第69話 水の都 1 移動
「「「おおお!!! 」」」
様々な種族行きかう町に俺達は感動の声を上げた。
ダリアが休日の日を使いやって来たのはゼトロス伯爵領領都ゼトロス。
ここに来る途中馬車の御者に聞くとここは『水の都』と呼ばれているらしい。
「川に囲まれた町、といった感じですね」
「各場所に向かうのに川を渡らないといけないみたいだからな」
「陸地に水があるというよりは、水の上に陸地を作ったという雰囲気だな」
「お姉様。感じています? 」
「無論だ。ここは水の精霊が異常に多いな。よかったじゃないかミズチ。お前の
「ワタシにはお姉様がいればそれで十分です」
「一先ずチケットを取りに行こう」
そう言い俺は皆に移動を
流石にこのままここにいる訳にはいかない。
歩きながら周りを見る。
前には大きな橋が何本か見える。そしてその下に小さな、何
先々代のゼトロス伯爵から始まったこの事業は今代のゼトロス伯爵で完成し、こうして運用されているとのこと。
「これほどまでに人気だとは思っていませんでした」
「俺もだ」
ダリアの感想に頷きながらも
俺達と同じなのだろうか、男女のペアが多い。
少し観察すると貴族だろうか、明らかに服装が周りと違う人がいる。
だが二人はお忍びのつもりなのだろう。騒ぐこともなく二人何やら話しながら順番を待っている。
「進みましたね」
遠くを見ていて気付かなかった。
ダリアに言われてすぐに前に進んで距離を詰める。
何度か進んでようやく俺達の
★
チケットを受け取り
丁度タイミングが良かったのか船乗りの人が「今の内だよ」と言いながら手を振っている。
「急ぎましょう」
船乗りの言葉もあって少し駆け足で行く。
船が近づいた所で俺はあることに気が付いてしまった。
ホムラとミズチは乗れるのか?
彼女達は見た目は
しかもどんな素材を使っているのかわからない超重量な一体が二体もいる。
「? どうしたのだ? 」
「何やら不快な視線を感じますが」
少し気が引けるが、聞いておくべきだろ。
「……お前達が乗ったらあの船沈まないか? 」
その言葉が意外だったのか、少し立ち止まる二人。
「ゼクトさん。流石にそれは……」
「いやよく考えてくれ。この二人が乗って船が沈んだら
俺が言いたいことが分かったのかダリアも立ち止まり考え始めた。
船乗りが更に声をかけてくる。
俺達はそれぞれ顔を見合し「船乗りに聞いてみて判断する」と言うことになり、走りだした。
船着き場に着くと四人の男性が腰掛けたり周りを見ていた。
種族は人族に獣人族に龍人族と思しき種族でなっており多様だ。
しかし四人とも大きな木のヘラや棒のような物を持っており筋骨隆々。人族の男性なんか龍人族に負けないくらいにガタイが良い。
「やっと来たか」
「すみません。遅れました」
「早くしないと相乗りになっちまうぞ? 」
「相乗りになってもあの人数ですから仕方ないと思うが」
俺がチラリとチケット売り場をみて獣人族の船乗りに言った。
するとガハハハハと笑いながら「確かにそうだな」と答える。
そして龍人族の男が「まぁ良いじゃないか。さ、乗った乗った」と
だがここで俺達は話していたことを伝える。
すると全員の目が一気に俺に向いた。
「流石にそれはないぜ、兄ちゃん」
「女性の体重を
それが普通の女性ならばだが。
「だがまぁ見かけによらないこともある」
「この船が沈むことはないと思うが一応教えておくとだな。この小船はちょっとした、少し特殊な素材でできているんだ。それに魔化もされて壊れにくく、沈みにくい」
「だから安心しな。武装した大男二十人くらいなら余裕で運べる船だからよ」
そこまで言うのならば仕方ない。
俺達は船に乗り、移動した。
★
船から降りて陸地に着く。
降りる時にチラリと後ろを見たが全員顔色が悪い。
少し魔力を失っている感じだ。
「……悪い」
「いやこれは仕方ないと思う」
ホムラが申し訳なさそうな顔をする中一応のフォローを入れる。
そしてここに来る途中の事を思い出した。
自信満々に船に俺達を迎えた四人。
しかしその自信はミズチが船に足を踏み入れ体重を乗せた時崩れることになった。
ミズチが乗った瞬間傾く船。
それに驚く四人の船員。
ホムラがすぐ彼女に離れるように言い
こればかりはどうしようもないので橋を渡って移動しようかと話し合っていると、船員達が言う。
『俺達のプライドにかけてお前さん達を向こうまで届けてやる』
と。
無理をする必要はないと言おうと思ったのだが時すでに遅し。
龍人族と人族の船員が船に何やら魔法をかけて準備する。
そして俺達を中央にまで運ぶ、魔力が切れたら沈むデスゲームは始まった。
「思えば、本当に無理をする必要はなかったんだけどな」
船員達にお礼を言い、大きな橋を見ながら呟く。
「女の子一人運べないとなるとプライドが許さないのでしょう」
「それで沈んだら元も子もないがな」
俺がいうと「ふふ」とだけダリアは笑う。
更に歩くと
「町が見えてきましたね」
「今までに見たことのないような造りだな」
木でできた、横に長い建物がいくつか並ぶ。
様子をみつつ歩くと何やら看板のような物が並んでいた。
「あれは食堂のようなところでしょうか? 」
「あっちは宿泊みたいだな」
王都と同じ看板なので分かりやすい。
しかしリリの村はもちろん王都付近の町並みと全然違う様子だ。
まるでこの町だけ違う国の様に。
「まずは宿をとりましょう」
「そうだな。……、ミズチ。移動するからもうそろそろ復活してくれ」
後ろを見ると珍しく落ち込んだミズチがいた。
そんなにも重かったことがショックなのだろうか。
顔を下にし沈んでいる。
「ほらミズチ。もうすぐ宿泊
「! お姉様と宿泊! 」
……結局、それで元気になるのかよ。
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