イレイサー：File09_バインランドの悲しき仮面：指令があれば「憑きモノ」を「ないモノ」に消します。

第10話

「んで？　どういうこと？」

「なにがすか？」

「全部だよ。帰ってきたらニッタはしょんぼりしちゃって元気ないしさ」

「ああ、まあ仕方ねえだろ。しばらくほっといたら元気になんだろ」

「そうなの？　で？」

「で、ってなんだよ。報告書に書いたろうが。魔獣の残骸の憑きモノはなし。以上だ」

「以上だ、じゃないよ。そんでなんでニッタがああなったんだよ」

「元お貴族のお嬢様に憑きモノが憑いてたんだよ。んで、それをイレイスした。そんだけ」

「わかんないよ、それじゃあ」

「あー、もう！　うるせえなあ。そのお嬢様の家族が強盗に殺されたの！　んで、そん時の家族の思いが家にあった仮面に憑りついて、一家襲った強盗を全滅させてお嬢様と一緒に生活してたの！」

「あー、そんでニッタはそのお嬢様と憑きモノがかわいそうになってってこと？」

「そうだよ！　ほんと甘っちょろいよな。って、なんだよニヤニヤしやがって」

「だってお前、どうせ裏でいろいろ動いたんだろ？」

「動いてねえよ。ってなんだよ、ニヤニヤしやがって。ツノダさん、笑顔だけで語ろうとすんなよ」

「んもう！　ハルキ、正直に言えよお、お前が動かないわけないもんな」

「ちっ！　案内してくれたじいさんとは話をつけといたよ、そりゃあ。あのままだとお嬢様が壊れちまうからな」

「んでもまあ、その仮面がお嬢様のもとに戻って、住民がお嬢様としっかり関わるってことになったのは良かったんじゃないか？」

「まあな。時間はかかるかも知れねえが、じいさんたちがお嬢様を支えていくだろ。まあ、それが筋ってもんだ。憑きモノに頼るなんてどっかで無理が来るからな」

「ああ、そうだな。ま、無事解決ってことだ。よかったよかった」

「ツノダさん。あんた、俺たちをわざとこの依頼に行かせたろ？」

「ん？　わざと？　なにが？」

「けっ！　まあいいや。とりあえず今回は戦闘らしい戦闘もなかったしな、ありがとなプロデューサー」

「なんだよ礼とか気持ち悪いなあ！　あ、そうだ、今晩鍋やるけどお前ら来ない？」

「いかねえよ」

「なんでだよ、ニッタも元気になっぞ！　来い！　鍋パ！」

（完）