閑話 ルベルvsエミアリア★
広い訓練場の広場にて薙刀を持つ男性と悪魔を模した甲冑を着装した女性が対峙する。
「本当にいきますよ! いいんですね!」
「いつでもどうぞ」
火蓋を切ったのはルベルであった。突きを連続で放つが全てギリギリの所で回避されている。
「あらあらどうしたのかしら」
エミアリアが懐に踏み込み、みぞおちに鉄拳を放った。
「うぐッ!」
彼の肺の中の空気が半ば強制的に排出されるのと同時に腹部に衝撃が走る。
『ルベル落ち着け。距離とる。お前弱くない。ただ持って、見据えればいい。力抜く。余計な筋肉に力入れるな』
「くっ……わかりました。ワープ!」
ルベルが叫ぶと離れた場所に幾何学的模様の魔法陣が現れ、彼の姿が掻き消え魔法陣からその姿が現れる。
「今程本の虫で良かったと思ったことはありません。形勢を立て直しましょう」
ルベルは薙刀に人差し指を添えて目を瞑り魔術の詠唱を開始した。
「ꫜꫨꬪꯔꯢﱑﬔffl」
「……」
おおよそ人が言ったとは思えぬ奇っ怪な言語が彼の口から放たれる。
これはルベルが魔法のアルゴリズムを独自に解釈し開発した特殊詠唱法である。
ルベルが本の虫である事はこの王城にいる者なら誰でも知っている。エミアリアは城のメイドや侍女を買収しルベルの情報を逐一掌握しており、意味不明な実験や計算をしている事は知ってはいるが、彼女は自身の性癖に傾倒する余り、魔法に対する知識はその辺の子供と似たりよったりであった。
彼女が攻撃するか、防御して凌ぐか、そう思案していると空に暗雲が立ち込み、雷鳴が鳴り響き雨が降り出す。
雷の光が地表を照らす。
「ルベルがいない!?」
先程まで居たルベルの姿はそこになく、彼女は防御を堅める。
「姉さん貴女は……いや恐らく殆どの人達はあの
「どこ!? 姿を見せなさい!」
「無駄です。貴女は私に詠唱を許す時間を与えてしまった。この特殊詠唱は効果が出るのか正直半信半疑でした。そしてこの武器の秘密を1つ解き明かす事ができました。ありがとう御座いました」
雷と共にルベルの斬撃が彼女に届き、エミアリアは声も上げずその場に倒れた。
『ルベル勝った。よくやった。お前優秀』
「ありがとう御座います。エルサレア文字の知識を持っていて良かった。知識はやはり私の味方だ。そしてゼウス。貴方も」
『照れる』
「――ハッ!! 姉さん! 姉さん大丈夫ですか!?」
『エミアリアはイッてしまったわ』
「声が……貴女はその防具に宿っている精霊ですか?」
『えぇ、サキュバスよ。よろしくね。白髪のお兄さん』
「そんな事より姉さんの容態は!? 今すぐ蘇生魔法を!!」
『もう下半身ビショビショなのぉ。貴女とあった時点で濡れてたけどさっきの一撃でほとばしり出ちゃって』
「えっ逝ってしまったのではないのですか……」
『だからぁ言ったじゃない。イッてしまったって。今とてもじゃないけど誰にも見せられない顔してるわ。幸せそう』
「ハァー……仕方ありません。誰か彼女を休憩できる所まで運んで下さい」
ルベルがそういうと兵舎で見守っていた兵士達が現れ、彼女を運んでいった。
「帰りましょう」
『いけそうか、ルベル』
「わかりません。そもそも生徒と殺し合いなど……キルゼム学園長は一体何を考えているのか」
自身の部屋に戻ろうとした所、兵士が1人ルベルの元まで近づき跪き声を上げた。
「申し上げます! ルベル王子! 第1王位継承者ガデュレリウス王子と第3王位継承者ファビリル王子お呼びです!」
「兄さんとファビが!? 2人がこの国に戻ってきたのですか!?」
「ハッ! 只今ガデュレリウス王子の自室にてお待ちです!」
ルベルは武器をイヤリングに変え耳に付けると足早にこの場を後にし、城へと戻っていく。王位継承権を破棄し、遠征組として飽くなき戦いの道を選んだ兄と弟の元へ急ぐのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます