第4話
「いやあ、ほんっとハルキさんって悪運強いすよねえ」
「なんで俺の悪運の話になるんだよ。お前がいいかげんな案内するから迷っちゃったんだろ?」
「まさかバインランドの近くまで来てるとは思わなかったっすよねえ。ジュース売ってる店、すぐ近かったですもん」
「そりゃあまあそうだな。よくあの案内でたどり着けたもんだよ。んで、そっちの聞き込みの成果は?」
「ああ、はい。この町で今噂になってるのは、夜中に親子の亡霊が出るって話くらいでしたねえ。魔獣のことなんてまったく出てこなかったっすよ」
「こっちもだ。魔獣の話なんてこれっぽっちも出て来ねえ。ただ、俺たちが来る前に数件の強盗事件と行方不明者が出ちゃあいる。少し気になるのが、帝国の統治軍の五名が昨年殺害もしくは行方不明になってるが、これが今回の件と関係してるのかどうかだけどな」
「そうっすね。人口一万人弱の町でも強盗や行方不明は起こるでしょうからねえ。オレ、明日は噂になってる親子の亡霊を追ってみようと思うんすけど?」
「いいんじゃねえか? 俺は魔獣の骨が出たってとこに行ってこようかなあ。ガセならガセでいいんだけどな。ま、調べねえわけにもいかねえだろうからな」
「あ、あと、その亡霊なんすけどね。迷った時に話したじゃないっすか、お貴族様の話」
「ん? ああ」
「どうやらお貴族様の亡霊らしいんっすよ」
「はっ! なんで誰も見たことねえのにお貴族様だってわかんだよ? おかしいだろ、そんなの」
「いやそれがあ、大きな影は喋らないらしいんすけどね、小さい方の影は話をしてるようなんっすよ、その口調がお貴族さまっぽいんですって」
「お貴族様ねえ。ま、それも情報が足りねえな。ま、どっちにしてもしばらくは情報収集しかねえな」
「そうっすね。しっかしここの煮込み料理はめっちゃうまいっすね!」
「そうだなあ。宿の親父が名物だって言ってたな」
「そうなんすか。そりゃあうまいはずっすね。いくらでも食えるっす!」
「ボア肉だっつってたな。特製ソースがなんだかんだ言ってたけど、まあ俺が作るわけでもねえしなあ」
「ハルキさん、ツノダさんが言ってたっすよ」
「ん? なにを?」
「ハルキは全然料理に興味がないって。あいつはイレイスすることしか楽しみがないんだろうなあって。イレイサーは<モノ>にとり憑いた<モノ>を消すのが仕事なのにあいつは<モノ>ごと消しちゃうからお前がちゃんとみはってろーって」
「なんだと、あのチョビ髭親父、今度捕まっても助けてやんないからな、そう言っとけ!」
「そういうのは自分で言ってくださいよ。いつもほんと仲いいんすから」
「いいわけないだろ? ま、いいや。んじゃ明日お前は噂のお貴族幽霊、俺は魔獣の残骸の聞き込みな」
「はーーい」
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