閑話 秘密のエミアリア★
「良いわ! もっと強く! もっと早く!」
「お、お姉様……これ以上は……」
「良いのよ! もっと強くして良いの! そうじゃないと意味がないんだから!」
この日も、彼女は下僕に自らの躰を差し出し、鞭で思うがままに
――今、下僕の少女に自分を鞭打させて、ニヤついている女性こそ、第2王位後継者エミアリア・シュゼル・アルゼレインである。才色兼備を欲しいままにした彼女には、裏の顔があった。彼女は超ドMのレズビアンである。しかも彼女はブラザコンプレックスを持っており、異母弟であるルベルを異性として意識している。この事は城にいる極一部の者しか知らず、裏の顔を知るものに彼女はこう呼ばれていた。【秘密のエミアリア】と――。
「あぁ! 良い! 良いわ! もっと……もっと高みへ! あと少し! もう少しでイケ――」
エミアリアが水色の長い髪を揺らし、達しようとしたその時、不意にドアが開かれ、白髪で眼鏡を掛けた青年が入ってきた。
「エミアリア姉様! 声を落としてくれませんか!? 思いっきり私の部屋まで漏れ聞こえてくるんですが!!」
「あら、ルベルじゃない。ご機嫌よう。貴方中々やるじゃない、寸止めとか高等テクニックよ。私を生殺しで攻めようなんて、末恐ろしいわ」
「貴女は一体何を言ってるんだ!! 仮にも城の近衛隊長を任せられてる立場なら、こんな所で尻を突き出し遊んでないで、責務を果たしたらどうなんです!!」
「なんて事……。あの優しいルベルがこんなに怒るなんて……」
「姉様……わかってくれましたか……」
「その、道端に吐かれたゲロに
「――このイカれマゾ! いい加減にしてくれ!」‚
「冗談よ、今日はオフなの。代わりの者がやってくれてるわ。『いつも我々の為に、日夜組手や城の警備に尽力して下さり、誠に感謝しています。今日くらいは骨を休ませては如何でしょう?』だって。健気よね。私が近衛隊長やってるのは組手で殴られたり、蹴られるのを期待しての事なのに」
「……ハァ、もういいです」
「あ、待ってルベル」
エミアリアが尻を引っ込め、ルベルの眼前に移動し、左手をそっと頬にちか付けると薄い黄色の眼がマジマジと彼の顔を見つめた。
「姉様……? いや、姉さん流石にそれはホントにまずいです。姉弟同士でそれは――」
「とても綺麗なイヤリングねぇ! 貴方おしゃれに目覚めたの? いい女の人でも出来た? 私心配だったのよねぇ。貴方って絶対奥手臭いもん。ところで、顔真っ赤じゃない。どうかしたの?」
「な、何でもありません! こ、このイヤリングは知り合いの武具店から買ったものですよ……」
ルベルの返答にエミアリアは首を傾げる。
「武器屋さんにイヤリングが売っているの? 変な話ね。普通、宝石商等ではなくって?」
「そ、そこは少し他と違うんですよ」
「へぇ、面白そうね! 何処にあるの! 教えなさい!」
「ええっと、王都の外れにある武器屋で――ハッ!? しまッ……嫌です……」
「何で?」
エミアリアの瞳孔が開ききった眼がルベルを捉えた。
「教えたら
「あら、その武具店の主人は女性なのぉ? ますます、行きたくなちゃったわぁ。あのねぇ? 丁度新しい防具が欲しかったのよぉ? すぐボロボロになっちゃうのよね? わかる?」
エミアリアの部屋は非常に広いが、周りは武器や防具、その他愛玩用の道具等で殆どが占領されており、その狭さは人が4人も入れば満杯になってしまう程だった。
「――やめてください! 彼女は貴女の様な変態とは違うんです!」
「弟に変態扱い受けるとか、マゾ冥利に尽きるわぁ! でも、駄目よ? 行くって決めたから」
エミアリアがルベルの眼鏡を取り上げると、下僕の女性に放り投げた。
「僕の眼鏡が!」
「下僕ちゃんがもってるわよぉ? じゃあねぇ!」
「ま、待て! 彼女に手を出したら本当に怒りますよ! 聞いてるのか!?」
エミアリアは騒ぐルベルを無視すると自室から退出し、スキップしながら王都の外れに向けて歩きだした。
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