第四十七話 ゼクトのいない冒険者ギルド 二 魔法少女混成部隊 《リトル・マジカル》
「ゼクトおじさんにも困ったものね」
「確かにそうだけど……」
「数日いないだけでこんなに溜まってるなんて」
「やっぱりゼクトおじさんはすごい人だったのよ」
ある日の事、依頼ボードの前に四人の女性が立っていた。
一人は長い耳を持つエルフ族の女性で、一人は修道士の服を着ている人族の女性。その隣には黒い羽根を持つ女性にもう一人も女性であった。
女性だけの冒険者パーティーというのは珍しくはない。
こと強力な魔法が使えれば、男よりも力仕事が出来るからだ。
よって男を
それでも
彼女達はリリの村で活動しているDランク冒険者パーティー『
全員が魔法使いという
しかし前衛となるものがいないからと言って
無論彼女達はそれ
彼女達のパーティー名に『リトル』とあるが、全員二十代だ。
これは自分達がつけた名前ではなく、異名がそのままパーティー名になったのが原因だ。
また彼女達は他の冒険者達とは違う点があった。
それはこのリリの村出身の者がいるということである。
ゼクトの教えを受け、そして他の町や王都で活動。仲間を得た彼女達は無事に村に戻ってきたということだ。
何故戻ってきたかというと、それは
エルフ族の女性はともかく人族の二人に有翼獣人の三人は婚期が
町に出て、婚期を逃した町人や女冒険者を見てきた彼女達は仕事に生きるしかなくなった人達を見て焦っている。
かといって
そこでリリの村出身の一人である神官が
この村は、確かに村だが冒険者ギルドもあり横のつながりも強い。よって新たな出会いを求めて彼女達はこの村へ来たのであった。
「この村に来て正解だった……っとこの依頼はどう? 」
と、有翼獣人の女性が一枚の依頼書を手に取った。彼女は真っ先に結婚が決まったメンバーである。
しかしながらこうして
まだ体を動かし足りないと感じているのと、古き仲間との
そんな彼女が持つ依頼書を他の三人が
「農作業の
「魔法が使える者なら
「分からないわ。でも行ってみるしかないでしょう」
「じゃぁ出してくるね」
頭に疑問符を浮かべながらも受付で依頼の詳細を聞き、彼女達は農家の所へ行った。
★
「こんな魔法の使い方があるのですね」
エルフ族の魔法使いがそう言いながら目の前に広がる農地を見ていた。
そこには
かなりの距離で対面している二人が細かな魔力操作で野菜を上下に振って土を落として他の場所へ移動させていた。
「単なる
「お
そう言いつつも、褒められたことを喜ぶリーダー。
魔法使いや神官の集団というだけあって彼女達の保有魔力量は膨大だ。
それこそ一日中は魔法を使い続けることができるくらいには。
リリの村にも限らず農業を主産業としている村には、
この魔法の枠組みは正式な物ではなく、単に農業に応用できる魔法群であるが。
今使っている魔法は『
中難易度の魔法で込めた魔力量に応じて物質を浮遊させ、動かす魔法である。
農業魔法を習得しているからと言っても農家は農家。
一人一人の保有魔力量は知れている。
よって
二人で畑の四分の一を終わらせるその光景は、まさに『魔法』であった。
「あれ? アイリじゃないか」
「リリ、か? 」
野菜を保存する倉庫から二人の男性が出て来て、声を掛けた。
すると神官の女性と、作業を終えて畑からやって来る魔法使いの女性が二人の方に目をやった。
「げっ! リック」
「アルトもいるし?! 」
「「げっ! 」とは何だ、久しぶりの幼馴染に対して」
「だがお前達戻っていたんだな……」
嫌な顔をしながらも畑から出てきたリリに、驚くアイリ。
あからさまに嫌な顔をされて少し傷つく男性陣だが、彼らはこの農家の息子達。
リックとアルト以外にも兄弟はいるが、ここに来たのは彼女達といつも何かと張り合っていた二人であった。
「にしても凄い魔法だな」
「ゼクトさん時は全員で手作業だからな」
「定期的に来て貰いたいもんじゃな」
リックとアルトが彼女達を褒めて、依頼主がさりげなく誘う。
意外な言葉だったのか、幼馴染の二人は目を開いた。
「こ、この二人が私達を褒めるなんて」
「明日、雨が降りそうですね」
「明日も収穫だからそれは困るんだが……」
「本当に俺達をなんだと思ってるんだ……」
酷い言われように嘆息する二人。
それを外から有翼獣人とエルフの女性が見ていて、軽く微笑んでいる。
外から見たら微笑ましい言い争いをしながらも、依頼をこなすことを優先する冒険者パーティー。
なお、つけられたパーティー名に爆笑したリックとアルトは殴り飛ばされたのだが仕方ないだろう。
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