織さんは……もう、他人ではいられない」

「はい」


 私は詩織に提案した。

「結婚しよう」


 詩織は真剣な眼差しを私に向けて応えた。

「はい!」


 ……しかしその時は、ネックレスに仕込まれたカードの中に、表示されない3番目のファイルが収められている事を、私と詩織は気付いていなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 さて、まだ婚姻届けは出せませんが、他人ではいられなくなったこの2人。

 第2章は、世界の存亡そっちのけで、ラブラブのゆる~いお話しとなります。


 ……なんという事でしょう。

 イチャイチャしてる場合ですか!

 はい。どうか第3章までお待ち下さい。


 次回:(第2章1話)婚約者

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