第2話
「ニッタ、遅っいなぁ~」
イレイサー事務所でプロデューサーのツノダがぼやいている。
今日はプロデューサーのツノダとイレイサーのハルキしか在籍していない。
「十秒でって言わなかったからすよ」
「いや、だって十秒じゃ無理じゃん」
「言ったら早くなるんすよ」
「まあなあ。あ、思い出した。そう言えばさ、ハルキ」
「ん? なんすか?」
「お前、あれ、どうすんだ? ほら、もうすぐだろ?」
「ああ、メンテナンスね」
「ああ。あのオルサスって奴がなんかしたんだろ? ニッタの胸に」
「ええ。あれからニッタを使って魔法の増幅をしてないすからね。実際に使った時にどうなるのかわかんねえし。まあ試そうとも思わないすけどね」
「そうだよなあ。で、メンテナンスは?」
「ああ、アンドウちゃんに頼んだんすよ。今回は鑑定も念入りにやってもらわないとだし」
「そっか、ま、そうだよな。あ、帰ってきた。ニッタァ! 遅いぞお!!」
「すいませーん、買ってきましたあ。はい、ハルキさんの分、こっちがツノダさんの分。で、これがオレの分」
「おい、ちょっと待て。俺はこんなの頼んでねえぞ」
「ん? あー、それ、新発売なんですって。店のおばちゃんと話してたらこれ買ってきなって言われたんっすよ」
「いやいや、なんでそれが俺なんだよ、お前がそれにすりゃあいいじゃねえか」
「なんでですか? オレはこっちが食べたいんすから」
「なんでですか? じゃねえよ、おかしいだろ? お前らは食べたいもん食って、俺はこのなんだかわかんない新発売のを食うって」
「ハルキ、大人げないぞ」
「なんだとっ?! 納得いかねえ。あ、ニッタ」
「はい、なんすか? はい」
「お前。今日だろ? もう行かなきゃなんじゃねえのか?」
「あー! 忘れてたっす!」
「何やってんだ! 早くいってこい! はい、十! 九! はーち!」
「はーーーーーい!」
そう言って事務所をから走り出すニッタ。
「しかしな、ハルキ。もしニッタの胸の聖石がバレたら」
「わかってるすよ、んなこたあ。ま、バレたら国と戦争でもするしかねえし、イッコたちはわかってくれてんじゃないすか。んで、次のイレイスは? どこ行くの?」
「ああ、次はジェリカだ」
「ジェリカだぁ? 帝国の東の果てじゃねえか。そんなところに何があるんすか?」
「実はな、旧王国バイランドの町に出たらしいんだよ」
「バイランドって、ああ、ジェリカの南か。まあ行けなかぁねえけど結構大変だぞ、それ。んで、何が出たんすか?」
「ああ、バイランドにな、魔獣大襲撃の時の魔物の残骸、山ほど」
「ちっ。それに憑き<モノ>かよ。勘弁してくれよ、今ニッタの魔法増幅を使えねえし使いたくねえんだよ」
「ああ、それも分かってるんだけどな。お前たちしかいないんだよ。アキとユウジはアブソス残党の殲滅、トーコとシゲルはペイドルの町の地下遺跡調査、ナツキとユカは別件を頼んでていないんだよ、すまん、頼む!」
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